BL「不良と小さなお友だち」

しおり*創作アカ
@ss0usaku

(3)

次の日。僕は朝から体育館倉庫へ向かっていた。あんなにみんなに止められたけど、やっぱり僕は先輩があんなことしたって信じられなくて、その理由も分からなくて、ちゃんと本人に聞こうと思ったんだ。それに、僕が理由だったら、他の人に危害を加えるのはやめてほしいって、頼み込むんだ。殴られても、なにされても、僕のせいで他の人が傷つけられるのを止めたかった。


倉庫前につく。そーっと小窓からなかを覗き込むと、いつもと変わらぬ姿の先輩がいた。


ふーっと一息つく。やらなきゃ。


「おはようございます……」


できるだけいつも通りに、平常心を保って、先輩に声をかける。


「おはよう」


先輩の方も、いつも通りに返事をしてくれた。なんだか、安心。


「昨日は来なかったね。どうかしたの」

「えっと、昨日は……」

「僕のこと、怖くなった?」


先輩がこっちを向いた。見たことのない、感情がごっそり抜け落ちたような、でも、なにかこちらを捉えようと粘りつくような、そんな目。


「えっと……僕」

「1年1組のこと、殴ったのは僕だよ。3年3組の『悪魔』ってのも僕のこと」

「でも……」

「でも、なに?」


なに?なんだろう、何を言えばいいんだっけ。


「でも、先輩は優しい人です」

「田所にだけはね」


僕にだけ……


「何故?」


聞いてしまったら、後戻りできない気がした。だけど聞かなくちゃ。僕は今日、この何故を聞きに来たんだ。そして、決着をつけるために。


「田所が好きだから」


好きだから。好きだと言われても……


「僕はチビではありません」

「チビが好きだとは言ってないよ。田所が好きだと言った」

「僕……?」


僕を好き。先輩が。

かーっと顔が熱くなる。


「かわいいね」


先輩が寄ってきて、頭をぽんぽんしてくれる。先輩が僕のことを好き……


「かわいい」


そう言って、先輩は僕に顔を近づけてきて……



「だめだ!」


どんっと押し返す。

いろんな思いが、心のなかを渦巻く。

そんな感情たちのどこからどう手をつければいいかわからないくらい、僕は混乱していた。


「やっぱり、田所は僕が嫌い?」

「嫌いではないです」

「でも、キスさせてくれなかった」

「それは……」


それは、それは。


「先輩のことは好きです。でも、先輩は悪い人です。やっちゃいけないことを沢山しました。僕はそれを許すことはできません」

「悪いことしたからキスさせてくれないの?」

「キスしていいとか、悪いとかいう話じゃなくて……」


きょとんと、全く罪悪感のなさそうな顔をする先輩をみて、ああ、確かにこの人は「悪魔」だって、思った。



「先輩、僕、しばらく先輩とは会えません」

「嫌いになった?」

「違います。好きって言われたのは、嬉しかったです」

「じゃあ」

「でも、だめです。先輩が、ちゃんと反省して、ちゃんと分かってくれなきゃ、僕は先輩のこと、ずっと許せません、許せない人に好きって言われても、応えられません」


自分でも何をいっているのか分からない、支離滅裂だ。だけど、全部本音だ。好きって言われたのは嬉しい。だけど許せない。許せないから、どうしたらいいか分からない。分からないから、距離を奥しか、逃げ出すしか、今の僕には思い付かなかった。