コウフク±㌻/私は賢者のように賢くなれない。

かめわらじ
@tatamiwaraji

2、友達になろうよハリー!

 季節は初夏。

 復活祭イースターの休みに入ると、山ほどの宿題が出された。進級試験があるからだ。

 ハリーは『伯母の事』や『賢者の石』よりも図書館で試験勉強にかかりきりに。

 だが、図書館で勉強していたとき、ハグリットが来てなんとドラゴンの飼育に関する本を見ていたのだ。

 この魔法族が住む魔法界では、1709年ワーロック法で、ドラゴン飼育は違法とされている。

 なのに、見ていた。これに、三人は嫌な予感を覚えたが、まんまと的中。

 ハグリットにはた迷惑なまでに巻き込まれ色々あって、グリフィンドールから一五〇点減点される羽目に陥ったばかりか、ハリー達三人は一夜にしてグリフィンドールの嫌われ者に昇格。

 だが、レイブンクローやハッフルパフは敵にはまわらなかったが、グリフィンドールで嫌われているハリーに声をかけることなく、避けられるようになった。

 巻き込まれたくない心境なのだろう。

 それ以来から、後半のホグワーツで過ごす学期は居心地が悪いものだったが、ハリーは余り気にしなかった。マグル界の学校にいた時も、似たようなものだったからだ。

 だがやはり気分は優れない。従兄弟であるダドリーにあまり長くない文章の手紙をヘドウィクとやりとりして気を紛らわせたりしていた。


 そんなある日、ハリーはスネイプに呼び出された。

『賢者の石のことで話がある』、と。


※※※※


 試験を終えたその日の夜。

 談話室で待ち構えていたロンとハーマイオニーに被っていた『透明マント』を剥ぎ取られ、三人で行くことに。

 三人は命がけの冒険を経て、ロンを犠牲にし、ハーマイオニーとは最後の部屋の前に別れ、ついにハリーは『賢者の石』を狙う犯人を追い詰めた。


▼×××△


 黒い炎の向こう側へ出ると、最後の部屋。

 すでにそこに誰かいた。

 ヴォルデモートではなく、居たのはあのクィレル教授。

 ハリーが何も言わずに息を呑んだのを見て嗤いを浮かべた。

 その顔にはいつもと違い、痙攣はしていなかった。


「そう、私だ。ポッター、ここで会えるかもしれないと思っていたよ。どうやら、スネイプだと思っていたようだが………残念だな。誰だって、か、かわいそうな、ど、どもりのク、クィレル先生を疑いやしないだろう?」


 そう言ってクィレルは笑った。

 いつものかん高い震え声でなく、冷たく鋭い笑い。


「そして、あのクィディッチの試合で殺そうとしたのはいかにもこの私だ! だが、どっかの『誰か』に笑われながら火をつけられて、お前から目を離さざえるを得なかった。あの時、スネイプとその『誰か』にダブルで呪文をかけてさえしなければ、お前を叩き落とせたんだ。おや、スネイプがお前を助けていたとは思ってなかったみたいだな。そうだ、スネイプはお前を救おうとしていたんだよ! お前の父ジェームズに虐められていたにも関わらずにさ! バカだよスネイプは。仇の息子を助けるなんて!」


 そう言って更に哄笑した。完全に見下した笑いだった。

 クィレルはそのまま喋り通す。


「どうせ今夜、私がお前を殺すのになッ! ハロウィーンの時もあんな風にチョロチョロしやがって。私にはトロールについて特別な才能がある。あの時、皆がトロールを探して走り回っていたのに、私を疑ったスネイプだけが、まっすぐに四階に来て私の前に立ちはだかった! しかもしかも、私のトロールが君を殺し損ねたばかりか、三頭犬はスネイプの足を噛み切り損ねた! あまつさえ、犬の腹いせなのか翌日には、歩く度に禁じられた森に繋がる落とし穴をしかけやがって!」


