用務員のお兄さん

2話

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「絶対に手を離さないでくださいね!」


「それじゃ練習の意味無いだろうに」


目の前で図書館のチャリンコに跨りやる気を出している武者小路先生。人が図書館周りの掃除に精を出していた時、勝手に引っ張り出してきた俺のお古のジャージ片手に自転車に乗りたいと言い出したのだ。


「だから補助輪付けろって……」


「あれは……格好悪い!!」


「ぶかぶかのジャージで膝肘にプロテクターしてる人が今更何を」


「だって志賀は補助輪付けてない!」


「……ははーん」


そういう事ね。


基本的に外出自由なこの図書館。服装を現代に合わせ、行き先を俺に言い自分の金でなら遊びに行ける制度なのだが、時折志賀が自転車を走らせにとだけ言って出ていく時がある。武者小路はそれについて行きたい訳か。


「志賀先生に教えて貰えばいいのに」


「驚かせたいんです!!志賀が出かける時にいきなり自転車に乗って登場したらカッコイイじゃないですか!」


「ほう」


「そして志賀は僕に言うんです。"流石だな武者!"その言葉を受けた僕は志賀と自転車の旅へとーーーーー」


流石は文豪、つらつらと物語が出てくるのは良いんだけど今のところそれ全部妄想で終わりそうなんですよね。


「そして狭いあぜ道で手を繋いで走るんです」


「やめとけ」


確か志賀先生、生前アホな自転車の乗り方して田んぼに落ちたんじゃなかったっけ。



「さあ先生そろそろペダルに足を付けてください」


「うっ……」


右足を乗せては降ろして乗せては降ろしてを繰り返し自転車が進む様子は一向に無い。さっき盛大にコケたから怖いんだろうなあ。

しかしそんなことでは乗れるようになんてなれないから無理やり荷台部分を押してやれば小さい悲鳴と共に前に進んだ。


「待って心の準備が……!!いちにのさんでやりますだから止まって!!!」


「いーから足を乗っけろ!!」


中腰で押す俺を止めるよう地面に足をつけて摩擦を起こす先生。人がいないとはいえ図書館の駐車場に歪な線を描いてしまったので怒られるだろうなあと思いつつ押し続けていれば、諦めたのか覚悟を決めたのか足をペダルに乗せ1回2回と漕ぎ始めた。


「走ってる!!」


「ちゃんとハンドル握ってバランス取れよ!」


案外行けるもんだな。バランス取るために前傾姿勢になったのを確認してから手を離せばよろよろしているが乗れている。俺がまだ押してるんだって認識していると思うと面白いな。


「用務員さん手を離さないでくださいね!」


「もう遅い」


「離しとるやないかーーい!!」


ガッシャーーン

おお、見事なズッコケ芸。


綺麗に横に倒れたなと関心しつつ怪我がないか近寄ると、武者小路先生はうつ伏せのまま体を小刻みに揺らしている。やべ泣かせたか?



「乗れましたよ!!裏切り者!!」


「離さないとは言ってないです」


冷血漢鬼軍曹と喚く先生は怒った表情はしているが、なんとなく満足そうだ。


「でも……僕、いま乗れたんですね」


「そうだよ。あと少しだな」


この調子なら1時間も経たないうちにある程度乗れるようにはなるだろ。

じゃあ俺は本来の仕事に戻るか……



。。。



後日、いつも通りの午後。助手を勤める島崎と英さんの手伝いとして潜書から戻ってくる文豪達を待っていたらエントランスの扉が勢い良く開いた。


「用務員帰ったぞ!!」


「用務員さんただいまー!!」


志賀先生と武者小路先生の声か。確か今日はサイクリングに行くって……


「だー!!なんだその泥!!」


「二人でハンドルから手を離したら田んぼに落ちてさ……ちゃんと前見てたんだけどなぁ……」


「すみません……」


「そこまま入ってくるな!!最低限まで脱いで……!!」


「名無し、潜書から帰ってきた人が来そうだよ」


「島崎、潜書の人には先に風呂入ってくるよう伝えて来い!先生二人共そこから動くなよ!!」


新聞で風呂までの道を作らないと廊下全部掃除する事になる!!くそっこんな仕事増やされるなら無理矢理にでも補助輪つけてやれば良かった!!