幻惑炎灯復活劇/日常・黒曜

かめわらじ
@tatamiwaraji

2、「それは彼の、明かせない代償の、炎。」

 綱吉が一人で黒曜ランドに乗り込むためにてくてくと公道を歩いている最中、藍沢がいる並盛中では―――今日はやたらと席に着いている人が少なかった。それもそうだ。

 ここ連日、並盛中の生徒や風紀委員が襲われ歯を抜かれる事件が発生しているからだ。

 今朝も京子の兄了平もやられたはずだ。実際に行ってないのでどの程度かわからないが記憶のままなら、五本抜かれているはず。藍沢は心配する京子が気になるが、もっと気になることが他にあった。

 ここに来ている山本と獄寺。

 この二人が狙われているのも、知っている。それに、獄寺を大怪我させてしまうことも。

 一応、周りでそれらしきメンバーを固めて貰って二人の様子を見てもらっているが、手助けしてくれるかはわからない。どうにも、あの組織は傍観することがお好きだ。いや、藍沢自身が特殊な立場にあるからか試しているのかもしれない。だとしても、普段からこき使われているのは果たして特殊な立場からではない気がするのだが…。

 ひとまず話を戻して藍沢が危ないと思いつつも並盛中に来ているのは、彼ら二人を陰ながら守るのが目的だから。今は沢田綱吉の姿はないが、一応彼女は風紀委員とあって休ませたと根津先生から聞いた。それで一安心したが、どうも胸騒ぎがして仕方ない。

 あらすじがわかっていたとしても彼女に成ってからこそ、これから起こるだろう展開が読めないのだ。

 そのことに不安を覚え、周りをそっと見渡す。山本は授業がつまらないからかいつものように寝ているし、獄寺はやる気ない全開でスマフォを堂々といじくっている。二人がいるのはいい。しかし、―――お登代も、あの絢香も来ていない。何故か彼らの姿が見えなかった。

 下駄箱には彼らの外履きがあることを確認したから学校に来ていることは確実。


(どうして……教室に来てないんだ? あんな不真面目に見える絢香も授業には絶対出てるし、お登代に至っては風紀委員や部活などの手伝いや先生の頼まれごとがない限りサボることはないし……)


 腑に落ちないと首を傾げる藍沢。

 静かな教室にやる気のない教師の説明をダラダタ聞きながら、なんとなく出入り付近のドアを見ると前触れもなく、ガラガラガラっ!!! と乱暴に開けられた!

