コウフク±㌻/私は賢者のように賢くなれない。

かめわらじ
@tatamiwaraji

【賢者番外/ハリー編】/1、ハリーとスネイプ。

 四季は、秋。

 何やら伯母ペチュニアと知り合いらしいハグリットに聞いたが結局ははぐらかされそのまま駅まで送って貰った。

 駅内でホグワーツに向かう切符を貰ったハリーだが、その切符には9と4/3番線と書かれていた。誰に聞いても馬鹿にされるか飽きられるかでプラットホームの場所がわからず右往左往していると、


「……マグルで混みあっているわね……」


 など呟く声を聞き付け、魔法族らしい家族を発見。声を掛けて、そのまま9と4/3番線のプラットホームに無事に行ったのだった。


▼×××△


 ホグワーツ城に着くまでの過程で色々あったが皆に注目された帽子の選別も無事に終え、今は歓迎会の宴の最中。

 ハリーはようやく息をつき、目の前に置かれたご馳走に手を伸ばす前、ハリーは何となく来賓席らいひんせきを見やる。

 ターバンを巻いたクィレル先生の隣にいる、黒髪に目付きが鋭めの切れ長の先生が気にかかったからだ。

 その先生は宴だというのに、飲み物を飲みながら片手で見慣れない異国の文字が題になっている本を読んでいた。非常識にもほどがあるが、誰もその事に気にも止めない。

 ハリーはそれに何か引っかかった。

 騒がしい雰囲気にも惑わされず自分を貫くという姿勢が──ハリーの良く知る誰かに似ていたのだ。


(なんで、従兄のダドリーと被るの? あの先生とは初対面なのに…)


 ハリーが眉を潜めて、首を傾げると本ごしからその先生と目が合った。

 途端、バチリと額の傷に走る痛み。


「イタッ!」

「どうした?」


 急に額を覆ったハリーに、隣にいたロンの兄パーシーが心配して尋ねる。


「な、なんでもないです……。えとあの、あそこにいる先生はどなたですか?」

「あそこにいるのはスネイプ先生。魔法薬学を教えているよ。怒らせるとすごく怖い人だ。常識が無い行動する生徒には容赦なく点数を引き、罰を与えるところが僕的には好評価なんだけど、良く思わない連中は結構多いみたい。僕のような人間は少数派だよ。でも、先生は闇の魔術に凄く詳しいというところが──いただけないところだけどね」


 パーシーは尊敬の目をしつつ顔をしかめてスネイプを見たが、スネイプがハリーをまた見ることはなかった。


▼×××△


 季節は晩秋。

 伯母ペチュニアが魔法界で何があったのかを図書館で通えるだけ通って探したが、特にこれ! とさしたる収穫はなかった。

 小さな収穫と言えば、かなり魔法界を騒がせたらしいという割に、本の何処にも書かれていないということと、ペチュニアがハリーの伯母であるとは魔法界の世間に一切知られていないと言うこと。


 ハグリットが『良いも悪いもそのどちらにもはまらなかった』と言っていたことと関係しているのだろうか?

 周りに聞こうにも、───ハリーなんとなく躊躇いがあって聞くに聞けなかった。


 ペチュニアが自分の伯母である事を、誰も知らないことに───気味の悪さを感じていたから。


 伯母ペチュニアの事にだけに頭を悩ませる暇もなく日々は過ぎ、騒がしく点数を引かれたハロウィンも過ぎ、十一月。クィディッチ・シーズンの到来。

 ハリーがシーカーに抜擢されて何週間もの練習が終わり、土曜日はいよいよ初試合。

 試合は白熱していた。

 グリフィンドールの相手はスリザリン。


 色々とスリザリンによる反則もあったりしたが、試合は進んでいた。

 そんな中、ハリーのほうきが可笑しな動きを見せていた。

 箒がぐるぐる回り始め、彼がかろうじてしがみついていた。

 そして、ハリーは次の瞬間、心臓が縮んだ。

 捕まっていた箒が荒々しく揺れ、ハリーは振り飛ばされそうになったのだ。

 余りの荒々しさに、箒からハリーはついに身を投げ出し、両手で掴んでいた箒のが、いとも簡単に離れる。


 柄と指先が微かに離れて。


 ハリーは走馬灯でダドリーを見た。

 マグル界に居た時虐められていたところをダドリーに助けられた。

 その時彼は───

『自分でなんとか出来ないなら、ハリーはずっと弱虫のままだな』

 と微かにワラって。

 そして、伯母の身にあった屈辱を知らぬまま、死んでいいのかと。


「こんな事でくたばってたまるかーッ!!」


 ハリーはあらん限りの根性を出して、離れそうだった箒のを片手でがっちり掴み、何とかぶら下がる。箒がどんなに暴れようともハリーは柄にしがみつき、ふん掴って持ち堪える。

