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そーじゃの
@souzyano_note

STAGE.9 ニューウェポン

キィン!と二つの刃が交錯する。


「速い!」


僕は反射で後退、鋸猫も回転しながら僕達と距離を取った。

間髪入れずに高速でこちらに飛びかかっては離れるという動作を繰り返してくる。僕は受け太刀するので精一杯だ。


「くっそ……!ちょこまかとめんどくさい!」

「飛びかかってきた瞬間に斬り落とせませんか?!」

「背中の刃が邪魔でこっちの斬撃が思うように通らない!切るなら体勢が崩れたところを斬るしかない」

「私の武器は大型剣なので高速戦闘を得意としないんです!申し訳ないけどよろしくお願いします!」

「わかった!やってみる」


とは言ったもののどうすればいいのか……。風雲斬だけじゃ正面から攻撃するのは無理だ。こちらは背中に二人がいるから下手に動けない。僕らよりも鋸猫は機動力が格段に上だ。

考えている間にも攻撃は続く。受け止めながら思考をフル回転させる。


「きしゃぁ!!」

「っ!!」


鋸はいなせているが前足の長く伸びた爪が防御の隙間を退けて体を何度も掠める。傷を受けた部分が赤く光り何故か呼吸が荒くなる。

やはりこの世界ではダメージの受け方が現実と違う。傷口に直接的な痛みはないが全身の疲労という形で確実に現れてくる。


「何かないのか!打開する方法は!」


ドカッ!と音がした。遥香が暗赤色の大剣――紅魔炎剣で鋸猫を弾いていた、というよりかは殴り飛ばしていた。


「挟み撃ちして弾いた後に、飛んでいった本体を斬りましょう!」

「いやそれじゃあダメだ!呉無さんの武器じゃ高速で動くコレをいなし続けられない!」

「じゃあどうするんですか!」

「時間を稼いでる!何か考えてくれ!【白】も!」

「……わかった!」


遥香が片側の防御を手伝ってくれているお陰で少しは負担が軽くなったけど、状況はまだよくないままだ。どんどんダメージは大きくなっていっているから疲れが大きい。防御に不得手な呉無は僕以上だろう。何かないのか……?


『「ほおらみろ。しょうもねぇお喋りしてたら俺の傷が治っちまったぞぉ?」』


そういえば、【青】の瀧瀬華次は言っていた。再生能力ヒーリングそれに固有能力プレイヤースキル


「そうだ!色々あってすっかり忘れてたけど、【青】が言っていた!プレイヤー一人一人にはそれぞれ固有能力プレイヤースキルがあるんだ!だれかここを打開できるような能力を持ってない?!」


「……急に言われても……。いまそんなこと初めて聞いたし、あるとしても発動の仕方がわかんないよ!」

「右に!同じ!ですっ!」


「ていうか、あの猫動きが速くなってません?!」

「それは僕らがダメージを受けて疲れているせいであいつのスピードについていけなくなってるだけなんじゃ」

「……いや、速くなってるよ。徐々にだけど。そろそろやばいかもしれない。一旦引いてから作戦を立てるのはどう?」


「――っ、仕方ない。ここにいても対抗策は出て来そうにない。一度この廊下を抜けて階段の上まで避難しよう!」

「……おっけい」「了解です!」


バックステップを少しづつ取り、だんだんと順調に距離が離れていった、その時だった。


「!?見てあれ……!?」

「どうしt……!?」


鋸猫が飛びかかってくるのを一旦中断している、と思ったら何やら様子がおかしい。攻撃をやめ、引いてくれるような様子ではない。


「しゃぁ!!」


鋸猫の輪郭がぼやけ……、その姿は三匹分へと変化した。端的にいうと、鋸猫が四匹に分身した。


「いやコレどうする!?」

「増えれるなんて聞いてないんですけど!?」

「……本格的にまず」


い、と【白】が言い終わるまでに分身鋸猫が四方を囲み、僕らの退路を断つ。パニックになるのをどうにか抑えて、


「背中合わせだ!」


三人で全方向をカバー出来るように四体へ相対する。とはいえ、これは苦し紛れの応急処置。

【白】は戦闘に不向きな気がするし【赤】は武器の相性的に不利だ。

【緑】の僕も風雲斬だけでは鋸猫にダメージを与えられない。


「やばいっ!数的不利だ!」


どうにか弾ききっているものの、長くは持たない。

そして遂に、【白】が銀星杖を弾き飛ばされた。無防備になった【白】へ鋸猫が飛びかかる。


「危ないっ!!」


咄嗟に僕は手元の風雲斬を【白】へ襲いかかっている猫の方へ投げた。

同時に僕の方へ襲いかかってきていた鋸猫を僕は躱すせず、左脚に斬撃を受ける。

僕はバランスを崩して片膝を着いた。


「くっそ!」

「ふ"にゃっ"!!」


そして予想外の方角から飛んできた攻撃を【白】を狙っていた鋸猫は躱すことが出来ず、剣を腹に突き刺したままそこへ倒れた。


「やった!」

「まだあと三匹!油断しないように!」


倒したが、状況は最悪。敵は三体が万全のコンディションで残っていて、僕らは僕と【白】が武器を落としている。【赤】一人ではこれだけの数は捌けない。


「……辰馬!さっきの盾!」


そういえば、僕は新しい武器をもってたっけ。使ったことない武器を実践で投入したくは無かった。けど仕方がない。


「ソフトサークル!!」


未知の武器ウェポンでも丸腰よりはマシだろう。光を黄色く放つ正確に丸い盾。いささか小さいその盾を鋸猫へ向けてその攻撃を弾く。黄色い光は残像を描きながら、猫の小さな凶体を跳ね返した。けど、


