▼フコウ㍗きごう△/ 番外

かめわらじ
@tatamiwaraji

番外一方幼少編/1、「カワイイ林檎を手にした小さな白雪姫は。」

 俺はイヤだった。

 オマエが居なくなるなんて。

 俺はオマエしか、居なかった。


 なのに、オマエはこっちに来たのに、それでも、


 ───“異質”


 だった。

 俺の目から見ても。


 “異質”なオマエは、学園都市でも酷い目に遭っていくのを俺は間近で見てきた。

 それでもまだ小さな事柄だから良かった。だけど、恐れていたことが起きた。

 アイツが居合わせた銀行になんと強盗立て籠もり事件に巻き込まれ―――死にかけたのだ。

 でも、死にかけたのはアイツの『行動』のせいだ。

 強盗が母娘おやこ連れを人質に取ろうとした為、その場に飛び込み───強盗と取っ組み合いの末、強盗の能力を腹部に受けた。

 元々、能力に似合わず気が小さかった強盗は彼女が流す多大な出血を前に気が動転し、奇声を上げながら自ら銀行から飛び出した。

 だが、既に警備員アンチスキルが包囲陣を敷いていたので、強盗は即逮捕。


 立て籠りにいた者は皆、無事であったと報道された。

 人質にとられそうになった母娘おやこは涙を流しながら、インタビューに答えていた。


「怖かったですっ! でも、娘はまだ小さいから怖い思いさせないで助かって良かった……っ!」


 奇跡的に誰も死者が出なかったとアナウンサーは語る。


 ただ一人の、重傷者を除いて。

 重傷を受けた彼女のことは余りつくことなく、ニュースではその母娘おやこの映像がよく流れた。


 オマエはそのニュースを見てヘラヘラ笑う。


『あの母娘、助かって良かったね』


 そんな理解できないアホな事を言ってヘラヘラ笑うオマエに、俺は心臓が冷えた。


 彼女の『行動』が、最早『狂気』に思えたのは、この瞬間だ。


 誰も彼女をたしなめなかった。

 そんな事をしたら危ないんだぞ、と。


 誰もたしなめる事なく、誰もが勇気ある行動だと言っていたし、母娘は感謝を口にするばかり。


 俺はその時、確信した。


(コイツ……いつか、俺の前から───消えてしまう)


 だって、そうだろ。

 死にかけたのにヘラヘラ笑って、『助かって良かったね』?


 そのせいで、死んでいたかもしれないのに。

 アイツは頭のネジは何本も取れている。確実に。


 けど、───その能天気さに、甘えに、優しさに、皆は許される。

 許されるから───喪いたくないってホントに心の底から想ったんだ。


□×■×□


 そんな想いを胸内に秘めながら、日々を過ぎた頃。


 ある出来事が───起きた。


 俺の能力は、ちょっとスキルが上くらいだと思った。

 なのだが、俺達みたいな子どもや『置き去りチャイルドエラー』の子がいる学校から回収、保護活動をすることで有名であるらしい女研究者が、俺の能力を見て他の子と一線画して目を掛けられるようになった。


『きっと、凄い能力に化けるわね』って。


 外見以外別に大して変わらない能力なのに、彼女は誉めて───俺によく会いに来た上に、一緒に食事を取る事が多くなり、『例の件』でも相談に乗って手も貸してくれたりもした。

 誉められるのも、こうして目を掛けられるのも単純に嬉しかった。

 でも、他の子より俺が上くらいだったから、回収された同年代の奴からしてみれば面白くはなかったみたいで、敵対されていた。

置き去りチャイルドエラー』のソイツらにとって、現れた彼女は憧れみたいなモンなんだろう。だから尚更、腹に据えかねかったんだ。

 でも、それまでは普通だし───他と何ら変わりなかった。

 俺が知っている『上条当麻』という同年代で無能力レベル0の方が遥かに『異質』なんだから。


 でも、───『妬み』からやっぱり、逃れられなかった。


 また会いに来てくれた彼女に、『今度、私と一緒に住む?』なんて突拍子もない提案をされた。

 なんせ、俺だけ引き取り手や推薦枠が見つからないのだそうだ。

 期待していた訳じゃないが、この案に驚かない訳がなかった。


『無理強いする気もないから、考えておいてね』と彼女はそれだけを言って去ってしまった。


 俺は当麻と変わらずに逢える生活なら別にいいし、あの女研究者だけは俺の外見なんて気にせず接してくれたから一緒に暮らしたいって思っていたのだが、どうやらそれを聞いていたヤツがいてそういう訳にはいかなくなってしまった。


