コウフク±㌻/私は賢者のように賢くなれない。

かめわらじ
@tatamiwaraji

3、不思議な手紙。

※※※※②


 ハリーが二階の部屋に移ってから、一日が経った翌朝、ダドリーが新生活にと寄越した目覚まし時計が六時に鳴った。

 ハリーは急ぎ目覚ましを止め、こっそりと服を着て、電気もつけずにそろり足で階段を降りる。

 ハリーは昨日、ハリーの部屋にあるダドリーの蔵書を全て彼の部屋に移してから、やっぱり手紙が気になり知りたくなったのだ。

 あの気丈な伯母ペチュニアを泣かせた、手紙が。

 しかし、あの手紙で伯母をこれ以上困らせたくない。

 それでハリーはある名案を思い付く。


 プリベッド通りの角に自ら行って郵便配達を待つ。


 忍び足で暗い廊下を渡り、玄関へと向かう。外へ出るため、玄関のマットに足を踏み出す。踏みつけるように、力強く。

 だが、


「ギイウワーヮヮヮァァァァァァ!!!!」


 心臓が口から飛び出すかと思ったくらい、驚いた。

 玄関のマットを踏んだら、グニャリと生々しい感触が靴裏越しに感じ、嫌悪感が一気に駆け抜ける。

 ―――何だ?! 生き物!! 何の生き物?!! 玄関のマットに何か得体の知れない生き物が居る! 気持ち悪い何かが!


 ハリーは『踏んだ生き物』の正体に、度肝を抜くことになった。


『気持ち悪い何か』の正体は、なんと『バーノン伯父さんの顔』だったのだ!


「ヒッ!!」


 ハリーは伯父さんを踏んだ事に驚き、更に悪い事に踏んでしまった。

 グニョリ。


 バーノン伯父さんは、ハリーに容赦の無い第二弾と顔を踏まれて、今度は絶叫が響き渡った。


「ギョルルルルルルゥゥゥゥウゥゥウ―――――――!!!!」


 人間が発するとは思えない奇怪な言語で。

 何故伯父さんが玄関マットに居たのかと言うと……伯父さんはハリーが外に出て郵便物を自ら回収しようとするのを阻止する為に、寝袋に入って玄関マットに横になっていたのである。

 それから、ハリーは三十分間伯父さんに怒鳴りつけられ、最後のしめに、「紅茶を入れて来い!」と命令される。

 ハリーは嫌々渋々スゴスゴとキッチンに向かい、嫌味に砂糖とミルクをたっっぷりと投入した。

 玄関から戻って来た丁度に、

 バコン!

 と、バーノン伯父さんの膝に三通の手紙の角が激突した。

 痛がっている伯父さんを無視して、三通の手紙はなんとか見てみる。それは、緑色で書かれたハリー宛の手紙だった。


「あ……僕の」


 ハリーが言い終わらないうち、伯父さんは先程膝を手紙の角に激突された八つ当たりなのか、目の前で凄い形相でビリビリと破り捨ててしまった。目に前で手紙を破かれて歯噛みしたが、すぐに思い直す。

 この分だと、また手紙が来そうだ。こうして手紙は破かれてもしつこく配達されているのだから。

 気分を切り替え、甘ったるくなった紅茶をバーノン伯父さんに渡し、雷が落ちる前に自室へと階段を駆け上がり、ドアを閉めた。


「ハリ―――――ッ!!!」


 伯父さんの怒り狂う声が聞こえたが、無視したのは言うまでもない。二階に上がってきても、多分、寝起き不機嫌全開のダドリーに返り討ちに遭うことだろう。


▼〇▼〇▼


 朝から絶叫を上げまくって近隣住民に迷惑を被ったバーノンぱぱ。

 挙句の果てに、ハリーを追いかけて二階に上がって来た。

 朝から一家の父親とは思いたくは無い人の絶叫を何回も聞かされた上で起こされ、気分が全くの地球が果てに沈んだくらい最悪な目覚めである。

 そして、今、ハリーの部屋の扉を叩き暴言を吐きまくっていた。高音量で!

 私はつい耐えきれず、


 バタンッッッ!!


 と自室の扉を乱暴に開ける。

 汚い暴言を吐き隣の部屋の扉を叩く父親を、これでもかと低血圧の頭で気力を総動員して睨み付ける。


「オ……おおおはようわしのダドリーや!」


 バーノンぱぱは、声を裏返しまくった挨拶をする。

 早朝から非常識な行動を取って人様に迷惑にすら思っている節のないおっさんに、額の血管が後少しで切れそうな気がする。


「……父さん、ハリーを朝から虐めてんの?」


 軽蔑仕切った瞳で、もっともな低い声が出る。機嫌悪いのですとかの話じゃない。気分が最悪なのだ。

 自覚のないバーノンぱぱは全身を震わせながら、


「ハハハハリーがな! わわわわわわしの紅茶に「ハリィー…? 紅茶…? 朝からしっかり虐めてんじゃないか。それとも、あの絶叫は私に対して不満があると遠回しに嫌がらせを始めましたよ。と、解釈していいんだね」

「ちちちち違うのだ、違うのだよダドリーよ! まままままて、待て待て早まるな!」


 顔を静かに伏せただけで、慌てるバーノンぱぱ。

 何が早まるなだ。人を物騒な人間みたいにいってくれて…!

