コウフク±㌻/私は賢者のように賢くなれない。

かめわらじ
@tatamiwaraji

6、また始まる夏。

 初夏の季節。

 暦がついに衣装箪笥のコントロールを上手く制御する様を取得した。

 奪い取るまではいかずに、人の夢で経由するという形でなんとか落ち着いた。そして、あいつの機嫌もようやく鎮火した。

 困ったものだったよ、苛々する度私に当たるから。

 その度、喧嘩に発展して生傷の耐えなかったこと。おやじの塗り薬がなかったら傷だらけ痣だらけだっただろう。

 それで話を戻し、夢を経由するのはいいが、方法はかなり限られる。私達の親しい関係者の夢でしか行けないのだと言う。

 本人たちが寝ている時に限ると言うがその辺は大丈夫だ。

 衣装箪笥自体、時空ところか次元すらねじ曲げて毎回何処かに投げ出されているたび身を持って実証済みだ。

 なので、実験も兼ねて記念すべき最初の経由先は、ハリーっ!

 ちょうどほぐわーつに学ぶために魔法界にいるから、なんとか魔法界には行けることだろう。

 衣装箪笥にハリーの写真を持って(持つことが非常に不愉快だが、仕方ない)、とりあえず眠っているハリーの夢を経由して、ほぐわーつへと転がり出た。

 なんか薄暗く埃っぽい部屋の埃しかない箪笥に出た時は、あぁあの衣装箪笥の悪意か。とわかってしまった。

 埃にまみれた暦は、たかが箪笥風情がァァァアア!!! と悪役みたいなセリフを吐きながら怒りに任せて箪笥の扉を蹴り飛ばした。

 両扉が、思いっきり部屋の壁に叩きつくまでに吹き飛んだよ。

 どんだけ馬鹿力があんだ?

 見た目に反して怖いヤツだ。


 キレ気味寸前の彼を宥めながら、ほぐわーつの隠し部屋から出て、ほぐわーつを気が済むまであっちこっち散策した。

 動く階段に、各教室内を見て回ったり、ダンブルドアの校長室に入り込み、例の帽子を被ったり暦が一体どうなっているかと解体しようとしたり、暦が賢者の石の破片を拝借してみたり、妖精が忙しそうに食事の支度に追われる厨房に行って銀食器のナイフを拝借してみたり暦は摘まみ食いして迷惑がられたり、あの秘密の部屋がある女子といれに入ってみたり、噂の図書室に行ってみたりとなんとも充実感は半端なかった。

 暦はもっと早くに繋げられたら読み尽くしたのにと悔しがっていたけど………厨房の妖精たちに迷惑かかるから繋がんなくてよかったよ……。

 中庭から外に出て、湖を見に行って釣りをし、釣り針に引っかかったと水の種族の人に二人して怒られたり、大イカに芸を仕込んで餌をあげたり、禁じられた森の近くに罠にはまって鳴いていた羽を生やした黒い子馬を助け親元に返し、綺麗な顔立ちの女の子のけんたろうすにたまたま会って可愛らしいお花を頂きお礼に厨房から拝借したナイフを渡し、ぐるっと回って有名なハグリットの小屋を覗き、外にいたあの臆病なファッグの頭を撫でてからほぐわーつに戻る。