 突然のことに、教室にいた教師と生徒たちはびっくりっ。

 藍沢もびっくりしたが、それ以上に乱暴に扉を開けたのが、あのお登代だったからだ。

 お登代が慌てたように中を見渡して、藍沢を見つける。

 その顔に表情がないことに、ぞくっとしたものが背筋を冷たくした。それにあんな目、見たことない。

 彼は教室の困惑し騒然とした雰囲気を無視して藍沢の席までズカズカと来ると、「藍沢、来い」と表情なく言い腕を掴まれて引きずられるように教室を出された。

 教師が背後で何か言ってたが、お登代にしては珍しく完璧無視だった。

 随分と教室から離れた階段の踊り場で藍沢の腕を離した。

 お登代は藍沢の正体を知っている。だからこそ、今まで何も言わずに普通に接してくれていたのだが、今日は違うようだ。

 引き摺られるように歩かされても、藍沢はその間文句も言わなかった。だって、今までの優しく温和な彼とはかけ離れていて怖くて、怯えていたからだ。

 お登代は随分と淡々とした低い声で、


「ツー、お前に何か言ってなかったか?」

「え?」


 いつもの様子でないお登代に怯えた藍沢だったが、次の言葉で吹き飛んだ。


「ツー…、あいつな、一人で黒曜に行ったんだ」

「なっ!!」


 なんという無鉄砲玉。どうして一人でなんか…。

 流石の藍沢も予想できなかった。こっちの彼女は随分と大人しかったのに。


「お前でも、気づかなかったのか?」

「いや昨日は普通だったし。沢田ちゃんは、特に…変わったことはなかったと思うけど…」

「お前、ヘマしたか?」

「ヘマって…」

「お前の所属してる、組織の存在。お前の正体だよ。お前って少女漫画のようにドジだから、ヒーロー的なツーにミラクルドジが発生して正体知られちゃたんだろ?」

「そんなのしてないよ! というか、それひどくない?! どういう風にオレを見てんの?!」

「マジカルなドジっ子」

「なんだよマジカルとミラクルって! なんかすっげぇ恥ずかしいあだ名つけんのやめてくんない?!」

「ツーがいつも言ってるぜ。『藍沢は『マジカルドジっ子』って呼ばれてもおかしくないからそう呼んだほうがいいよ』って」

「発祥は沢田ちゃんだった!! ひどいよ沢田ちゃんっ!」


 やはりボケボケと天然ドジっ子の組み合わせだからか二人の話がズレてグダグダになった。

 真面目には程遠くなる二人だった。


「おい、登代っ!!」


 その間に山本がこちらへ駆け寄ってきた。親しい間柄だが、あんなお登代を見て困惑したはずだがただ事ではない雰囲気に教室を抜け出してきたらしい。

 獄寺は山本の後についていくことのは嫌だったようだが、お登代と藍沢の尋常じゃない様子が気にならないわけがなかったようで離れながらもこちらを心配そうに見ていた。


※※※※


 沢田家に着くなり、リボーンから彼女のことを聞いたビアンキが蒼白なって、絶対についていくと藍沢に食って掛かった。

 というか、皆がいるのにオレがついて行っても大丈夫なのか? だって、オレあっち側の人間なんだけど。と思ったが、既にリボーンとお登代にメンバーに組み込まれており拒否権はなかった。

 一番頼りになるお登代は奈々とちび二人の護衛として残ることに。絶対的に強いはずの絢香はマイペースに図書館へ行って関心がなさそうだった。こんな時に…と思うが、お登代曰くあれでも絢香は内心気が気じゃねーんだぜ。とため息をつきながらこっそり教えてくれた。

