ずぅっと、ずっと 第3章(最終章)

ゆ៎き៎こ
@yuki178115

第20話(堀川国広)

ジリジリと迫ってくる時間遡行軍。

ひどく痛む足、止まらない血。

兼さんの分まで頑張らないとと思っていた。

だけど……それは間違えだった。

僕も戸惑っていた。

主さんの事を聞いてから。

勝手に自分は大丈夫だと思っていたけど、どうやら違ったみたい。

もう1度刀を握り直して、まっすぐとヤツらを見る。

壁に追い詰められながら、僕はどうしたらここから抜け出せるか考え続けていた。

そんな中聞こえた兼さんの声。

「国広!」

その声に奴らは、サッと振り返った。

「兼さん!逃げて!!」

兼さんはそんな僕の声に耳も傾けずに突っ込んでくる。

「兼さん!」

「ああああああああああああああ!!!!!!!」

何を思ったか、兼さんが急に大声をあげはじめた。

その声に、街中にいた時間遡行軍が一斉に集まってくる。

まずい、兼さん……!

時間遡行軍の塊に飲み込まれ、兼さんの姿が見えなくなった。

行かないで……!

思わず手を伸ばすが、届かない。

しかし次の瞬間、目の前の敵が瞬く間に斬られて、兼さんの勇姿がはっきりと僕の目に写る。

「落とされんなよ!」

呆然と立ち尽くす僕を急に肩にかつぎあげ、すごいスピードで駆け出し始めた。

「ちょ!兼さん!」

よく見ると、兼さんも所々傷ができている。

後ろを振り返ると遡行軍が追いかけてきていた。

「兼さん!下ろして!僕のことはいいから!」

しかしその手は緩むことなく、それどころかどんどん力強くなる。

「さっきは、感情任せに戦っちまったが、……さて、どうするか。」

そう呟くと、兼さんは僕を小道に置いて、振り返り刀を構えた。

「兼さん!1人で戦う気!?だめだよ!はやく戻ろう!」

歴史は守れなかった。

もうそれでいい。

一度帰って別の人に頼んで修正すれば……。

「いいか、国広。今手が届かない主に、俺らが唯一出来ることはな。」

兼さんの目は、真っ直ぐと前を見据えていた。

「歴史を守って、強くなって。」

向こうから、軍の中心と思われる大太刀が掛けてくる。

「主の夢を叶えてやることだけだ。」

兼さんは、サッと足を引き、腰を落とした。

「まだ勝つ見込みがあるってのは、いいもんだ。」

まさか兼さん。

「一騎打ちだ!」

兼さんの相手を見る真っ直ぐな目。

刀と刀とが合わさり、高い音をならす。

「いっけぇ!!!!兼さん!!!」

僕の叫び声とともに響く、金属が擦れ合う音。

大太刀の刃をつたって兼さんが間合いを詰めていく。

「おらぁ!!!!!」

大太刀の体に突き刺さる兼さんの刀。

黒い塵となり、そいつとほかの奴らが消え去った。

「凄いよ兼さん!」

そう言った僕の口を押さえて、兼さんも小道に隠れる。

遠くから、この時代の人のものと思われる声が聞こえてきた。

「危なかったな……。」

「うん。」

幸い被害は無いようだ。

ふっと兼さんは下を向いて何かに手を伸ばした。

「ゼニアオイ……?」

その先にあったのは小さな紫の花。

月明かりに照らされて健気に咲いている。

兼さんはそれを1輪つんでから立ち上がった。

「それどうするの?」

「主へのお土産だ。」

金さんは、ニッと笑うと小さく

「帰還」

と呟く。

時空が歪み、僕らを飲み込んで、気づいたら本丸についていた。

「長谷部!手入れ部屋空いてるか?」

現代はまだ少し明るかった。

兼さんがそう叫ぶと、あいてるぞ、という声がどこからか返ってくる。

「先入ってろ。」

「兼さんは?」

「用事があるからな。」

そう言うと、花を持ってどこかに行ってしまった。

行先はどうやら打刀部屋。

あとから話を聞くと、加州さんに押し花を教わってたらしい。

可愛らしいことをするもんだ。

落ちかけた夕日が手入れ部屋に差し込む。

ゼニアオイの花言葉は温厚、だったっけ。

前に主さんに教えてもらった気がする。

人柄が穏やかで温かみがあること、か。

ちょっと気の荒い兼さんにはあまり似合わないかな……。

でもまあ、主さんになら……。

布団に横になってそっと手入れ部屋の入口を見た。

怪我しても、主さん見に来てくれないのか。

少し……寂しい。

ああ……。

主さんも、寂しい……のかな……?

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