 重厚な石造りの廊下を見渡していた時暦がハリーは今ヴォルデモートの馬鹿馬鹿しい戦闘で喪失して疲れて医務室で眠っているからと言い出した。

 心配するたまではないはずといぶかしんだ目を向けたら、


「見舞いの品……がっつり持って行くチャンスだっ」


 と目を輝かせた。

 あぁ、こいつはそれしかないもんな……。

 いや、それが目的で行き先をハリーにしたに違いない。


 医務室で暦はがっつり拝借している間、椅子に座って一休みをしていたらハリーが起き思った以上に元気な事を確認してからおいとました。

 そろっと衣装箪笥に繋がる箪笥へ戻らないと道が切れて帰れなくなってしまう。

 初試運転だから、まだ道が安定してなくて危なっかしいのだ。

 大急ぎで医務室から出て廊下を走ろうとしたところ、


「お前たちっ、廊下を走るんじゃないっ! どこの寮の者だ! 休日でない限り制服が基本原則となっているだろうがっ」


 厳しい声が、かかった。

 私と暦は足を止め振り返る。

 なんと、医務室より少し前に立っているのは───鋭い目付きで私達を睨む黒髪の青年。

 服装も全体的に、黒一色に統一。

 その黒すぎる人物は、


「あ………、は? はぁぁああああああああ?!」


 そう、ハリーの夢で構成し妖精や妖怪、動物達の現実でなんとか上手い具合に混ざりあったうつつに、人間であるセブルス・スネイプが立っていたのだ。


 ここは言わば人間界にはない、妖精や妖怪、動物が感じる特殊な次元界層だ。

 人間には一切認識できない領域。

 認識できないなら勿論行き来だってできやしない。

 もし、人間がいたとしても、繋げた本人しか存在しない。

 そんなところに魔法使いとは言え人間である教授が居るのは可笑しい話。


 ハリーの夢なのに───他人である教授は迷い込んでしまったのだ。

 暦を見るとあちゃーとやっちゃったと額に手をやっていた。


 どうやら、スネイプ教授はマジで迷い込んでしまったらしい。

 これが、スネイプ教授と初めて対面になるとは自分でも思いもしなかった。


◆◆◆◆


 驚愕の声を上げた私だったが、スネイプ教授も私と暦を見て何故か驚き固まって怒鳴り付けはしなかった。一体どうしたっていうんだ。

 そして、暦は私と教授を交互に見て重たいため息をついていた。

 余計な面倒事が起こった的な、ため息。

 なんだよと目を向けたが、暦は何でもない。今のところは。と頭が痛そうにこめかみを押さえて首を振った。


 嫌な予想外過ぎる問題は起こったが、私達には早くしないと道が途切れてしまうという超重要なことが差し迫っている。

 あくしでんとは素早く撤去しなくてはならない。


 私達は強制的にスネイプ教授をこの夢から追い出す事にした。

 そう、はっきり言うなら腕っぷしで実力行使を強行し気絶させようとした。


 驚く教授に、まず私達は妖精だと無理すぎる嘘をつき、この世界の界層と普通の人間では入れない説明を聞かせた。

 その話に気を取られている間、気絶させようとしたが………その計画は変更しざるを得なかった。

 何故なら、スネイプ教授………意外に隙がない佇まいだったのだから。

 私が様子を探っていたのだが、冷や汗を掻くだけで無駄だった。

 なんということだっ………ただの根暗な研究好き先生さんではなかったのかよ!


 仕方なく教えたくなかった必要の部屋まで誘導し、衣装箪笥をスネイプ教授に紹介した。

 全く教えたくは、なかった。

 頭の良く研究好きの教授がこれを見たら、何かひんとを与えてしまいそうで。

 彼は不審そうに箪笥に恐る恐る顔を覗かせ無防備な背を見せた瞬間、


「今だァァアアアアアアアア!!!」

 どげしっ!


 つい叫びながらその背を思いっきり蹴り飛ばしたっ。

 グァァァア! という悲鳴を耳にしながら教授は底が果てしない衣装箪笥の中へと姿を消した。


 ふう。と、私は額に浮かんだ汗をぬぐう。

 ひとまず、教授救出編はくりあだ。

 教授を蹴ってしまったが、まぁ感謝して貰いたい。

 三人して帰れなくなるところだったんだから。


「………つぐ、そんな手荒にしなくても……」

「いやいや時間無いからつい、だよつい」


 さぁ、帰るかぁとつい暦の発言を聞き流しそうになった。

 暦が珍しく他人の身を案じるような発言を。

 はっとした顔で暦をまじまじと見てしまう。


 あの他人なんてどうなったていい的な冷酷な一面を持つ暦が一体どうしたんだ。悪いもんでも拾い食いして、頭がまともな人になってしまったのか?!!

 遂に、真人間になったというのか!!


