もう一度チャンスを。【お試し】

さく
@saku_mz

もう一度チャンスを。2 明美編

もう一度チャンスを。2


青空の下、のどかな米花町であちこち走り回っている少年がいた。

幼い顔をして合わない眼鏡をしているこの少年は、小学一年生の江戸川コナン。

しかしその正体は、黒の組織に薬を飲まされ身体が縮んでしまった工藤新一という高校生だ。彼は両親から受け継いだ持ち前の頭脳であらゆる事件を解決していることから、東の高校生探偵として有名である。なので身体は小さいが、頭脳はそのままな「江戸川コナン」もまた、「優秀な子ども」として周囲に認知されている。

しかし、その少年が実は未来を知っているとは誰も知らない。彼は未来の世界から魂だけが時間軸を遡り、一年前の「江戸川コナン」に魂が定着しているのだ。

嘘みたいな話だが、これは紛れもない現実である。


あれからコナンは、深夜にこれからの計画を綿密に立て、昼間は悲劇を変えるためにあちこち動き回っていた。

こちらに来てから数日は、とにかく忙しかった。

情報収集に走り、今後の大まかな行動を決め、事件を未然に防ぐ方法を考える。更に、ナツキさんの件。それはとても大変なことだった。なにしろ、一日中頭をフル回転である。


まずは現状の把握のために情報収集。

『過去』といっても、全てが同じとは限らない。何故なら未来を知っているオレがここに来た時点で、もう未来は変わってしまっている。何もかも同じだとは思えなかった。


情報は主にふたつの点で調べることに決めていた。

周囲との関係と、事件などの時間軸との照らし合わせである。


少年探偵団や灰原、蘭や小五郎とどの関係まで進んでいるのか。それとなく会話していると、どうやらもう馴染みの関係になっていたので、「江戸川コナン」になってからかなり経過していることがわかった。灰原についてはふたりになると「工藤くん」と呼ばれたし、最初に会った時の付き合いづらい素っ気無さも感じられなかったのでそういうことだろう。蘭と小五郎も「江戸川コナンは頭がずば抜けて良く、事件にすぐに突っ込んでいく好奇心旺盛な子ども」という認識だった。「過去」だから当たり前だが、たくさんの事件に遭遇していたのは変わらないらしい。

まとめると、既に「江戸川コナン」への信頼が高い、馴染んだ関係になっているという結果だった。とういことは、遠慮なく接することが出来るし、多少不自然な言動をしても大丈夫であろう。


次に、時間軸の照らし合わせ。これがどうも厄介だった。

以前と同じように、同じ時期に起こった事件もあれば、まだ起こっていない事件もあったのだ。おそらく何らかのきっかけがあれば事件は起こるかもしれない。そう身構えていれば対処は出来るはずだ。しかしそれは自分を中心に事件が起こっている気がしてならないのだが、そこは目を伏せよう。


そして深夜に、事件を防ぐ方法を考える。

皆が寝ている深夜に起きているのは身体に悪いが、脳を休めるために4時間ほど睡眠を取っているので不足はない。不確かだった『過去に戻った』という事実は、初日に睡眠から目覚めてカレンダーを見返してみて、やはり夢ではないと確定している。

更に、同時にナツキさんをどう守るか早く考えなければならないため、最初はかなり焦っていた。向こうでナツキさんは探偵事務所に来てから3日後に亡くなっている。その前に何としても方法を見つけなければ、手遅れになってしまう。とりあえずあらゆる方法を出してみるだけ出して、適切で確実な方法を選ぶ手段はないか探っていく。



そんなこんなで、コナンはバタバタ動き回っていた。常にどうするべきか考えていたので、眉にシワが寄っていたり、上の空だったりしていたらしい。小五郎はいつも通り「誰かと喧嘩でもしたんだろ」などと深く考えていない様子だったが、蘭は心配性なうえに案外鋭いので何かあったのか聞かれてしまった。あいにく子どものフリは上手いので、適当にごまかすことは出来たのだが、本当に疲れるほど動いて考えたのだ。




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