松野カラ松という名の舞台から降りてこない(カラ一)

マリア@松二期おめ!
@rosekike69

松野カラ松という名の舞台から降りてこない(前編)

俺の名前は松野一松。

松野家四男坊でもある。


俺には三人の兄と二人の弟がいる。

長男のおそ松兄さん…次男のカラ松兄さん。


三男のチョロ松兄さん。

そして、五男の十四松と末弟のトド松。

俺たちは六つ子なんだ。


産まれてきたときからずっと一緒だったから…何も不自由もなく育てられ大人になった。

大人になるにつれ兄弟の個性は豊かになり俺もそうだけど…カラ松兄さんはもっと変わった。

いや…変わっていない…昔から優しかった…今も…。


今も…そうだと思いたい。




「ねぇ、おそ松兄さん?」 「どうした?トド松?」

いつもと変わらない我が家。

仕事もしないでゴロゴロとしているおそ松兄さんとスマホをいじっているトド松。

鏡を見続けるカラ松兄さん。


野球しに行っている十四松と就活しているチョロ松兄さんは相変わらず家にはいない。

そして、部屋の隅っこにいる俺…。


別に何かがしたいわけでもないからぼーっとしているけど、何かが違う気がした。

違和感云々の問題ではないけれど…。


「お前なぁ!トド松!!お兄ちゃんに向かってなんだその態度は!!」


「えっ!?ただ聞いただけじゃないの!!なんで怒るの?!」


また始まった…。

よくおそ松兄さんとトド松はちょっとしたことで喧嘩をしていた。

今日もだった…。



2人が喧嘩をすると必ずカラ松兄さんが有無を言わずに止めに入った…はずなのに。

止める気配すらなかった…。



「ねぇ!カラ松兄さん!助けてよー!!」


「おい!カラ松!絶対に止めるなよ!!」

2人の言葉が耳に届いていないのか…ただただ鏡を見続けるカラ松兄さん。



「カラ松兄さんってばー!!聞いてるの?」「カラ松!聞いているのか?」


「うるさいなぁ…静かにしてくれないか!トド松におそ松!」

温厚なカラ松兄さんが怒鳴ったことに驚きを隠せなかった。


もう良いと居間を出ていくカラ松兄さんをただ眺めるだけしか出来なかった。


「…い、一松兄さん…」「ん?なんだ?」

トド松が恐る恐る俺に聞いてきた。


「カラ松兄さんってあんな感じだった?」


「いや…違う気がする…」

あんなのカラ松兄さんらしくなかった…温厚なはずなのに…。

何かが違う…なんだろう…。


「おそ松兄さん…僕、カラ松兄さんが怖い」「トド松…お前もか。俺もなんだ!なんなんだ!あいつは…」

俺も怖いよ。カラ松兄さんがあんな風に怒るのを目のあたりにすると。


「ちょっと…様子見てくる…」 「い、一松兄さん…」

大丈夫だよとトド松を宥めてから、カラ松兄さんのいる部屋に向かった。





「か、カラ松兄さん…?」

恐る恐る部屋の襖をそっと開けた。

開けてみると、そこには何事もなかったように鏡を見ているカラ松兄さんがいた。


「あ、あのぉ…」「ん?どうした?一松?」

すごく笑顔で見てくるカラ松兄さんに寒気を覚えた。


なんで怒ったのか、聞けるわけがない…。


「いや…なんでもない」「そんなわけないだろ?言ってみなよ?」

何でだろ…いつものカラ松兄さんではないのは気のせいだろうか…。



「あのさ、その…なんで、急に怒ったの?」


「…」


言わなきゃよかった…そう思った…でも、もう遅い…。


「か、カラ松兄さん…ただそう思っただけだから…気にしないで。」


「一松…そう思っただけって言ったけどさぁ…これが俺の本性なんだよ」


「えっ?」

耳を疑った…本性って、じゃあ今までのあの優しいカラ松兄さんは何だったんだ…。

怒りっぽいのが本当のカラ松兄さんで…でも、なんで俺に言うんだろ。


「まぁ、普通はそういう反応するだろうな…良かった!俺演劇部やっていて!ここまで兄弟を騙せたんだからなぁ…」


「だ、騙しったって…どういう事なんだよ!!」

二十数年間、俺たち兄弟を優しい兄だとずっと騙してきたカラ松兄さんが許せなかった。

なんで、こんなことするのか見当もつくはずない…信じたくない気持ちが先走った。



「なに…そのまんまの意味だよ?優しい自分を演じてきただけ!すごいよなぁ!俺って…あはは!!」


「ふ、ふざんけんなよ!!」


「ふざけんな!それはこっちのセリフだよ!一松…なぁ、分かるだろ?自分を演じる俺の気持ち?」


「分かるわけない!カラ松兄さんは優しいはずなんだ!」

優しいはず…そう、思ってきたんだ…なのに…訳が分からない。

カラ松兄さんの言っている言葉が理解出来ない。


「まぁ、なんとでも思ってろよ!それに、俺の言った言葉全部誰にも言うなよ?言ったらどうなるか分かる?」

すごい笑顔で言ってくるカラ松兄さんの圧力に負けた気がして、俺は分かったと承諾した。



でも、俺はカラ松兄さんを甘く見ていたのかもしれない…この後恐ろしい目に遭うまでは…。



つづく!