月の輪

緋寄@(^q^)🍎
@Enph_hiyo12

一話


他の人より永く生きるということはきっと、とても辛い事なのだろうと思う。





其の人物とは行きつけのBarで逢った。俺が友人二人を待うと少し早めに偶々来た時に、其の人物は何時も友人が座る席に座ってウイスキイを飲んでいた。

 腰まである長い黒髪と綺麗な満月を連想させる黄色の大きな瞳。其の大きな瞳が細められて俺に向けて笑みを零したかと思えば、鈴を鳴らしたような不思議な中性的な声で話掛けて来た。


「あら。貴方は此処の御得意様?」


私服とは云えないような黒い女性用の背広を着た女性は俺を隣に座るように促した。俺が隣に座ると彼女が何が飲みたいと訊いて来る。


「今日は機嫌が善いの。一杯だけだけど奢らせて」


そう云うと彼女は俺が頼んだものの会計まで済ませたあとにっこりと笑みを浮かべて俺に名乗った。


「私は月宮かぐや。宜しくマフィアの織田作之助君」


俺の訊こうとした質問に答えず月宮という女性はそそくさと帰って行った。

 彼女が帰ったあと、名前に覚えのあったためずっと記憶を辿っていたのだが、少しして其の名前の主は異能者や裏社会の中ではかなりの有名人だった。

 様々な人に変身出来る異能力。その性質上、不老不死の能力があるという本名、年齢、性別、国籍不明の異能力者。「かぐや」と云うのは日本で云われる仇名。月宮は恐らく今考えたのだろう。




「やあ。また逢ったね」


月宮は次の日も同じ席に座っていた。


「なんで俺がマフィアだと知っているんだ?」

「マフィアに潜り込もうと思えば簡単に出来るからね。其れに私の元には信者が沢山いる」


昨日の明るい笑みとは違い、友人の一人が浮かべるような悪巧みの心を含んでいる怪しい笑み。

 信者と云うのは彼女を慕い、信仰する人間の事で世界中何処にでもそう云った人物はいるとのこと。其の人達に情報を粗無償で貰っているらしい。

 今日の彼女の格好は中学生ぐらいに見える女子の格好で其れらしい制服も着ている。見た目に合わせて飲んでいるのはトマトジュースだ。


「此処のマスターは善いね。口も堅いし。決まった客しか来なくて自然体で居られる」


のんびりと癒されているような猫なで声で呟いている。自然体と云っても異能で姿形を変えているのだから完全な自然体ではないのだが。


「ねえ、織田君はなんで此処に通うの?」


突然の質問だったが俺は答えた。すると其処から段々話が広がりいつの間にかかなりの時間が経っていた。流石千年以上生きていると云われることはあり、話の内容も話の回し方も訊き方も全てが上手い。

 あっという間に過ぎた一時間後、地下の此の部屋に足音が近づいて来る。如何やら友人二人がやって来たようだ。俺は二人に彼女を紹介しようと思ったが本人が断った。そして中学生の姿から背広の成人男性に姿を変えた。


「私の事は内緒ね。其れと此れ、私の連絡先」


口元に指を置いて、しーっと手ぶりをすると階段から降りて来た二人とすれ違って出て行った。


「先ほどの男性と呑んだのかいオダサク」

「この時間帯に他の客は珍しいですね」


友人の太宰と安吾が並んで座り、少しだけ彼女の話題が出た。二人は気づいていないようだった。


「友人と待ち合わせしていると云ったら気を使わせてしまったようで帰ってしまった」

「懸命です。一般の人に太宰君の話を訊かせられませんからね」

「私、そんな奇抜な話はしていないと思うのだけど」


そんな事より訊いて今日この前逢った紫の上が夢に出て来たのだよ!!と太宰は少し興奮気味に話し始めた。

 紫の上と云うのは先月に横浜の街で出会った修学旅行生だ。マフィアなどが蔓延る街には似合わない程の気品溢れるいで立ちの太宰と同世代程の少女。太宰本人は彼女の気を失って眠っていた姿したか見ていないのだが、そんな姿にも心を奪われた彼が勝手につけた仇名だ。紫というのは俺が見た彼女の藤色の瞳と紫かかった黒髪から来ている。

 以来、太宰は頻繁に其の少女の話をするようになった。此処でも話をするが如何してもすぐ云いたいと思った時は電話までしてくる。太宰の少女への心酔度は並みではない。


「夢の中の紫の上は本当に本当に可愛いのだよぉ~。絶対現実でも可愛い。そして性格も善い!!」

「妄想も程々にしないと現実に戻った時に死にたくなりますよ。其れに性格は決めつけでしょう」

「決めつけじゃないもん!見ず知らずのオダサクを助けたのだよ!絶対善い子だ!私が歪ませてあげたい!でも元から歪んでても勿論好きさ!全部好き!」


歪んでる……と安吾は途中で口に出すのを止めてしまう。俺的はここ最近、太宰の年相応の反応が見れて面白いと思うのだが、そういうとまた安吾が溜息を付くだろう。しかし、太宰はまだ十七歳になったばかり、好きな異性に舞がるのは仕方ない。


(そう云えば、月宮は如何して俺に……)


太宰が熱心に少女の魅力を熱弁している間、俺はあの人物について考えていた。

著作者の他の作品

橙オレンジ様宅のアーネストと清原とのうちよそ。公式キャラは出て来ません。

陽月様宅の企画、「文豪学園」の三次創作。※本編の設定から多少いじり、一部派...