いつかきっと

彩深 リアは銀プロ副社長[愛方⇛楓]
@Lia_kaya

Episode.ONE

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――――またいつか、きっと貴方に会いに行きます。――――


彼女の言葉代わりに、その文字を見てから何年経っただろうか。五年…いや六年か。


ダラダラとそんな事を考えながら、彼、太宰治は、先程眠りから覚醒した布団の上に寝転がったまま、目を細めて天井を見上げていた。


六年間、一瞬も忘れることのなかった一文。最早、手紙の文字が脳味噌に焼き付いているのではないかという程に、字体までくっきりと覚えている。


時計は午前8時20分を指している。完全に遅刻だ。もう暫くすれば、彼の相棒である国木田から、お小言を添えた電話がかかってくるだろう。毎度毎度ご苦労なことだ。


…………彼女は、笑顔が可愛かった。自分は、彼女の笑顔が好きだった。

元々よく笑う娘《こ》ではあっから、誰と居たって基本的には笑っていたけれど。自分だけに向ける、少しはにかんだような、恥ずかしがっているようなあの笑顔が特に素敵で、好きだった。


……過去形、ではない。


ずっと、あの日から。何人の女と関係を持とうが、何人の女に心中を申し込もうが、自分の気持ちが彼女へ一途なのは、自分が一番知っていた。

誰を抱いても、彼女を抱いた時のように愛しさが込み上げてこない。誰に笑いかけられても、彼女のあの笑顔に敵う者など居ない。


彼女でなければ、満たされない。


………存外、自分は彼女に飢えているようだ。

当たり前といえば、当たり前だ。あんなにも愛し合った、こんなにも愛している。

愛しい彼女に、六年も会えていない。今まで壊れなかったのが不思議ですらある。


――――8時30分。


時計を確認したと同時に、聞きなれた携帯電話の着信音が部屋に鳴り響いた。

相手は、云わずもがな、国木田。


ドロドロと闇に沈んでいた思考を引き上げ、いつも通りに電話に出た。



「もしもぉし?どうしたんだい、国木田君」


「どうしたんだい、じゃあないだろうこの唐変木!!今何時だと思ってる!!!」



んー、と考える素振りをして、答えた。



「8時半だねぇ」


「貴様…っ、判ってるなら早く出社せんか!!一時間三十分の遅刻だぞ!!」


「……国木田君、実は私、今日大切な用事があって――」


「軍警との会議以上に大切な用事など、貴様にあるのか?」



太宰の言葉を遮って、威圧的な声で云った国木田に、太宰は判ったよぅ……と気怠く答えた。

あと三十分以内に来い!でなければ書類を五倍に増やしてやる!!と、不吉なことを云い捨てて乱暴に通話を切った国木田に苦笑を零すと、ノロノロと起き上がって出社の準備を始めた。



気まぐれに活けた桔梗の花が、どこか淋しげに咲いていた。