▼フコウ㍗きごう△/5~8

かめわらじ
@tatamiwaraji

終幕「とある少年の、日常の延長線上は。」

 とある少年は一応仮だが退院の許可がカエル医師の判断で下り病院から出れることになった。

 その支度をして、桔梗にこれから住む場所を聞いた途端に既に着いていたタクシーに押し込められ、そのままとある高校に到着。

 スポーツバッグを肩に担ぎ、白髪を隠すために帽子(やたら伸びて切ってない髪を縛って入れている)を深く被り、今は瞳にカラーコンタクトを入れて赤を誤魔化し更に顔誤魔化しで分厚い眼鏡の外行きをフル装備した彼――― 一方通行アクセラレータは校門近くに降ろされて呆然とその高校を見ていた。

 タクシーはとっくに走り去っていない。


「…ここ、アイツの高校じゃねェかよ」


 なんでまたこんなチョイスなんだ…? と訝しがると、校舎の昇降口から二人の人物が出てくる。

 その人物を見て、一方通行アクセラレータは桔梗の思惑を察して、舌打ちした。

 一人は打ち止めラストオーダーなどのガキの世話を主にした、長い髪を後ろに束ねた緑のジャージを着た女は黄泉川よみかわ愛穂あいほ

 もう一人は彼がよく知る幼馴染みの担当教師であり、だが…大人の割に何故か背が低すぎるしどう見ても小学生くらいの、本当になんでこんなのが外から来て教師になれたのか不明なほど、「……存在が説明不能の不思議生物教師」

「先生は不思議生物なんかじゃありませんよ! 全く顔を合わせた途端にそれですか!」

「いや、アンタの存在自体本気で物理の法則に反してる。ホントはここで製造されたのに記憶を改竄されてるサンプル体って言うならまだ納得いくンだがな。いや、実はそうなンだろう…」

「だから違うって言ってるじゃないですか! って『記憶を改竄されて自覚がないのか…』という深刻に哀れな目を向けないでください! 全然、全然違いますからー!!!」


 オロオロしながらブンブン両手を振るが、一方通行アクセラレータは無視して、腹を抱えて笑うジャージ女に向ける。


「で、こりゃなンだこりゃなンなンだ」

「言葉が重複してるじゃんよ」

「答えろ」

「何って決まってんじゃん。あんたはここに転入手続きしに来たんでしょ?」

「…、………は?」

「あれ、桔梗の奴から聞いてないの?」


 黄泉川は、そういえば、あいつサプライズも好きだったじゃんねーと溢していたが一方通行アクセラレータ本人は聞いてちゃいない。

 何にせよ、一方通行アクセラレータはここに、転入することになったのだ。

 ごくごく普通の平均的な、上条当麻が通う高校に。


※※※※


 学園都市・第七学区のとあるスタンダードを一貫する高校のとあるクラス。

 皆大覇星祭の準備で死ぬほど盛り上がり、暑苦しいくらいクソ忙しがしく回る中、バタバタと上条のクラスの男子生徒が猛烈な勢いで廊下を走り、ギュガガガガガッ!! と靴底の裏で擦れるように止めて、ガラァァァアンッと戸を乱暴に開け、


「おい、聞いたかっ! また転入生だってよッ!!」


 と驚愕な報告を!

 朝から熱心を超えた熱苦しいくらい攻略シミュレーション論議を繰り出していたクラスメート達は中断した。


「えっ、また?! 姫神ちゃん来たばかりなのに!?!」

「というより珍しくない? こんな大覇星祭の準備期間にさ」


 飛び込んできた朗報にざわざわする教室に担任が来訪。


「はいはーいホームルームはとっと始まったですよ! ざわざわしてないで皆さん席につくですぅー」


 小萌先生の一言に押され皆しぶしぶ席に着く。

 揃ったところで、


「はーい、出席を取る前にクラスのみんなにビッグニュースですー……と言わなくても伝わってるみたいですね」


 クラスの面々は小萌先生をガン見。


「皆さんが知りたがっている転入生ですが、今回は男の子ですー。残念野郎どもー、おめでとう子猫ちゃん達ー」


 女子達はいろめき立ち、男子はどんなやつか? と気になる模様で、嫌な顔した奴は一人もいない。

 そんな中、上条はぬべーと窓の外へ視線がいっていた。

 いや、眠たくて眠たくてたまらなかったのだ。

 どうもここのところ、ふわふわするのだ。春でもないのに。

 それは置いておくにしても、上条にはひどく眠くなる訳があった。

 なんせ、インデックスとご褒美のことで連続深夜まであみだクジバトルをしているからだ。ご褒美は豪華なご馳走にするんだというからである。確かに合格したらご褒美をあげると言い出したのは上条本人だが、その度に食費がかかるのは全くごめん被る。それを阻止しようと急遽きゅうきょあみだクジで対決を言い渡したのだ。今のところ、上条の惨敗続きである。全く若いと意味ないことに力を発揮してしまう。

 だから、上条は今とても思考を働かせられない。転入生についても、余り反応がなかった。


「さぁ、転入生くん、どーぞー!!」


 小萌先生の合図に教室の入り口の引き戸がガラガラと音を立てて開かれ、こちらへ足を踏み入れる。

 周りのクラスメート達のヒソヒソ声が──止んだ。

 上条が目を向けると、そこには学園都市にいる七人の超能力者レベル5内、最も最強に君臨する超能力者レベル5第一位。

 彼の姿を視界に収めた途端、


「……」


 上条当麻はふと止まる。


 あの一方通行アクセラレータが、上条の高校なんかに。

 だけど、いつものあの個性的なブランドと特異な外見ではなく上条が通う男子高校生の制服を身につけ、白髪を黒髪に染めて伸びた髪を後ろで結んで、赤の瞳を隠すようにカラーコンタクトを入れ、あまつさえ顔で判別されないように念を入れて分厚い眼鏡をかける完全外行きフル装備していた。

 それでも小萌先生は転入生の正体を知らないのか普通に普通に紹介をする。

川田かわだ雪白ゆきしろ』と。

 第一位はかつて保護者に与えられた名を名乗り、転入生として黒板の前に立っていた。


 だけど、上条は息をついて一方通行アクセラレータと密かに目が合うと柔らかく笑った。

 確かに転入生として転入してきたのは驚いたけど―――だけど、一方通行アクセラレータが何よりこうして普通に生活できるようになったことが大事なのだから。

 本当に一息つく間もない怒涛のように過ぎる上条の日常だけど、それもまた、楽しい日常だ。

【残暑日和能力残骸編完】2018/08/13

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