【とうらぶSS】西の審神者と東の審神者(仮題)

漆・出発

――本日は晴天なり。


 清々しい朝。雪は日陰の方に少し残ってるくらいの暖冬で、ところどころ雪解けで濡れた場所は氷が張っている。


「たーいしょー! 朝だよー!」

「大将、起きろってー! 早く行こうぜ!」

「うー……寒い。あと一時間……」

「なげぇよ!?」

「早く起きて出かけようよー! 人妻の楽園なんでしょー?」


 カッと目を開いた審神者がむくりと起き上がる。おぉ、起きた……とか言ってる厚君と信濃君は流して包丁君にキッと向き直る。


「包丁君、“人妻”発言は禁止です。“お姉さん”にしましょう」

「えっ! まだ出かけてないのに?!」

「包丁君はうっかり言いそうだから今のうちに癖付けておこう!」

「えー!」

「さ、着替えて準備するから、皆は出てった出てった! ごはん食べてから出かけるから先に大広間に行っててね」


 今日の護衛兼同行者の厚、信濃、包丁が返事をして出て行った。ちなみに薬研はここにはいない。早船さんの方に行ってると思われる。

 さて着替えと身支度をして大広間へと向かった。


「皆、おはようー」

「あ。主、おはようございまーす!」


 みんなそれぞれに返事を返してくれ、笑顔で答える。みんな揃ってるようなので審神者の席に着くと、軽く食膳の挨拶を済ませ両手を合わせる。


「お待たせしました。では頂ましょうー……いただきます」


 頂きますという声と共に周りからカチャカチャと箸を持つ音、器を持つ音が鳴る。今日もご飯がおいしい。やっぱり朝は和食だよね。あぁ、お味噌汁が身に染みる。

 食べ終わり次第、今日の遠征組の編成をして、現世へ向かう組と共に出立準備をする。ほかの刀剣たちは今日はお休みだ。連隊戦の疲れを癒して欲しい。


「それじゃ皆、留守はよろしくね。あとお休みだからって羽目を外し過ぎない事。DVDや本は見てもいいけど、ちゃんと片付けてね? あと、御夕飯用にお魚買ってくるから今日の夜はそれね。それから……」

「君は母親か! あとは僕らが何とかするから、こちらは気にしなくていいよ。そんな事より、早船をよろしく頼むよ」

「おぅ……わかりました」


 すっかり早船さんと仲良くなったらしい歌仙さんからツッコミをいただいた。そういえば天気について話すことを忘れてた。


「あ、今日は夕方以降に寒波が来るらしいのでなるべくその前に帰ってきますね。天気が酷いようなら連絡入れますので外で待つような事はしないようにお願いします……特に長谷部さん!」

「しかし主!」

「やっぱり待つ気だったな?! みんな! 長谷部さんの事は頼んだよ!」

「全く、この男はしょうがないですね……」

「俺と宗三で見張っとくから大丈夫だ。任せとけ大将」


 長谷部さんの舌打ちが聞こえた気もしないでもないけどスルーしておく。


「じゃあ第二部隊から第四部隊の編成と遠征先は鳴狐さんにお知らせしておきましたので、そちらの指示に従ってくださいね。鳴狐さんとお供君、よろしくお願いします」

「お任せください主様!」

「うん。大丈夫、任せて……」


 静かに頷いた鳴狐さんに笑顔で頷き返すと、石切さんが廊下側の奥から歩み出て来た。


「あぁ、ほら主、顔布の代わりにこれを持って行っておくれ」

「うん?」

「今回は現世だからね。あの顔布はさすがに着けられないだろう? 加持祈祷をしておいたお札だよ。お守り袋の中に入れておいたから肌身離さず持っていてくれないかな?」

「えぇ?! 石切さんのお守りとか、もうこれだけでいいんじゃないだろうか……!」

「現世用だからね? こちらにいる時は顔布を付けて出かけてもらうよ?」

「えー……そこもお守りにしようよ石切さん」

「それはそれ、これはこれだよ」

「ちぇ……でも、ありがとうございます。百人力ですね!」


 受け取ると紐が異様に長かった。これはあれだ。以前みんなに配った笛のような……首から下げろって事ですねわかります! 把握するとお守り袋を首から下げて服の中に忍ばせた。


「じゃあ、何かあった際は近侍の三日月様に指示を仰いで下さい」

「任されたぞ、主。気を付けて行って参れよ……」


 次の現世は俺も行きたいなという三日月様の呟きはひとまず聞かなかった事にして、玄関に集まった皆の顔をぐるっと見回し、一つ頷く。


「はい。それでは、お先に出発しますね。行ってきます」

「無事のお帰りをお待ち申し上げておりまする」

「いってらっしゃーい!」


 元気な声に見送られ、現世へのゲートをくぐった。




「さて、では早さんは助手席に。皆は後ろね。それで、ほー君は誰かが抱っこしてシートベルト付けて、あと鞄は座席の後ろのトランクに置いてね」

「大将、しーとべるとってのはどれだ? とらんくってのは……この椅子の後ろか?」

「その椅子のとこについてるベルトだよ。トランクはそう。ベルト装着の見本見せるから信濃君座って」

「うん、わかったよ」


 揃いの肩掛けのスポースバックを外してトランクに置いた信濃君を窓側に座らせシートベルトを引っ張りながら説明する。


「端っこの人はここの肩の方からベルトを引っ張ってここにカチャッと鳴るまで差し込む。これでおっけ。首苦しくないよね。苦しかったらここを押して上下に移動できるからね」

「へー」


 シートベルトの高さの調整の仕方を教えて、次は真ん中席だ。


「誰がほー君抱っこする?」

「オレがするぜ」

「じゃあ、ほー君は厚君と一緒に真ん中座ってね」

「ほーい!」


 二人が鞄をトランクに置いて真ん中に座ったところで椅子の腰のあたりからベルトを引っ張り出す。


「真ん中はこのベルトを腰につけるだけだね」


 二人一緒にベルトでくくってカチリと装着させる。これが正しいのかはちょっと自信ないけど、ベルトしてる人の上でベルト無しの抱っこよりははるかにマシだと思う。


「んじゃ薬研はさっきの信濃君と同じように鏡合わせでつけてね。」

「おう、分かった」


 薬研が鞄をトランクに置いて座ったところでパタンと後部座席のドアを閉めて、今度は助手席に回る。


「早さんはこちらに座って下さいね」


 助手席に乗って貰ってベルトの付け方を教えてしっかりと付けると、運転席へと回る。


「今日はいい天気だから一時間から一時間半位かな~。運転中は私に声掛けちゃダメだけど、うるさくし過ぎないようにならお話してていいからね? あと酔ったら教えてね。酔わないためには前見てるか景色見てる方がいいよー? あと座席の後ろにあるクーラーボックスに飲み物入ってるからそれ飲んだりだね。 では、出発ー!」


つづく

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