名探偵コナン「SQUARE」

01.factor

穏やかな日曜の昼下がり。

今までなら特に予定もないこの日を

珈琲を啜りながら読書するなどして有意義に過ごしていただろう。

しかし、江戸川コナン・工藤新一の分裂騒動が起きてから今日まで

全くゆっくりできていないというのが現状だ。


彼が分裂したことに対し、興味深い被検体が手に入ったと科学者の血が疼き、

何よりも自分の隣に江戸川コナンの存在があることを安堵しているのは確か。

憂鬱に思うどころか、喜ぶべき展開なのかもしれない。


しかし、同じ人間が2人いるというのは実にややこしく。

元に戻る方法が見つかるまでそれぞれの生活をしていれば良いのに

なぜか2人は毎日のように阿笠邸にやってくる。

そして、同じ人間なのに口を開けば言い合いを始めるから困りものだ。


そんな憂鬱を解消させるためにも早く解決方法を見つけたいのだが

流石に何時間もパソコンに向かっては疲労も溜まる。

哀は息抜きにといつの間にか空になっていたカップを手に席を立った。



「灰原。まだ元に戻す方法見つからねぇのかよ?」

「んなに、急かすなって。灰原だって頑張ってくれてんだし」

「あいつの作った解毒剤でこうなったんだから

解決方法くれぇ、すぐ分かりそうなもんだろ」



地下室からリビングにやってくると眩しい日の光で思わず目を細めてしまった。

光に目が慣れる間もなく、コナンと新一の言い合う声が聞こえてくる。

同じソファで同じ本を仲良く読んでいたはずの2人が

どうしてこうなってしまうのかと哀は細めていた目をそのままジト目にする。

のちにいつも通りの悶着を素通りして珈琲を淹れるためカウンターに立つ。



「こうなったのはお前のせいだろ」

「俺だけかよ。お前も俺なんだぜ」

「はいはい、わーったよ。だから、灰原を責めるのは止めろよ」

「…ったく」



解毒剤は100%に近い確率で完成していた。

問題は服用時におけるコナンの体調が想定外であったことだ。

体調が悪いことを誤魔化していたことに加え、

こちらが把握していない試作品の服用回数も関係していないとは言えず。

様々なファクターが重なって生まれた現状は自業自得。


コナンも哀を責めるなんて見当違いだと分かっているのだろう。

それ以上、言い返すことなく開きっぱなしにしていた本へ視線を戻す。

しかし、だらだらと綴られた文字を読む気にはなれないのか

苛ついた様子で頭を掻いた。


対して新一はコナンの気持ちが分からないとばかりに

澄ました顔で本の世界に戻っていく。



「全く…」



2人の遣り取りを遠目に見ていた哀は

早く元に戻さなければこっちの身が持たないと

ふんわり湯気の立った珈琲を片手に地下室へ戻るのだった。








End