「つぐ……。今失礼なこと、思っただろ」

「はははっ、まさかぁ。思う訳ないよー」


 目を据わらせながら静かに言う暦に、私はパタパタと手を振って誤魔化した。


 とにかく、蹴り出してしまったスネイプ教授とは次に顔を合わせる機会が今後一生にない事を祈るばかりである。

 まぁ、原作のまぐるであるダドリーが魔法族の教授と会ったなどいうことは一切見たことも無いから大丈夫だとは思う。

 私はそんな楽観的な思考で意気揚々とほぐわーつを後にしたのだった。


◆◆◆◆


 その頃、ダドリーに背中を思いっきり蹴り飛ばされ箪笥の中へとまっ逆さまに落ちたセブルスは───


「ダドリィィィイイイイイっっ!!」


 目を覚まして開口一番に彼の名を怒りと共に絶叫していた。

 まさか、背を向けた途端に蹴りを叩き込まれるとは思わなかった。

 なんという子だ。あーいうことを初対面の人間にもするというのか!

 なんという、乱暴な子なんだ! ハルユキの息子は手がつけられないほどの反抗期でいつもぶん殴り、養子にした子にも先輩ふかして虐めまくっているド横暴なワガママもんらしい。

 セブルスはハルユキの教育方針を間違えたからそうなったのだろうと鼻先で笑いながら聞き流していたが………まさか、自分の子も似たようなものだったとは。

 いや、あの時ダドリーの側に居た子どもが………噂のハルユキの、息子?

 友人同士としてつるんでいるとしたら、それは───類は友を呼ぶ。

 互いに手がつけられない横暴なワガママだということだ。


 なんということだっ! いい歳になってまでアイツは関わってくるかっ!

「ハルユキめっ! 何処まで俺に面倒をかけるんだっ!!」


 しかし、余りの大声に理性を取り戻した。

 誰かに聞かれていたら、不味い。

 慌てて周りを見渡し、自分が居る場所を確認してほっとした。


 セブルスが私用で管理している薬草庫だったからだ。

 ホッとしたのも束の間。夢の出来事を思い出す。

 ちょっとした会話しか交わしていないというのに、あのダドリーの姿が鮮明に浮かぶ。


 黒髪に、特徴的な薄い灰色の瞳。

 瞳以外の外見は全く、───亡き父に面差しが良く似ていた。

 母はそんな父に惹かれて駆け落ちをしたほど。

 だが、仕事人間だった父とはそりが合わなくなり、夫婦喧嘩三昧の毎日。

 父は子煩悩な人だったが、母には厳しかった。

 だから、出て行ったのだ。

 愛想はつかしてはなかったが、生活に耐えられなかったのだ。

 だから、セブルスを置いて何処かへ行った。

 現在生きているかどうかはどうでもいいが、無事平穏に生き抜いたというのだったら嬉しいことはない。

 母の事を置くにしても、セブルスはダドリーを知るまで独りだと思って生きてきた。

 ペチュニアの子を救えなかったあの時から。

 しかし、一年前のあの賢者の石を回収したあの日。その潜めるような日常は跡形もなく崩れた。

 ペチュニアの行動が怪しいからと知り合いに任せ写真を撮らせ現像を受け取ったところ、───セブルスは、凍りついた。

 子猫を追いかけるダドリーとハリーの写真。そこに写るペチュニアの息子ダドリーは、あの父の面影重なり合った。

 大慌てで我が家に帰り、父の書斎を掻き漁った。

 床が散乱しても、気に止めていられなかった。

 昔良く見せてもらったアルバムをようやく見つけ、捲りに捲ると少年時代の父の写真。


『生き写し』


 嫌と言うほど、生き写しだった。

 他人の空似という言葉で済ませるのは、余りにも乱暴すぎる。

 最後に見たのはぷっくりした三歳ほどだ。あの時は確かに焦げ茶色だった髪。しかし、今は完璧な黒髪。


 あのマグルの子どもかと思っていたが、年齢はハリーと同じ。


 セブルスはパブでハルユキを至急呼び出し、問い詰めた。


 ───これはどういうことだ! あの時、赤子は流れたはずだろう! 死体まで見た! だが、生きているとは……どういうことだ!!

 ───知っていて、何故良くも今まで隠していたっ!


