【確かに恋だった】僕が君の手を5題【5話完結】

磐城 葉月
@haduki0205

3. 不安を消したかったから

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あれからまた時間が経った。

俺は毎日、自分の机に頬杖をついて、物思いに耽っている。



待とうと決めたはいいものの、彼と彼女は仲睦まじく毎日を過ごしているようで。

俺の精神もう少し強いかと思ってたけど、…けど、




「…ちょっともう俺限界かもしれん」


「おや、まだお昼前ですよ。

 もうお腹が空いたんですか仁王くん」

「……まぁな…」



最近の俺の口は勝手によく動きやがる。

今日はたまたま後ろを通った柳生に聞かれてしまった。



「丸井くんあたりに頼めばなにか甘いものを恵んでくれるのではないですか」

「……いや…もう少しだけ我慢しようかと思っちょる」




”もう少し”。


それは一体いつまでだろう。




「空腹時の作業効率はどんな人間でも下がりますよ。

 それに甘いものは脳が一番喜ぶご飯ですから、摂取しておいて損は無いと思いますが?」

「そうじゃな…やっぱ痩せ我慢はよくないよなぁ……」

「そうですね、我慢は身体に毒ですから。もちろん、心にもね」


心身相関というでしょう、と教師のような言葉が背中にぶつかる。



たしかに、終わりの見えない我慢は心に毒だと自分でも思う。




「でも今は…我慢しなきゃならん。そういうときなんじゃ」

「仁王くんにダイエットの必要は無い様に思いますが」

「いま、俺が、我慢をやめたら。

 喰い散らかしたら…きっと一生後悔する」




俺だけのきもちで、わがままで、動いていいことじゃないから。

彼女のことも、彼のことも、考えなくちゃいけないから。




「そうですねぇ、確かに喰い散らかすのはテーブルマナーの観点からしてもあまりオススメはできませんね。


 では、つまみ喰いくらいにしておくのは如何ですか」



つまみ喰い。


彩菜をつまみ喰い。


……どうやったらいいんだ。



「今は欲望の赴くままに喰べてしまうような時ではないのでしょう?

 でしたら、あなたの我慢がきくように、ほんのすこしだけ囓っておくのですよ」


「囓るっていったって、柳生、そんな…」



「今のうちに囓っておかないと、君の存在は清川さんの頭から消えてしまいますよ?」



思いがけない台詞に、伏せていた顔を勢いよく柳生に向けた。



「私も元気のない仁王くんを毎日見ているのは忍びないですからね」




わざとらしく位置を直した眼鏡の奥。


紳士が紳士らしからぬ笑顔をたたえてこちらを見ていた。




「…こりゃあ、どっちが詐欺師だか、わかりゃせんのう」

「いったいどれだけの付き合いがあると思ってるんです?

 君の考えはある程度わかるに決まっているでしょう」



俺が柳生の思考を読めるように、柳生も俺の思考を読める。

言われてみれば当たり前の話…なのか?




「さて、仁王くん。 このままダイエット、続けますか?」



3. 不安を消したかったから

(当たって砕けるのは性にあわんのじゃけど)