 来年ダドリーに会う。そして、試合に何がなんでも勝って自分は強くなったとダドリーに見せ、伯母に自分は知ったが大丈夫だと胸張って言うのだ。

 きっと、『凄いじゃないかハリー!』と関心を持ち拍手を送ってくれるかもしれないし、伯母ペチュニアは『ハリー……ありがとう。私は貴方が大好きよ』と涙を流しながら、心からの笑う顔を見せてくれるかもしれない。

 帰るまでに絶対に何がなんでもくたばらないぞ! と覇気をみせるハリーだった。

 それから、まんまとその覇気通りに持ちこたえ、箒が高く高く高く飛び上がったが、途中からコントロールが自在に。

 ハリーは再び箒にまたがり、そして何かを見つけて一気に急降下。観衆がざわめくなか、ハリーは手でパチンと何かを口の中へ。

 そして、箒もろとも地面に転がって着地。よろめきながら立ち上がり、くの字を折って何かを口から吐く。

 コポン。と金色のスニッチが手のひらに落ちる。


「スニッチ、取ったぞ!」


 頭上にスニッチを振りかざしながら、ハリーは叫んだ。


(ダドリー、伯母さんやったよ! やり遂げたよ! 僕はやり遂げたんだぁ!)


 心の中では別のことを大いに叫び咽び泣いていたが外面では満面の笑みを観客に見せていた。


 グリフィンドール対スリザリンは、170対60という結果を出し、大混乱の中で試合は終わる。


 ハリーによりグリフィンドールは勝ったが、そのハリーが箒に振り回される頃に針をちょっと巻き戻して。


▼×××△


 ハリーがぐるぐると箒に振り回され息を呑んだ時のグリフィンドールの観客席。


「フリントがぶつかった時、どうかしちゃったのかな?」


 シェーマスが呟き、


「そんなこたぁない。強力な闇の魔術以外、箒に悪さはできん。チビどもなんぞに、ニンバス2000にはそんな手出しはできん」


 とハグリットが返すが、声はぶるぶる震えていた。ハリーが心配で気が気でない余りに。

 だが、そのハグリットのセリフを聞くやいなやハーマイオニーは双眼鏡をひったくる。観客席の方を見渡した。


「何しているんだよ」


 ハリーの様子に真っ青な顔でロンは呻いた。


「ちょっと向こう側の観客席で見慣れない人がいるのよ」

「は? なんでこんな時に」

「やっぱり何か変だわ……見てごらんなさい」


 ハーマイオニーはロンに双眼鏡を渡す。

 受け取り向かい側の観客席にその見慣れない人がハリーのことをじっと見ていた。


「誰あの人……何か変わったかっこうしてるね。ところで、スネイプ先生の姿が見当たらないだけど……もしかして!」

「姿が見えない訳はきっとそうよ。あの見慣れない人も関係してる可能性はあるわ」

「ど、どうすりゃいいんだ?」

「とにかく私に任せて」


 ハーマイオニーはそう言うや否や駆け出す。

 ロンは双眼鏡をハリーに向けた。

 箒は激しく震え、ハリーを振り落とそうとしていたが、必死に掴まっていた。そして、並々ならぬ覇気がこちらまで感じ取れた。


「ハリー……凄いや」


 ロンは、ハリーの覇気に只それだけしか呟けなかった。


▼×××△


 ハーマイオニーは観衆を掻き分け、見慣れない人が端に座る観覧席まで辿り着き、見慣れない人物の背後に回ろうとした。

 だが、その人物の隣にスネイプが来た。

 すれば、その人物は振り返って、飲み物取りに行ってくるわ。と今まで居た席を離れてしまった。

 訝しむハーマイオニーであったが、スネイプがハリーを見ていた。

 ハーマイオニーは慌てて観覧席の下の中へと入って、端にいるスネイプの背後に辿り着く。そして、うずくまって杖を取り出し、呪文を唱えようする矢先、


「こんにちわ」


