甘く苦い果実

うらりょん@ハンクラウェーィ
@StellaScentFlos

始まりの二人

この小説は夢小説 (名前変換ができる小説) です。
キャラベルに登録してログインすると、登場人物の名前をお好きな名前に変更できます。

「…園咲さん!」

翌日。電話で彼女の無事を確認してはいたものの、不安は完全に拭い去れてはいなかったらしい。大学で彼女の姿を見つけた瞬間、思わず彼は荷物を全て放り出して彼女を抱きしめていた。

「よかった…無事で…本当によかった…」

「ちょっ…と呉島君!?気持ちは嬉しいけどみんな見てる!見てるから!」

「あぁ、ごめんね、つい…でも、本当によかった…」

顔を真っ赤にして彼の腕を解こうとする彼女がまた愛おしくて、ずっと抱きしめていたくなる。…実行したら間違いなく彼女の機嫌を損ねるだろうが。

「…ね、光実君」

「え、」

彼女が彼のことを名前で呼んだのは、これが初めてのことだった。

「初めて一緒に行ったフルーツパーラー、また行きたいな。今日、今から」

「え?…いや、もちろん僕は構わないけど…」

「じゃ、決まり!道までは覚えてないから、案内して?」

彼女が講義を欠席したのは、あの日だけのはずだ。まして、自分からサボりを提案するなんて。

「ほら、早くいこ?」

呆気にとられる彼の手を取り、教室とは反対の方向に歩き出す。

「あれからずっと考えてた。…酷い振られ方したし、さすがに未練もないけど。前の彼氏と別れてすぐ別の人とくっつくなんて、軽い女って思われないか、とか。…他にも、いろいろなこと」

足を止めて振り返った彼女は、照れたような笑いを浮かべながらも、真っ直ぐ彼の目を見つめていた。

「でも、やっと結論がでたよ。…光実君。私と…付き合ってもらえますか?」

「…喜んで」

ここがキャンパスの中庭でなければ、きっと彼女を抱きしめていただろう。…代わりに、長く綺麗な髪を一房掬い取って、口付けをした。

「誓うよ。…必ず、薫さんを幸せにする」

「『貴方を想う』?…さらっとそういうことしちゃうのって、なんかずるいなぁ」

意外だったが、髪へのキスが意味するところは知っていたらしい。

「じゃ、唇にしてもよかったの?」

からかうように訊ねる。

「ちょっ、いいわけないよ!ここ外だよ!?…っていうか、そういうのはもっと…ムードとか…」

一々顔を真っ赤にして慌てる彼女がどうしようもなく愛しくて、笑みが溢れる。

「それじゃ、二人きりになれてムードもあるところに行こうか?…それともその前に、フルーツパーラーかな?」

「…フルーツパーラー」

失言だった、という顔で俯いてしまった彼女の手を引いて、歩き出す。

「まだ、始まったばかりだけど。これからずっと、宜しくね。…薫さん。」

「…こちらこそ。宜しくね。…光実君」

返事の代わりに繋いだ手を強く握ると、柔らかな掌から温もりが伝わってきた。

(そう、始まったばかりだ。…だけど、終わらせはしない。薫さんは僕が守る。僕の、この手で。…誰にも、渡さない)


…彼女は、そんな彼の心中など知らず無邪気に微笑んでいた。