 歩く度にということは結構死にかけたようで、くそくそッ! と地団駄を激しく踏んだ。相当頭にきているようだ。

 今までの姿を一新したクィレル。だが、彼は自分に酔ってある事に気付いていなかった。

 着いてからハリーが一言も喋っていないと言うことに。

 クィレルは地団駄を止めてガバッと顔を上げ、ハリーに血走った目を向け、


「しかし、ポッター君は色んな所に首を突っ込みすぎている。生かしておけない」


 そう言って、パチっと指を鳴らす。

 縄がどこからともなく現れ、ハリーの体に固く巻き付き、硬い石畳の床に引き倒された。

 それを見て、クィレルは嗤いに嗤い、見下した口調でハリーに指示をした。


「さあポッター、大人しくそこで待っていろ。「スポンジツァイ、縄よ衰えろ」この中々面白い鏡を調べなくてぇぇぇぇえええ?!」


 見ればハリーは立ち上がり、縄は弱いらしくなって、弛みに弛み床へと落ちていった。


「あー、疲れた」


 そう言って片手に杖をもちながら、肩を叩いた。

 ハリーは巻かれた際に密かに手に杖を握っていて、それによりある先生から教わった呪文を唱えて縄から脱したのであった。


「こ、こここれはどうゆうことだあああぁあぁあぁッ!」


 クィレルはガッと自らのターバンを掴んで叫んだ。


「スネイプ先生から試験前に呪文を教わったんです」

「なんでそこで、スネイプが出てくる?! まさか奴は……」


 ハリーの言葉にクィレルは目を極限にまで見開いたのだった。


※※※※


 ハグリットのドラゴンのゴタゴタに巻き込まれ、マクゴナガル先生に減点と罰則を言い渡され、一晩明けた翌日のこと。

 グリフィンドール中に針のむしろで一日過ごし、息詰まる夕食を終えて大広間を出ていく際、かーと鳴き声が。

 鳴き声がした方を向けると一匹のカラスが西洋甲冑の兜の上に止まっている。

 見上げるハリーに足に持っていた羊皮紙をぽたりとハリーの足元に落とした。

 なんとなく拾うと羊皮紙には『賢者の石について話がある。そこのカラスについてこい』と書かれている。ギョッとしてその紙をローブの中にしまい、周りを確かめた。

 幸いにして、一夜にしてグリフィンドールの嫌われ者になったハリーに見ることも、関わる者はいなかった。

 またカラスに視線を向けると、カラスは兜から飛び降り廊下の石畳をトコトコと鳥足で歩いて案内されるのだった。


▼×××△


 案内されたのはスネイプ教授個人の薬棚が並ぶ貯蔵室だ。

 前を来るとスネイプは扉を開き案内したカラスを拾い上げ、ハリーを手招きして中へ招いた。

 聞かれると不味い内容なので扉はすぐに閉められた。

 ハリーとスネイプとカラス一匹だけの空間。

 ハリーは早くもここから出ていきたい気持ちに駆られ、そわそわしまくっていた。

 じっとこちらを見るカラスの視線も気になるが、スネイプのあの静かな瞳で見定められるのが嫌だったのだ。

 従兄弟のダドリーを連想するから。

 間近で見れば容姿は整っているとはいえ、ダドリーほどではない。

 なのに───焦げた茶髪から黒髪になったダドリーとスネイプと何処か似ているのは否めなかった。


「ポッター。お前は何処まで『賢者の石』を知っていて、それを狙う犯人は誰だか──見当がついているのか?」


 いつもの授業内容を告げるように言うので、生憎聞き流しそうになった。

 ハリーは頭の中でもう一度その言葉をリプレイし──理解してからどきりとし嫌な冷や汗を流す。

 スネイプは、何もかも知っているのだ。ハリーが自分を突き止めたのだと。

 スネイプの静か過ぎる瞳の視線を受けながら、ハリーは意を決して話した。


「『賢者の石』には永遠の命をもたらす効果があって、復活したいヴォルデモートはその永遠の命が欲しくて『賢者の石』を狙っている。先生、あなたはそんな彼を匿う手下で『賢者の石』をクィレル先生から奪おうとしている。言わば、先生が犯人だ、と推理……しました」


 ハリーは話していく内に舌が異常に渇いていき、カラカラになっていくのが不安をよりあおるようで嫌だった。

 ハリーの話を聞いてスネイプは瞼を閉じ、「そうか」とだけ言ってから、瞼をゆっくり上げる。


「だが、俺が犯人という推理は間違いだ」

「えっ」

「さっくり話そうか。犯人はな、あの闇の防衛魔術のクィレル教授だ。多分あの頭に皆の言う『例のあの人』が住んでいる。だから、ターバンをいつも巻いているんだ。臭いのはそのせいかもしれんな」

「えっと……さっくり過ぎです先生」

「そうか。そうだな。でも、考えてみろ。大体俺が犯人だとしたら今頃話もせず殺しているだろう?」


 さらり恐ろしい事をいって、ハリーの心臓は縮んだ。

 いや、言外にいつでもお前の事は殺せるんだぞと言われたような気がしたが───スネイプのことが苦手過ぎてハリーにはそう聞こえたに過ぎない、だろう。

 ハリーは妄想言外にブルブル震えながら、


「じゃ……じゃあ、先生はなんでそこまで僕に教えてくれるんです?」


 スネイプは今更、何を聞くんだ? と機嫌悪そうに眉を潜め、


「俺が個人的に犯人だと思われている事自体が不愉快に尽きる」

「え?」

「お前が俺を苦手に思うように、俺はお前が苦手だ」


 はっきり言われた。仮にもいち教師に。

 え……、この人教師、だよね?


