人魚の血

最悪な末路

部屋はシンプルで、ベッドと机、椅子が置かれているだけだった。

部屋に俺を入れると、シュウはクローゼットを開け、服とズボンをベッドの上に放り投げる。

「ほら、あんたもこれ着なよ。しばらくは俺の服貸すけど、後であんたの服とかはレイジの使い魔が持ってくる。それまで俺のもので我慢しな」

「別にいい…」

幸い、俺は扉に近い。ドアノブにゆっくりと手をかけ、ゆっくりと捻る。

__ヒュッ、ドンッ

一瞬何が起こったのかわからなかった。横に何か通り過ぎたかと思ったら、ドアに突き刺さり、俺の耳の横で静止した。横目で確認するとナイフが刺さっていることがわかる。ナイフが飛んできたということがわかった。……どこから…。

前を見るとシュウがこちらを睨んでいた。

「今は外してやったけど…次は目に当てる」

背筋が凍り、冷や汗が全身に流れる。と同時に足に力が入らず、その場に座り込んでしまう。手が震える。__死ぬかと思った。

震える両手を見、自分が生きていることを確かめる。

「あんたが着替えない理由、教えてやろうか。あんたの制服のどこかに小瓶があるから。着替えたら『肌身離さず』じゃなくなるもんな?」

「…っ」

「まあいいんだけど。取り出す方法なんていくらでもある」

そう言いながら、俺に近づき、俺の前でしゃがみこむ。

「別に着替えなくていい。俺にはどうでもいいし。そのままで抵抗するっていうんなら…力づくで取り出してやるよっ__」

俺の腕を掴んだかと思うと、ベッドに放られ、腕で首を絞められる。

必死に抵抗し、暴れるが、ビクともしない。

「あんた、あの女と同じことするんだな。めんどくさ。……でも、今小瓶を肌身離さず持っていたとして……レイジの言った通りその小瓶は俺たちを殺せるほどの殺傷能力があるんだとしたら……今俺は死んでるはずだよな……」

小声で自問しているシュウの腕の力が緩くなったところを見計らい、頭突きを食らわす。

小さく呻き声を上げ、頭を抑えるシュウから逃れるようにベッドから這い出ようとするが、腕を掴まれ、押し倒される。

「興が削がれた。別にあんた、男だし、酷いことしても問題ないよな?心配するような奴もいないだろうし?人魚の血なんて飲む機会もないし、不味いかもしれないけどいいよな。」

そう言うと、首筋に牙を当て、噛まれる。

「いっ…!?」

激痛が走ったかと思うと、すぐに血を吸われる感覚。抵抗しようとするが、いつの間にか腕はシュウの手で抑えられていた。

唇が離れ、口から数量の血を垂らしながら顔をしかめるシュウと目が合った。

「何これ、味が全然しないんだけど。」

そう言うと、今度は反対の首筋から血を吸われる。

「へえ、なるほどな。あんたの小瓶が邪魔してるってわけ?ほんとめんどくさい…。その小瓶…失くなるとどうなるんだろうな?」

シュウの手が俺の服を弄り始める。

「ちょ、やめろ!!くすぐってえ!!」

すると、徐に小瓶を入れていた内ポケットにシュウの手が伸びる。

両腕は固定されて抵抗できない上に、両脚を動かしてもビクともしない。とっさに抵抗の目線を投げかけるが、シュウはそんな俺の様子に口角を上げ

「あんたわかりやす。」

そう言って、俺の内ポケットから小瓶を取り出し、放り投げる。

すると、俺に向き直ると驚きの表情になる。

「くくっ、なるほどな。この匂い…今まで小瓶のせいで匂わなかったわけ?確かに学校行った時に匂いは感じてたけど…どうせあの女の匂いだと思ってたし…。へえ…そういうわけね。匂いを消せばヴァンパイアは襲わないしな……。味は…」

そう言い、また首筋に牙を突き立て、吸い始める。

「んんっ…!ちょっ!」

なぜだか熱が全身に駆け巡り、体が反応する。

「んっ…はぁっ……美味い……へえ、これ……あいつらに言うにはもったいないな。しかも…その様子…何?感じてるわけ?」

「お、俺だって意味わかんねえよ!!ちょ、小瓶っ!」

「早速、あんたのことわかったな。というか…こんな簡単なんてな。あんた…俺以外のやつに会うときは小瓶を持っておきなよ。今度からあんたが俺の餌だ。わかったな?」

「やだ。つか、小瓶どこっ!」

「今まで小瓶のなんたるかを知らなかったくせにこうなった時に小瓶の重要性を感じてるわけ?あんた、今までこの小瓶を持ってたことなかったんだろ。この匂い、何回も匂ったことあるし。まさかあんただとは思わなかったけど。」

「……怖かったんだよ。……苦しんでた母さんのことを思い出しそうで…」

「人魚も死を悼むのか…。……まあいいや…まだ人魚のこと、それと小瓶に入ってるこの液体のこと…調べる必要あるしな。はい、小瓶。持っておきなよ。本当にそれ持ってないと理性が飛ぶ。あんたが男だってこと忘れそうなほどだからな。」

言いながら、ベッドの下に転がっていた小瓶を拾い、俺へ渡す。

「…え…。それどう言う意味…」

受け取りながら、少し気味悪く感じ、問うが…

「ふあぁ……動いた上に喋り疲れた……寝る。」

そのまますぐに寝てしまい、聞きそびれた。


……ここから……この屋敷から逃げ出す方法も考えないと…俺の身が危ないかもしれない