 図書館に行ったのは自分の気持ちを落ち着かせるためなのかもしれない。

 絢香とは小学生以来の長い付き合いだが、どうにも行動も思考も謎が多い。

『それが絢香だから』とお登代も彼女も言うが、それが本人だとしたらもう存在自体玉ねぎだというしかない。玉ねぎは剥いても剥いても中身が見えてこないから。

 とにかくなんかおかしい流れで藍沢はフゥ太のランキングを手にして、獄寺、山本、ビアンキ、リボーン達は綱吉とフゥ太を救うべく黒曜へと急いだ。


×●×●×


 第三の道。『畜生道の能力』で人を死に至らしめる生物を召喚され、毒蛇に囲まれる。

 全てが襲いかかられそうになった時、骸にトンファーが飛び込みそれを三又槍で弾き返した。

 へ? と思う間もなく、毒蛇も頭上でまとめて吹き飛んでいった。


「雲雀……」


 なんと駆けつけたのは、最強孤高の風紀委員長雲雀。

 雲雀はフラフラしながらも、弾かれた片方のトンファーを拾い上げ構えた。


「覚悟はいいかい?」

「これは怖い、怖い。だが、今は僕とボンゴレの邪魔をしないでください。第一、君は立っているのもやっとのはずだ。骨を何本か折りましたからねぇ」


 雲雀、そんな状態なのによく立ってる……。私だったら情けなくそこで潰れているのに。

 雲雀は転がる私を見て「君、後で風紀委員の罰則受けてもらうからね」と勝手な行動を したことを咎められ嫌な申しつけをされてからすぐに骸に向き、


「遺言はそれだけ?」


 立っているのもやっとなのに、そんな事を言ってのけた。

 一度負けたことがプライドをいたく傷つけられたのが腹立たしかった雲雀は、もはやプライドだけでここまで来るのをかりたたせたらしい。末恐ろしい……。

 骸は一瞬煩わしそうな顔を歪めたが、


「クフフフ、面白いことをいう。───仕方ない。君から片付けましょう」


 ニヤリとあの意地の悪い笑みを浮かべて、右目に炎を灯させた。


 第四の道、『修羅道』。

 修羅道で身につけた格闘能力の闘気オーラを右目に灯して。


×●×●×


 雲雀が骸をぶっ飛ばした。

 叩きつく骸、消える桜の幻覚。カラカラと虚しく転がる三又槍の刃先。

 途中から無意識で戦っていた雲雀も倒れ、───終わった。

 しかし、どうも判然しないがとりあえず倒れている雲雀とフゥに太へと振り返り──


「病院に連れて行かないと」

「それは出来ませんよ」


 の声とともに、ガチャと拳銃を構える音が。

 そっちに慌てて向くと、骸が私へ銃口を向けていた。


「これからが、『六道』の真骨頂ですから」

「?!」


つい、身構える私に、


「Arrivederci」


 骸は私に向かって微笑むと、拳銃を頭に突きつけてズガンッと撃ち抜いた。


 骸は、自分から、頭を撃ち抜いた。

 そして、力なくドサッと倒れ込んで。

 その光景にうぷっと何かがせり上がった。

 私は口元を押さえながら下を向き、片腕で二の腕を押さえる。

 私は体温が下がっていくのをしっかり感じながら、(六道骸がこんな形で終わるわけがない……。)と漠然と思った。

 その証拠に、ゾクリと冷たいものが首筋から流れ落ち、


「「さぁ、本番ですよボンゴレ」」


 雲雀とフゥ太が、意識を取り戻した。


×●×●×


 六道骸が自ら頭を撃った弾は、特殊弾の中でも禁弾である憑依弾だった。

 憑依弾はその名の通り、他人の肉体にとり憑いて自在に操る。

 過去にエストラーネファミリーが開発したと言われる特殊弾であり、使いこなすには強い精神力だけでなく弾との相性の良さが必要とされていた。

 だが、使用法があまりにもムゴいとマフィア界で禁弾とされ、弾も製法も葬られた、───らしいのを、骸が持ち、ランチアを前後不覚に陥れたのもその弾があってのことだった。

 その弾の力を持って、剣で傷つけられると憑依を許すことになる。

 先程も言っていたが骸は私を憑依し手中に納めてから、マフィアに復讐をするのだという。

 その憑依に、雲雀とフゥ太を操った。

 憑依した相手の技まで使いこなし、前世に刻み込まれた技も多様し───私は絶対絶命だった。

 だけど、もっと絶対絶命は───傷口から大量に血を流しているのに憑依された骸に酷使されている雲雀とフゥ太。

 私は見るに耐えかね────


「───『し、かい』しろ」


 そして───無意識に、ある言葉を口にした。


×●×●×


 ガッチャン……と何かが外れていく音が響いた。

 そして、ぼうっと妙に暖かいものが、胸の内に灯った。


 私が手にしたのは刀身がない、柄と鞘だけの日本刀。


 そう、刀身などないはずの、柄に───

 見事なひと振りの抜き身の刃が、存在していた。


「これは………僕の三叉と同じ───やはり、貴方は僕と同じですね」


 骸はそれを見て、笑う。

 同じような、仲間を見つけたような嬉し笑いだ。


 私は───感情のさざ波が全くなくなっていた。

 あるのは、渚のように揺らぐ穏やかな波のよう。


 すると、───私の見えている世界が少し変わった。

 少しノイズが走った女性の声が、私の頭の中に響く。

 あぁ、この感じ────凄く、懐かしい……。


『ジジジ、ジジジ。─── レイアツの反応により一部、強制復旧。しかし、破損が激しく稼働率、二四%。他、復旧作業のため、全体稼働率十七%。か、確認、確認。つ、ツネナリ、ウラハラのレイアツを確認。ツネナリウラハラのレイアツと接続、──失敗。肉体照合───失敗。再度、同一視照合させるも……一〇%未満。照合率未満、失敗。しかし、ツネナリウラハラのレイアツと同一のたたたたため、だだだだ代理と一時的に認定し、さささ沢田、ツナ、綱吉を登録し承認かかかか完了。沢田綱吉のレイアツと接続。───かかかかか、完了。……むむむむ、ムムム、骸ろ、ロロロロ六、道。『六道』ふふふ、ふく、ふく複……写、こ、ここここ、コンセプト接続………、アップデート開始………第二餓鬼道第四修羅道第五人間道第六天界道情報アップデート完了。その内に応用ができそうな第一第三を絞り───使用可能処理成功。使用結界処理、三、二、一、……成功。稼働率低下気味のため使用者は直ぐに展開して下さい』


 切っ先を骸に向けるとカチャと鍔が、鳴る。

 骸は切っ先を向けられても、あの笑顔を見せ、


「ふふふっ………よくやく、本性、見せてくれた」


 ただ私は静かに、静かに───六道骸に憑依されたフゥ太を見つめて───そして、


「バクドウのイチ………サイ……」


 呟く。


×●×●×


 結局────本物の術師には敵わなかった。

 ホントの、地獄を視てきた術師に。

 だから、


「……フ…。ハァ………ガバッ」


 ドバッと吐血を、床にぶちまけた。

 慣れない事を急激にしたことにより、騙し騙しやっていた身体がついにいかれたのだ。

 私はそのまま倒れ込み、ガハっガハっとべちゃべちゃ血を吐き続ける。


「おや、………そこまでですか」

クフフフと笑いながら、そんな私に憑依した骸が悠然と近づき片膝をつく。


「その身体も大分、消耗したみたいですね……。なら、僕が後を引き継ぐので、楽に───なるといい」


 そして、妙に親しみを込めた口調で言うと、ザッと三又槍を振りかざされた。

 もう避けきれる気力は、私にはなかった。

 なのに───


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