【確かに恋だった】僕が君の手を5題【5話完結】

磐城 葉月
@haduki0205

4. やっと素直になれたから

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(では仁王くん、思い立ったが吉日ということで今日の放課後ですね)

(はッ!? 何を言っ)

(あっ清川さーん今日みんなでカラオケ行きませんか?)

(ばッk……)

(えっいくー! あとだれ誘うのー?)

(私が適当に誘っておきますから後でのお楽しみということで如何でしょう)

(えー! サプライズってやつだねー! たのしみー!)




そんなわけで今カラオケ。





…いやおかしい。

絶対におかしい。

なぜ俺は今、彩菜と2人でカラオケにいるのか。



「………」

「………」



最初はちゃんと柳生と3人で入ったはずだった。

フロントで人数伝えて、

部屋まで3人でワイワイしながら歩いて、

部屋に入って鞄をまとめて置いて、

さぁドリンクバーに行こう、と後ろを振り返ったら柳生がいなかった。




あいつ忍者かなにかかもしれない。



「…………」

「…………」



とりあえず飲みものをとってきて、

柳生とその他ゆかいな仲間たちがきっとあとから来るはずと信じて、

そのまま2人で並んで座っている。


歌う空気でもないし(彩菜は柳生によって仕組まれていることを知らないから仕方ない)、

ただただ無言で飲みものを飲んでいる。



「……………」

「……………」



なるべくちびちびと飲んでいるが、さすがにそろそろ1杯目を飲み干してしまう。

このままではまずい。 非常にまずい。

なにか、なにか話題を…なにか……



「…仁王くん」

「ぅヘァっ」



もうやだ。

俺のクールなイメージ台無し。




「あはははは!なに!なにいまの! あはははははは!」

「う、ぅうっさい!わらうな!」

「むりむり!すごい声だったもん! あはははは!」

「急に話しかけられたらびっくりするに決まっとるじゃろ!」

「いまわたしと仁王くんしかいないのになんで驚くの! あーおっかしー……」




わらわれているのが恥ずかしくて。

楽しそうにわらい転げているきみが愛おしくて。



「 え 」



身体が勝手に彩菜を抱きしめていた。



「え、 に、 にお…くん」



彩菜はわらうのをぴたりとやめてしまった。





そうだよな。

俺にこんなことされたって、ちっともわらえないよな。



でも、



「好きな子と2人で並んで座ってたら普通の男子中学生は緊張するモンじゃ」

「彩菜には迷惑かもしれんけどずっとずっと見とった」

「アイツなんかよりずっとずっと前から彩菜のことをかわいいと愛おしいと思っとった」

「俺は彩菜が好きなんじゃどうしようもなく好きなんじゃ」

「ちょっとでいいから、」




ほんのちょっとでいいから、俺を見てくれよ。




「…仁王、くん」




堰を切って溢れた想いは、最後までちゃんと言葉にできなかった。


なんとも情けない話だ。


詐欺師と呼ばれた男が自分自身を騙しきれず、本音を言ってしまいそうになったのだから。




「…すまんかった。 もうこんなことせんよ」




出来る限り無感情を装って声を出す。

まるで余韻など必要無いような素振りで彩菜から離れた。




そこで彩菜も我に返ったのだろう、何も言わずに急いで鞄を持ち、

ガタガタとあちこちに体をぶつけながら部屋を出て行った。



その姿を目で追うこともせず、勢いよく開け放たれたドアが閉まるまでの間、

彩菜の走っていく足音だけを聴いていた。





4. やっと素直になれたから

(見てほしい、なんて女々しくて言えるかよ)