 と間近で声を掛けられた。

 ハーマイオニーは口から心臓が飛び出そうな勢いで悲鳴を上げそうになったが、何とか圧し殺した。

 そろりそろりと見上げると、自分が潜りこんだ列の観覧席に目線を合わせるように座り込み、微笑んでこちらを見ていた。いつの間にか、目の前に居たのだ。

 白銀の髪に、優し気な青灰の瞳を細めた人が。


「!」

 見つかった!!


 ハーマイオニーは頭の中が真っ白になる。

 だが、その人は自分に笑いかけると、ちょっと借りるね。と優しげに言って、するりと手を伸ばされハーマイオニーの杖を持って行かれた。

 あ……。などと言う暇なく、その人は立ち上がって何処かへ。

 見つかってしまった上に杖まで持っていかれてしまった! これじゃ、ハリーを助けられない! というショックに立ち上がれず呆然とする。

 彼女が呆然としている間、先生陣がいるこのスタンドで何故が火事発生。

 火元はクィレル。

 クィレルの悲鳴が響き渡り、それと同時に、ハリーは体勢を立て直した。


 そのクィレルの悲鳴に、はっとするハーマイオニー。

 訳がわからないまま外へ顔を出そうとした時、


「今顔を出しては危ないよ」


 と、腰を屈めた白銀の人が。

 先程ハーマイオニーの杖を堂々と持っていった人だ。


「これありがとうね」


 彼女の杖を手に握らせるように返し、


「あっちから出るといい。見つからないようにね」


 そう言って微笑みかけると、立ち上がる。

 他の人に見つからないように壁になってくれたようだ。

 ハーマイオニーは言われた通りのところから観覧席を抜けて人混みに紛れ込んだ後も、先生方の観覧席の大混乱は収まりをみせることはなかった。


▼×××△


 あの騒がしい試合などとっくに何週間も過ぎたある日のこと。

 ハリーはついに、十一年前に伯母ペチュニアが魔法界であったことに行き当たった。

 図書館の隅の隅に、追いやられていた薄く小さな本。

 いや、誰か書いた手書きの本だ。

 その本に薄っぺらいとしても、当時を知らないハリーが知るに十分な内容が簡潔にかかれていた。

 ハリーは呆然としながら、その本をマダム・ピンスにバレないよう無断で持ち出し、始終自分の懐に持ち歩いた。

 いつでも読み返し、───頭を悩ませて。


▼×××△


 季節は冬。

 十二月半ば、もうすぐクリスマス。

 クリスマスにハリーは従兄のダドリーがいるプリベッド通りに帰ろうとしたが、帰るのを取り止めにした。

 本人にあの話をするには、ハリーの覚悟が定まっていなかったからである。そして、伯母ペチュニアに会うのもなんだか気まずい。だから、今年のクリスマスはホグワーツで過ごした方が断然良い。

 先週、マクゴナガル先生がクリスマス期間、寮に残る生徒のリストを作った時、リストに名を書き込んだ。そのついでに、伯母にも帰らないという旨の手紙を送っておいた。

 クリスマスはホグワーツで過ごすと決めたとは言え、やっぱり喧しく毎年過ごしたクリスマスが恋しくなるのは仕方なく、妙に落ち込んだハリーだった。


▼×××△


 ある日、魔法薬のクラスを終え地下牢(意外に寒くなく、生徒らにも好評。だがどうやってあの地下牢を暖めているのか謎だと上級生が口にしていた)を出ると、行く手の廊下を大きなもみの木が塞いでいた。

 ハグリットがその籾の木を担いでいたのだ。

 ロンがハグリットに手伝いを申し込んだとき、後ろからマルフォイの気取った声が聞こえた。

 しかも、


「ウィーズリー、お小遣い稼ぎですかね? 君もホグワーツを出たら森の番人になりたいんだろう―――ハグリットの小屋だって君たちの家に比べたら宮殿みたいなんだろうねぇ」