 その突っ掛かってきたヤツが集団で引き連れて、俺に手を上げ───骨を折ったのだから。

 俺に触れただけで、バッタバッタと。


□×■×□


 顛末てんまつから言うと、俺は『化け物』だった。

 『化け物』の俺はこんな小さな小さな都市に閉じ籠められているのは、当然の摂理なのかもしれない。


 俺を襲おうとした同年代は骨を折って転がっていた。

 皆、痛みと共に恐怖に歪んだ顔を浮かべた。

 何が起きたかわかってないながらも、恐怖だけは本能で感じたようだ。

 ───俺は、『怪物の本性』を晒してしまったようであるらしい。


 後はもう、雪だるまみたいに事は大きくなった。

 止めようとした大人も骨を折り、また大人達が輪になって俺を取り囲んだが、全滅。

 しまいには、銀行強盗でも相手にするかのように警備員アンチスキルやら風紀委員ジャッジメントが急行し様々な能力や次世代兵器で攻撃された。

 けど、全て全滅。

 『怪物の本性』を晒すと、周りの人間達は今までの自分と様変わりして俺を取り囲み、拳を振り上げてきた。

 俺はその変貌が恐くて怖くて恐くて、怖くて、怖くて、──腕をガムシャラに振り上げ続けた。

 走って逃げ惑った。


 その度に、攻撃される。

 だから、振り上げられたら、振り上げ返す。


 自分を護るために。

 捕まって、当麻と二度と会えなくなるのは嫌だ。

 あの優しくしてくれる、俺をしっかり見てくれる女研究者と会えなくなる、ましてや俺に対して心を許した人と暮らせなくなるなんて、それこそイヤだ。


 だから、逃げ惑って、振り上げた。

 ───後戻り出来ない。

 後戻りが利かなくなっていく、と分かっていながら。


 雪だるま式に大きくなった事態は最終的に、空には窓の無い無人攻撃ヘリが何機も飛び交い、機械の鎧パワードスーツを着込んだロボットみたいな警備員アンチスキルの増援が負傷した仲間を庇うように立ち塞がる。まるでテレビで見た怪獣映画のよう。

 皆に恐れられる、醜い、醜い怪物。


 その中で俺は唐突に気付いた。

 幼い、俺でも気付いてしまった。


 自分の中に渦巻き、ずっと胸に秘めていた感情───『好意』に。

 だから、当麻が自分だけの傍に居てくれればいいだなんて、思ったんだ。


 俺は、当麻が好き。

 好き。

 好きなんだ。

 好きで、仕方なかったんだ。


 俺だけの、トモダチで居て欲しいから───目の前から居なくなって欲しくないって。


 俺は、分かってしまった。

 好意は時にして、『嫉妬』という形で攻撃性を持つ。

 そして、実際眼下のような、光景が広がっている。

 このまま騒ぎが広がっていけば、学園都市が、ひいては世界そのものが敵に回り、本当に全てを滅ぼしてしまうかもしれない事に。


 その時、俺は当麻を傷つける。

 指先で触れただけで怪我するなら、ちょっと心の中で『イラッ』と思っただけで人が死にかねない。

 更に当麻に好意を持った俺は、きっと当麻が別の人間を好きになったと知ったなら、アイツを───殺す。


 絶対に、殺す。

 この、能力で。


 その証拠に───最初に突っ掛かってきて集団で率いたアイツも、女研究者が彼の能力がいつか学園都市に役に立つからと誰よりもいい学校の推薦を持ってきた俺なんかより目に掛けたヤツだった。


 俺は───きっと、アイツに向けられたあの時の笑顔が嫌だった。

 だから、集団で俺を潰しにかかれるくらい人望があるアイツに───女研究者の顔が浮かんで次にはあんな惨状が広がった。


 『好意』は『嫉妬』に、代わるんだ。

 変わるだけで、こんな顛末てんまつを引き起こしたんだ。


 俺は、


 立派な、


「……化け物…だったんだ……」


 なんて悲しい、愚かな『化け物』なんだろう。

 好きな人に触れることすら叶わず、好意を向けてくれた人にちょっとした嫉妬で簡単に命を奪う。


 こんな『化け物』になるなら、能力なんて最初からいらなかった。

 まだ無能力レベル0であったなら、俺は、当麻と同じように居られたのに。

 今まで接してくれた人が豹変し、『化け物』のように扱われることなんてなかったのに。

 もう、昔みたいに、世界は俺を見てくれない。

 俺は、世界から、あの人から、『化け物』の目でこれからも見られていくのだ。


 自分の気持ちに気付いてしまった大好きな人やあの人の好意まで。


 世界が、灰色の景色になって、


 全てが、


 どうでも良くなった。


 『滅び』を回避するためには、『醜い化け物』はあらゆる人間に対し『感情』を向けてはいけない。

 例え、それが『好意』だって……。


 俺は、『感情』を封じ込めることで、他人に興味を無くした。

 いや、違う。

 『感情』が『喪失』したんだ。


 だから、逃げ惑うのを止め、腕を振り上げるのも止め、その場にへたりこんで、降参した。


 ほら、『化け物』は動くのを止めた。

 あとは正義のオマエらの、好きにして平和すればいいさ。

 皆で怪物を捕獲したと喜んでいればいい。


 灰色の世界に、俺は希望なんてかんなぐり捨てた。

 俺はどうせ『化け物』なんだから。


 そして俺は、檻へ放り込まれることになった。


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