「だが、個人的意見の前にお前はここの生徒だ。お前に万が一な事があれば、ホグワーツ全体が責任をとらねばならん。もしかしたら、閉鎖もありえるのでな、そうなる前に───俺の個別指導を受けてもらう」

「は、はい?! 先生の個別指導!?」

「そうだ。スリザリン生ではないグリフィンドール寮生のお前をわざわざ俺が直々に見てやってまで指導してやると言っているんだ。ありがたいと思えポッター」

「えっと……………」


 本音を吐き出した途端、毒舌に切り替わったスネイプ。

 元々、グリフィンドールを良く思っていない態度はあったとしても、授業などで絶対不平等な事はしなかったのに。

 だけど、この毒舌───嫌に従兄弟に似ているような……。


「指導は明日からだ」


 その後、本音を発揮したスネイプに散々ハリーはいびりにいびりられ───いや、懇切こんせつ丁寧に指導してもらい、どうにかこうにか最低限使える術を試験の間に取得し、『賢者の石』横取りに挑んだのだ。


▼×××△


「あなたのことを犯人だとわかっていながらここ試験前期間中泳がせていた。それとクィレル先生の独り発言はスネイプ師のもとでしっかり録音したので、後のことはご安心を」

「録音までしてやがって…っ?! く、そ──スネイプめぇぇぇええ!!」


 クィレルは切れ、ターバンを一気にほどいた!

 ターバンがバサリと投げ捨てられ、クィレルの後頭部を見てハリーは石のように固まってしまった。


 その後頭部にはハリーがこれまでに見たことのないもう一人の恐ろしい顔があったからだ!


 ろうのように白い顔、ギラギラと血走った目、鼻孔びこうはヘビのような裂け目になっている。

 なんて恐ろしい!

 ハリーはここに来て、ようやく生命の危機感を感じ、恐怖を抱いた!

 これはただの、冒険劇場なんかじゃない! 、と。


 恐怖で顔が引き攣り、最早後退りすら出来ないハリーに、そのクィレルの後頭部にある顔の血走った目がハリーを捉えた。

 そして、


「いやん!」


 と、恥ずかしそうに目をそらした。頬をほんのり赤く染めて。


 恐怖の呪縛は一瞬にして解かれた。


「何その反応! 乙女みたいで頬赤く染めないで、キモイッ! マジキモだから! 凄キモだからッ!!」


 予想外のヴォルデモートの反応にハリーは鳥肌が立ち腕をすかさずさすった。


「ご主人様何恥ずかしがっておられるんですか! 鏡を使って『賢者の石』の在処ありかを小僧に吐かせれば手に入れられるところまで来たんですよ!」


 クィレルは叫びながら、説明。

 それにヴォルデモートは困った顔して、


「あの、ハリーが呪文を鏡に向かって放ったんだけど」


 あっさりと。


「は?」

 がしゃん。


 クィレルが振り返る頃には、ハリーの呪文により鏡は割れてしまった。


「えええええぇぇぇぇッ! 割れちまぅたぁぁぁぁあ! これじゃあ石が石が石が『賢者の石』がぁぁぁあ、もう二度と手に入らなくなったぁぁあ!」


 それにクィレルは頭を抱えて、左右に振りだした。


「やめろ! 俺様がいるんだぞ! 頭を強く振るなあ! おえー視界がシェイクして、き、気持ち悪いー…………うぷっ、吐く、吐きそう……吐くかも……」

「手に入らなくなったんですよご主人様! 焦ってくださいよ!」


 クィレルが動きを止めて喚くと、当のヴォルデモートは吐くか吐かないか格闘している今にも死にそうな顔して、


「……別に俺様凄く『賢者の石』欲しいわけじゃないしー」


と投げやりに。


「じゃあ何で欲しがったの?!」


 ハリーは思わず突っ込むと、


「だって、世界征服って言ったら『賢者の石』じゃん?」


 目をパチパチさせながらあっさり答えた。


「軽! そんな軽いノリでホグワーツ巻き込んだの?!」

「いやいや、それ手に入れたら征服が楽にできるから手に入れてちょうだいよって俺様の組織の人に頼まれたから、断れなくてぇー。てへっ」

「何が『てへ』だよ! 大体人の言葉で動いてんのあんた! そんなんで動かれて巻き込まれたこっちはすっごいはた迷惑なんだけど!」

「だよねー。はた迷惑だよねー。俺様もさ動きたくないんだけど、組織がそうゆうわけにしてくれなくて。大人になると色々大変。君も大人になったらわかるから。あっ、なんか気が合うから特別にヴォルって呼んでいいよ。俺様はハリーちゃんって呼ぶから。何か友達みたい!」