 などと貶すものだから、ロンはたちまちに切れ、マルフォイに飛び掛かろうとした。

 そこで、


「マルフォイ、ウィーズリー」


 スネイプが階段付近に立っていた。

 名前を呼ばれていないはずのハリーがビクっとして身構えた。

 ハリーはスネイプが苦手で仕方ない。何故かって、誰かと被るのだ。


 従兄弟のダドリーと常に被って。


 ロンはスネイプの声にマルフォイの胸ぐらを掴んでいた手を咄嗟に離した。

 だが、今更手を離したところで変わりようがない。

 それを表すように、スネイプの冷たい目が二人を射抜いた。


 ハリーは特に、この目が苦手だ。

 睨み方が、よく似ているから。


 そこにハグリットがすかさず、木の間から突きだして庇う。


「スネイプ先生、ロンはケンカを売られたんですよ。マルフォイがロンの家族を侮辱ぶじょくしたんでね」

「そうだとしても、喧嘩けんかはホグワーツの校則違反だっだはずだが? ハグリットの言い分であれば、ウィーズリーがマルフォイに貶された。なら、何故その前に止めさせなかった」

「そ、それは……」


 庇うどころか、ハグリットがピンチ。

 ハリーがなんとか勇気を出してハグリットの前に立ち塞がってスネイプ先生に言い返してやろうとした時、


「でもスネイプ先生。ウィーズリーはハグリットからお小遣い稼ぎをしようとしていたんですよ」


 などとないことをでっち上げてきたマルフォイ。

 ロンは一気に頭に血が上り、マルフォイを殴り付けようとした。

 だが、マルフォイの顔面を殴ろうとしたロンのこぶしを、スネイプが寸前で掴んで止めさせた。

 驚く六名(マルフォイの仲間含んだ数)。

 特にハリーは、ダドリーっ?! と心底驚いていた。

 だが、即座に否定する。


 ダドリーの方がもっと洗練しているッ! 、と。


 スネイプは掴んだロンの腕を雑に離すと、


「ウィーズリーに言いがかりをつけていたのは本当のようだな。スリザリンは減点三点だ。次回見かけたらもっと引く」


 自分のスリザリン寮の生徒を躊躇いなく減点。


「ですが、先生! ウィーズリーは僕をぶん殴ろうとしたじゃありませんか! スネイプ先生も止めに入ったでしょう!」

「目の前で喧嘩を吹っ掛けた真似をしておいて尚被害者面か? 俺がスリザリンの寮監だとしても、甘い採点しないと前に言ったはずだ」


 スネイプの余りの温度が低下した声音と射るような瞳にマルフォイは黙った。恐れをなして。

 ようやく大人しくなったマルフォイらに、


「これですんでありがたいと思え。さあ、行った」


 と促す。

 マルフォイ、クラッブ、ゴイルの三人は激しくロンとハリーを睨みつけながら乱暴に木の脇を通り抜け、針のような籾の木をそこら中に撒き散らした。

 行ったマルフォイを見送ることなくロンに振り返ると、


「マルフォイに家族を貶されたらしいが、周りが見えなくなったからと手を出そうとするな。先に手を出したら、ウィーズリー、それはお前の責任になる。貶されたからと周りが見えなくなる自分を抑えることを覚えろ」


 よどみなく淡々と一喝。

 ロンは只、下を向いて、「はい」と小さく返事。


「今回はお前にも非がある為、グリフィンドールは一点減点。今度、喧嘩を自ら買った真似をしたなら大幅減点だ。わかったな」


 ロンがもう一度小さく返事したのを聞くと、スネイプは後腐れなくそのまま廊下を抜けた。

 叱られたロンは、かなり落ち込んでいた。

 ハリーはそんなロンに声をかける事が出来なかった。スネイプの言うことは的を射ていたからである。

 だが、マルフォイが居なければこんなとばっちりくらうこともなかったのに。

 間の悪い時に、スネイプが居たのは運がなかったと考えるしかない。

 なんとなく二人共に落ち込んでいると、ハグリットは励まし、大広間に連れて行く。

 ハリーはハグリットに背を押されながらスネイプが逆方向に去っていった廊下へ少しだけ睨むようにして顧みる。

 唯一の従兄に似ている事に腹が痛むほど余りに愉快ではない。

 だから、ハリーはスネイプが苦手で仕方なかった。

2015/07/07

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