 一層イライラが溜まった。


「あのさ、私昔からずっと言っているよね? 私が起きるまでハリーに何もしないって」


 低血圧がたたって頭が痛く、目が自然と細くなる。

 バーノンぱぱは全身の震え増幅させると、器用に顔を蒼くさせ、


「あ、あぁ、そうだとも。な、何もしてないさダド「なら」


 私は最後まで言わせる事なく、割り込む。


「ドンドンとどあが破れそうなくらい叩いて暴言を吐くことが、虐めじゃない? 自分のしていることは正当? だとしたら、見損なったよ」

「ひ、ひ……ダ、ダドリー! だっ、だから父さんはハリーを」


 ドンッと廊下の壁を震わせるくらい横拳の側面で殴り付ける。

 ボコっと壁に穴が空いたが、きっとそれは壁がやわなせいだ。

 私は顔をゆっくりと上げ、力を込めて睨み付ける。

 一、二歩後ろに下がるバーノンぱぱ。


「ひ、ひぃぃい!!! ダ、ダドリーだから……「朝は爽やかに起きたいものだよね、父さん?」


 こくこくと頷く父に私はゆっくり続ける。


「だから、朝からつまらないものを今後見せない為に、私が起きるまで一切ハリーを虐めるのも当然のようにダメだけど、父さんだけ二階に上がるのを禁止。わかりましたか」

「だ、だから、ダドリー、わたしはハリーをいじ…ひっ!」


 言い訳するバーノンぱぱに人差し指を鼻先に突き付け、


「わかりましたか?」


 只、バーノンぱぱに淡々とした声音で聞いた。

 バーノンぱぱは魚も真っ青な顔で、何度も何度もなんとも素直に頷いてくれたのだった。


▼〇▼〇▼


 木曜日。

 朝から絶叫を上げ近隣に迷惑をかけたバーノンぱぱはその日会社を休み、家の郵便受けに釘付けにしていた。

 その日、私と一日口を利かず、ハリーを虐めず静かでとても過ごしやすい日だった。


 金曜日。郵便受け釘付けの次の日。

 バーノンぱぱの無意味な努力も虚しく、十二通が我が家に届き、彼は会社を休む。

 郵便受けは彼が自らの手で釘を打ち付けたため、玄関扉の下から押し込まれたり、横の隙間に差し込まれたり、一階の洋式手洗いの小窓から捻じ込まれたりなど。

 彼はその十二通全て焼き捨てると、奇声を発しながら玄関と裏口の扉の隙間という隙間に板を打ちつけ、中途半端な密室の完成。誰一人として外に出られないようにした。

 だけど、ハリーとペチュニアままと私は一階のだいにんぐに繋がる(ペチュニアままが植物を育てている)温室の大窓から普通に出入りした。

 こっちだって生活があるからね。


 土曜日。傑作なまでに半端な密室を作り上げた次の日。

 バーノンぱぱ必殺『釘打ち密室!』では手がつけられなくなった。

 ハリー宛の手紙二十四通が家の中に忍び込んできたのだ。

 牛乳配達さんが、開かない玄関の扉を見て、一体何事か? の顔を浮かべ、卵二だーすを窓からペチュニアままに手渡したのはいいが、その卵一個一個に丸めた手紙が入っていたのだ。あぁ、流石魔法世界。驚きの手腕に舌を巻かれる。

 だが、友人の暦がこれを見ても驚かない上に、『わたしだったら中身をヒヨコに変えてあげて、それから手紙をねじ込むよ。そしたら、窒息したヒヨコがどっさり手紙と出てきたら相手も流石にこちらの意図をわかって行かせてくれるよね』と爽やかな笑顔でこう言ってくれることだ。

 ほぐわーつの校長があいつじゃなくて良かったよ。

 バーノンぱぱは、大ッ嫌いな魔法使いどもがしてくれた予想の裏切りに誰かに文句を言わねば気がすまないらしく、郵便局と牛乳店に怒りのくれーむ電話を必死にかけていた。

 怒り狂うくれーまと化した彼の横で、ペチュニアままは手紙をみきさーにかけていた。壊れかけていたからぶっ壊す手間が省けたからちょうどいいんだってさ。


 日曜日。あの有名な空飛ぶ手紙の日!

 バーノンぱぱは、疲労を濃くした青い顔で「日曜日、郵便は休みだ!」と、嬉々として叫ぶ。

 ペチュニアままは昨夜犯人との格闘で眠い目を擦りながらまーまれーどをとーすとに塗って夫の様子など気にも止めない。

 それより、昨夜の夕飯時に突然、「私の長期休暇が八月末まで取れたから長期旅行に行くの。あんた達準備しときなさい」とペチュニアままは言い出した。

 私とハリーは顔を見合わせたが、ずっとあの手紙でもやもやしていた週だったのでちょうどいい気分転換だった。久々の旅行にハリーは浮き立ち夕食後すぐに準備にとりかかった。

 私たちは今、旅行の準備万端な状態で朝食を早々と済ませていた。

 だがそんな忙しない台所に、突然ある暖炉から何かが飛び出し、「今日は忌々しい手紙なんぞごわっ」とヒューとバーノンぱぱの口の中にめがけて命中。

 何事かとバーノンぱぱの口の中に入ったものを見ると、あの手紙だった!

 その一通の手紙を境に、三十、四十もの手紙が、暖炉から豪雨如く溢れ、台所を舞いまくるほど。

 その中でハリーはもう随分昔に観た映画の場面のように満面のいい笑顔で飛びついて手紙を捕ろうと頑張っていた。

 そんなハリーをバーノンぱぱが捕まえようとしているのを私は、ただ眺め笑う。

 相変わらずのこんびだなぁって。

2015/07/07


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