「呼ばねーし呼んで欲しくないし友達にもならねーから全力でならねぇーから」


 ハリーは息継ぎなしの全力否定をした。


「なんで?! 良いじゃん友達いいじゃん!」

「キモくてノリが軽くてバカみたいなやつなんかと友達になりたくないよ」

「そんなっ?! ハリーちゃんはこの俺様の姿がお気を召さないと! くそ、実際の俺様は輝かしいほどカッコゆすっなんだぞ!」

「キモッ! その姿形でナルシスト?! 存在自体キモッ!」

「き、キモくないもん! 諸事情があってたまたまこの姿なんだもん!! ハリーちゃんのバカ、友達なのに酷いこと言わないで!」

「友達じゃねぇっていってんだろっ!!」

「ご主人様ぁぁぁああああ! 小僧なんかと何普通に会話してるんですかぁぁぁあああ!!」

「き、気持ち悪いぃぃぃいいい!!! しぇ、シェイクするなぁ! シェイク、シェイクするなぁぁあ!!! うぷっ、は、吐く! 吐くから、やめ、やめろぉ……く、くそ、ステューピファイ! クィレル麻痺せよ!」


 ヴォルデモートが呪文を口にすると、頭を振りまくって妨害しまくったクィレルはぐうの悲鳴をあげることなく失神した。

 顔面から倒れこんで。

 後頭部にあるヴォルデモートは、無事。

 ぜーはーぜーはーと激しく息継ぎしながら、


「あー、ハリーちゃん。これで、ゆっくり話せるね!」


 と力ない笑顔で会話を再開!


「話したくねぇし話す気ないから! 何あんた馬鹿? バカなんでしょ?! バカすぎるから友達いなくて友達欲しいわけ?」


 ハリーは二三歩後退しながら、そう一息に叫ぶ。


「馬鹿じゃないよ。俺様余りにも頭よすぎるから友達出来ないだけ。しかも今こんな姿だしさ。と言うことはこの姿で友達になったのはハリーが初めて?! やったね、ハリーちゃんこれからも宜しく!」

「宜しくされたくねぇーよ!」


 嫌がるハリーなど全く視界に入らないヴォルデモートは、上機嫌に目をキラつかせ、


「俺の今の姿の友達としてお近づきの印に『賢者の石』あげる! アクシオ! ハリーの前に『賢者の石』出てこい!」


 そう言って、ドサっと賢者の石がハリーの手元に落ちた。


「何で『賢者の石』持ってんの?! ありか知らないって言ったじゃんっ!」

「うん、俺様万能だから本気になればおちゃんこさいさい!」


 ハリーは何も言えなくなった。

 ヴォルデモートはニコニコして、友達友達と言っている。

 しかし、ハリーはそれらをぺいっと床に放り投げた。無表情で。

 そして、


「あんた馬鹿だろ。最初からその力で『賢者の石』持っていけば良かったろ。アホのアホ」


 と暴言をぶつけた。

 ヴォルデモートはハリーに気づかなかった事を言われショックを受け、しばし沈黙する。

 そして、


「うわーんバーカバーカ! ハリー・ポッターのバァァァァアカ! 俺様のお近づきの印を床に捨てたぁ! ばーかばーかっ俺様帰るもう帰る家に帰るお家に帰るぅぅぅううう! 世界征服なんかくそ食らええぇぇぇ! ハリー・ポッターなんか豆腐の角に当たればいいんだぁぁあああ! うわあああぁあぁぁぁぁん!」


 ヴォルデモードは床に捨てられた方にショックを受けたようで、一息にそう叫ぶとクィレルの身体を抜けて泣き叫びながら、何処かへ消え去った。

 失神させたクィレルを放置して。


 ハリーは何だか虚しさ一杯な気持ちになりながら、床に落とした『賢者の石』を拾う。

 こうしてハリーはなんの怪我を負うこともなくヴォルデモートに勝利し、『賢者の石』は盗られる事なく、英国の魔法界の平和を勝ち取ったのだ。

 そして、これをキッカケにハリーの人気はまたうなぎ登りに戻るのだった。

2015/07/07

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