 激昂するセブルスに、ハルユキは淡々と告げる。


「あのまま、産まれたとしたなら───ペチュニアとあの子は救われて魔法界に居られたか?」


 あの時、ペチュニアは赤子が流れた事により追放を下された。

 死刑は取り下げられ追放だけに留まったとしても、彼女に子どもが身籠っていたと知っていたならば、魔法省は再び危惧し彼女をマグル界に追放せず、幽閉し最悪危険視が度外を越えた集団に処断されていた可能性は大いにある。


 どちらにしろ、セブルスとは一緒にはいられない。

 ペチュニアはせめてセブルスを巻き込まないよう、嘘をついたのだ。

 それは世間すら欺く、嘘だとしても。


 何も言わず誰にも頼らず隠してきたペチュニア、世間にバレぬよう協力したハルユキ、赤子の死骸まで用意し、不死鳥にセブルスがいくよう誘導したかつての旧友を責める気が、薄れていった。


 そうしなければ、ダドリーは生きてはいけない。

 英雄と教科書に載る従兄弟のハリーとは立場が、違うのだ。

 決定的な、違い。


 だから、セブルスはダドリーの事を何も言わず、それ以降ただダンブルドアの指示の元ペチュニアを監視し続けた。


 違う男と生活する彼女と見続け、血の繋がりがないとは分からない息子は男を父と呼ぶ姿に、チクチクと刺さる何かを無視し続け───そして、今。


 セブルスは我慢していた何かが、ぶち壊れた。


 蹴られた背中を押さえ痛みに顔を歪ませ───


「会ったら絶対に、教育し直す……っ!!!」


 怒りに震える声で静かに呟いた。

 今更、父親面か……と自嘲気味に思うが、あれは本気で直さなくてはいけない。


 セブルスは決意した。


 絶対に息子ダドリーに会う。


 絶対に教育し直さなければならない。色々と手遅れになる前に、ハルユキの息子共に!


 しかし、まさかこの後、ダドリーとホグワーツで違う形で再会するとは一ミリも思ってもいなかったのだった。

 この時、二人ともに……。


〇▼〇▼〇


 とある駅にて、十前後の子どもが一人スポーツバッグを肩に担ぎ、オス猫ほどの狗(いぬ)を抱えて、人混みの合間を縫って歩いていた。

 黒髪、黒の瞳に華奢きゃしゃな少年のダドリーだ。

 あの山奥から州を超えてここに帰って来たばかりだ。


『ノォ、つぐゥ』


 そんな帰ってきたばかりのダドリーに、誰かが話しかけた。

 だけど、合間を縫って歩くダドリーに話しかける人間はいない。

 話しかけてきたのは、腕に抱える『狗』。


 ダドリーはチラリと目を向け、…なに。と囁くように答える。


『わしノ、コレカラオ前二降リカカル予言を、教エテヤロウ』

「予言? へぇー、ただの狗がそんな事出来るんだぁー」

『わしノ予言ヲ馬鹿二スルンデハナイゾ。わしノ予言ハ良ク当タル。特二辻占イガ得意ジャ』

「………へぇ」

『フン、マァ信ジルモシナイモ本人ノ自由ヨノォ。オ前ニクレテヤル予言は──『善悪関係なく人の流れに、意志の流れに飲み込まれる。しかし、己の内なる蛇にだけは呑まれるな』、ダ」

「は? どう意味それ」

『流レニ只飲マレテイレバ良イ意味ダ。予言ニ深イ意味ヲ探ルナ。───オ前ハ、イツモノ流レニ身ヲ任セ、肝心ナ時ニ逆ラエトイウコダ。ソウイウノガ一番二得意ダロ?』


 ククっと機嫌良く尻尾を揺らす狗。

 ダドリーは苛立ち気に瞳を細めたが、何も言わずズンズンと人混みを割くように進み、駅の表に出た。

 久しぶりのいつもの駅前。

 懐かしさに魅入ると、雲の合間から顔を覗かせた太陽の眩しい日差しが瞳に射る。

 ダドリーは反射的に瞳の前に手を翳す。

 また、騒がしい夏が始まりそうな予感がする、初夏の日差しだった。

《賢者番外ダドリー編完》2015/07/07

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