「三匹、いや二匹分払うには小さすぎる!」


遥香一人で一匹防ぐのすら厳しそうだ。全身に細かく傷の赤いエフェクトが現れている。


「辰馬!……」

「何?」

「もう一回その盾使って」


訳が分からなかったが、言われずともこれしか防ぐ手段がないのだから使う他ない。


「はぁっ!!」


盾を横薙ぎに振って、二匹分の斬撃を受け流す。黄色い残光が空間に軌跡を描いた。


「やっぱり……」

「どうした。何かあった?」

「ソフトサークルを振ったときに描く残像がその瞬間に実体化してる。……つまりソレを振った一瞬の間にサイズが拡張してる」

「ほんと!?」


喋りながらソフトサークルを振ると確かに元のサイズでは明らかに防ぎ切れない範囲までカバーしている。


「呉無さん!こいつらの動き一瞬止めたら倒せる!?」

「善処します!!」

「無理じゃあないんだな!十分!」


四方に分散した鋸猫。このタイミングで、


「二人とも俺の後ろに!!」


ガッと背後に二人をかばう。僕は体を斜めにして四体全てに盾を突き出すようにして相対した。

全部が飛び出して来たこの機会を見計らって、


「っせーのっ!!!!」


高速でソフトサークルを一周、2周。一周めは自分たちを守るためにさっきと同じように内側に。もう一周は弾いた鋸猫を捕まえるように三体ごと纏めて巻きつけるように。

全身もバックもできなくなったものを駄目押しとばかりに床へ巨大な円を描きながら押し付ける。爪や歯や刃をぶつけて必死に抵抗してくるが、黄色の硬い防壁を破るには至らない。


「呉無さん!!」


「はああぁあああああっ!!!」


蓋のように巨大化した盾が消えるのに合わせて二回転振りをつけた紅魔剣の大刃が炸裂する。

勢いのおかげで鋸猫の刃もろとも三匹まとめて切断した。


パアン!という音とともにオーバーなくらい四匹の体は爆発四散する。

残った空間には灰色のメダルが二枚チリン、と音を立てて転がった。


「やった……!」膝をつく【白】の少女。

「よかったです――」胸をなで下ろす呉無。

「危なかったなぁ」


僕は壁際に落とした風雲斬を回収。そこへコロコロと転がって来た灰色のメダルを掴んだ。

掲げるようにして二人に見せる。


「メダル、あったぞー」


嬉しそうな顔が返事だろう。多少は無茶をした甲斐もあったというものだ。

もう一つは、っと。

三人でキョロキョロと見回す。横幅もかなりのサイズあるこの建物。遠くへ飛んでいってたら探すのが厄介だぞ……。


「あ……あれじゃない?」


元来た道――階段の方へ転がっていっている。


「おーい待てー」


全然止まりそうな気配はなく、コロコロと――。


コツンと、


廊下の終わりのあたりで茶色い何かにぶつかった。


それは靴。

階段の向こうから歩いて来た人間のもの。


メダルがカチャリン、と倒れる。


「【レッド】、【グリーン】を確認。……思ったより手間はかからなかったわね」

「あれがそうじゃんね。ふーん。オレらとおんなじくらいの年齢としじゃん」

「そういうこともあるだろう。それよりも――」


現れたのは一人でも、二人でもなく、三人。


紫のシャツに白衣を纏う長い紫髪の女性。

橙のシャツに白衣を纏う軽い口調の青年。

黄のシャツに白衣を纏う渋い風格の男性。


三人とも白衣をつけていて、形状は違うものの耳にイアフォンやヘッドフォンを装着している。

【黄】の男性はヘッドフォンを首にかけて下ろすと言った。


「そこに居る三人目は、【ホワイト】のカラーで間違いないかね?」


【赤】も【白】も状況がつかめていないようだ。

だけど、僕は【黄】の問いかけは無視して質問で返事をする。


白衣にヘッドフォンという格好、そのどこか高圧的な雰囲気、知り得ないことを知ってそうな態度。前に似たようなのに会った。そいつは【青】だったけど。こいつらはただの【紫】【橙】【黄】の参加者プレイヤーじゃない。おそらく、この世界の製作者。僕達を訳が分からない世界へ転送とばした元凶。



「あんたたちは……、研究者組リサーチャーか!!?!」

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