コウフク±㌻/私は賢者のように賢くなれない。

かめわらじ
@tatamiwaraji

5、夏の友達とアイスと。

 魔法のマグル界は春。

 今回も衣装箪笥を経由して『日本』に居る。

 何故なら、暦が『わたしはまともに夏休みを過ごしていないんだっ! 休みくらい欲しいわぁぁぁぁあああ!!!』と例のおやじのこき使いっぷりにキレだし、無理矢理でも休みを求めて衣装箪笥から、顔見知りが居ない『日本』の何処かへ避暑しに飛んだのだ。

 うむ、長いアリスごろごろ空間で何処かに放り出された時は───私達は死にかけた状態で原っぱの上に転がっていた。

 もう少し行き方を変えないと私たちが危ないかもしれない。衣装箪笥からの悪意、身を持って感じた。

 それから色んな経緯があって私は今、夏真っ盛りの何処かの町の神社の本殿に居た。

 暑い日差しから逃げるように、神社のひさしにて避難していたが、やはり暑いものは暑い。空気まで人は逃げられない。

 もし、逃げたならそれは既にこの世にいないと考えた方がいい。

 そして私と暦は神社の廂の下で風太と言う小六の子と、あいすを一緒に食べていた。


「今日も暑いね」

「うん暑い」


 風太の言葉に私は同意する。

 暑いものは暑い。本日の温度は35℃超え。


「やっぱ、暑いときアイスだね」

「うんあいすはまるで神が編み出した救世の食べ物だ」

「そうだアイスは神が作った偉大な食べ物なり!」


 風太と私はそんな大それたあいす崇拝革命を暑さの余りに、そんな事を力説。

 隣で聞いていた暦が、変な物でもみたかのような温度差ある目付きでこちらを見ていた。


「………アイスごときでそこまで語る君らは平和だね。ああ、アイス美味い」


 そう言って顔をそらして、風太のぺっとである老犬である『ポチ』の頭を撫でる。

『ポチ』は暦が好きらしく、尻尾を振って嬉しさを表していた。

 私の時なんか触られても、『あそ。好きにすれば?』みたいに腹を出して馬鹿にするのに。何この差。

 いつも動物は大概たいがい暦と私を比較した挙句に私を馬鹿にするのだ。

 ………別にいいよ。悲しいことに慣れ過ぎて今ではどうでも良くなっているから。

 そんな私を馬鹿にする飼い主の風太にあいすをおごろうとしたところ、風太は頑なに拒んだ。

 風太曰く、『年上が奢るものなんだ!』と豪語したのでご相伴しょうばんに預かった。彼は財布を開いて悲しそうな顔をしていた。

 今度は奢ってあげよう。


 というわけで、本日は私と暦は風太の奢りであった。

 そんなこんなであいすを食いながら、私らは無益に時を過ごして、神社でだべーとしていた。

 今日もやっぱり日差しは暑すぎた。


▼〇▼〇▼


 私らにあいすをおごってくれた彼の名は、山村やまむら風太ふうた

 ここの町に着いて、町全体を見渡せる高台の木陰の下で暦と休んでいる時に、彼と偶然鉢合わせした。着いた時、小学生らが夏休みに入る前日だったのだ。

 毎度のことながら、あの衣装箪笥時空乱れすぎである。

 山村風太と名乗った彼は、その帰りだったのだ。

 何とも過去に日本人だった私にしてみれば懐かしい恰好。


 図工作品、朝顔、上履き、絵の具セット、かばん、家庭科の道具、習字道具。

 よって、今日中に持って帰るよう言われた一学期中の荷物を背負う図。


 ……私もああして一学期終わりに帰ってきたものだ。

 田舎だったから、家までの帰途にかなりの道のりをようした。

 要は帰るのに大変だったということ。

 これを暦とかに話したら馬鹿にされること必至なので喋る気はない。

 そんな大変そうな荷物を一度に運ぶ山村風太君に、私らと意気投合した後、彼の荷物を持ってあげることにした。

 彼はいいよいいよ。と言って辞退したが、私らは強引に彼の荷物を奪って家まで一緒に運んであげた。

 やっぱり一人で運ぶには辛かったらしく、「助かった」と笑顔でお礼を言われた。

 判るよ。その気持ち。私もそうだった。一人で運ぶのは、途中で過酷を極め最後はぞんびになった。

 神は私を見捨てたのだとさえ、被害妄想を掻き立てられる。自分の事など棚にあげてさ。


 それで、風太宅に着いてみれば………未来を扱う『未来屋』と名乗る男25歳『猫柳ねこやなぎ健乃介けんのすけ』と遭遇。

 私ら三人はこの人の宅に堂々と入り込んであまつえ茶菓子まで世話になっている男に一歩引いた。


 風太曰く、『あいつはぼくの家でお世話になるつもりでぼくの落とし物を届けたんだ』と口にした。

 その直後、『未来屋』という怪しい男は風太宅で居候決定。

 風太は未来を見事に言い当てたのであった。


 それから、私らは風太宅に遊びに顔を出すようになった。

 こうして、風太と怪しい『未来屋』と一夏を過ごすことになった。

 なかなか面白い事件に巻き込まれるなんて知らずに。


▼〇▼〇▼


 そんな訳で『未来屋』に振り回されている風太の夏休み。

 私らはこの後に起きるあるちょっとした事件を知らずに、髪櫛かみくしちょうの通常神隠し神社にてだべっていた。

 風太は空を眺めながら、


「ツグたちはいつまでいるんだ?」


 何気なく聞いてきた。

 私はさらりと、


「うーん、まあこの一夏かなー」


 と口にしてシャリシャリとあいすを噛み砕く。


「………そっか」


 風太は寂しそうな顔をして、それだけを口にしてあいすを頬張った。

 沈黙が訪れたけど、


「けど、また来るしこうして会えるよ」


 そう暦が顔をあげて、にこりと風太に微笑みかけた。

 風太はその言葉を聞いて、「そっか!」と嬉しそうに返した。

 暦も私もそれを見て、微笑ましくなって笑う。

 風太も私らにつられて笑った。


 神隠し神社は、私らの笑いが響き渡った。

 そんなこんなで、夏は暑く、日差しは強かった。

 まだまだこの一夏は始まったばかり。

 明日も思い出に残るような面白い体験が出来るといいな。

 太陽の日差しは強くて、ジリジリと私の肌を焼いた。

2015/07/07

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