冷たい人魚

ゆかりこ@原稿中…のはず
@ladyyukariko

触れようとすれば逃げる癖に、気づくとすぐ側にいる。愛しい人は触れることすら叶わない。

人魚に俺の手は熱過ぎる。溜息をつき背を向ければ、肘を掠める微かな感触。振り向かずに本を見つめる。

早くあの躰を抱き締めたい。胸を吹き抜ける嵐には気づかぬ顔で、恋人は俺を見上げる。

無垢な瞳が今夜は苦しい……




臆病な僕の躰は、彼の手すら触れることを許さない。彼の熱い手で僕の肌は火傷しそうだ。少しずつ距離を狭めて、そっと近づいた。本を読む彼は顔を上げない。人差し指で肘に触れる。もっと近づきたい。恋人に触れたい。厄介な躰を僕は持て余す。

心の中でそっと呟く。…あなたが欲しい…あなたに触れたい…