コウフク±㌻/私は賢者のように賢くなれない。

かめわらじ
@tatamiwaraji

1、贈り物。

※※※※②


 リンリンと黒電話が鳴る。

 睡眠不足でイライラしていたペチュニアままは黒電話の音に呼び寄せられて、機嫌悪そうに靴音を響かせるほど大股でだいにんぐから出て行った。

 私は包装を破かず、第二の自室兼ハリーの部屋へと運んでいた。

 全て運び終えると、ハリーが使う机(最近私の部屋に入り浸るから使ってない)にポツンとしんぷるに包装されたぷれぜんとが一つ置かれていた。それを手に取る。

 バーノンぱぱから、だろうか。でも、なんか違う……。

 机にあったそのしっくなぷれぜんとを手に取り包装を破いて開ける。中には、質の良い羽ぺんとそれにつけるいんく瓶が十瓶以上入っていた。

 ………バーノンぱぱらしかぬぷれぜんとだ。

 あの人ならわざわざ日本のお菓子の詰め合わせを問い合わせて輸入してくれる。ペチュニアままは去年、高級土鍋と漆器塗りの菜箸を買ってくれたので、全く違う。

 まさか……マージおば? いや、もっと違う。マージおばだったなら、ぶっろく肉一つ送りつけてくるか、または良くしつけられた一歳に満たない子犬か、サンドバッグかダンベルかまぁ要はスポーツ用品だ。

 じゃあ、この羽ぺんといんく瓶は……一体誰から? ペチュニアままは『三十七個』と言った。これでは数が合わない……。

 私は、首を傾げながらも例のぷれぜんとを思い出して釈然としないが納得しつつも、羽ぺんといんく瓶が入ったぷれぜんとを持って部屋を出た。

 自室のべっどにそのぷれぜんとを置いて。


▼〇▼〇▼


 三十七個もあると部屋へ運ぶのは疲れるばかりだ。半分近く第二の自室兼ハリーの部屋に運んでから、休憩とそふぁに身を投げた。そこにバーノンぱぱが困ったニヤケ面をして、


「ダ、ダドリーや。ここで開けて見ないのかい?」

「うん。あんたにずっと見られてまで、見たくない」


 気のない顔をして本音を口にする。


「いや、誕生日というのはな、その送った人が受け取った人の喜ぶ姿をみたいもので…」


 予想を遥かに裏切り、更に想定外の辛辣しんらつに傷つきつつも、なんとか平常心を保つバーノンぱぱ。

 それならとあることを思い立った私は少しだけ起き上がり、


「父さん開けてもいいよ。私はそれを眺めているから」


 バーノンぱぱは何を勘違いしたのか、ぱぁぁぁあと沈んでいた顔を明るくさせ、


「そそそ、それじゃあ、お前はワシが中身を開けたら喜ぶのか!」

「勝手に開けたら普通に嫌いだけど」

「きっ、キライ!?!」

「嫌い」


 なんか付き合うのにバカバカしくなった私は、もう用は済んだでしょ。と横になろうとすると、


「おおおおおお前に嫌われたら、ワシはワシはどどどうすれば!」


 絶望しかけた顔で髪をかきむしる。その姿はむさ苦しさ以外何でもないので仕方なく会話を続ける。


「さあ、自分で考えてみれば。考えられるなら。何のために父さんは脳みそがある訳? 考える為にあるのでしょう。違うの? 父さんはそこまで頭が働かない人じゃないって知っていたんだけど、私の見込み違いだったのかな」

「そそそそ、そうだ。そうだダドリー! お前の言うとおりこの頭は考える為にある! ダドリーは全く賢いなぁ! 何処の世界にもお前以上に賢い子はいまい!」


 いや待て。その発言可笑しい。どこの世界に親を前にして貶す子供が、賢いんだ?! 私が親だったら即座に殴ってるぞ、今の発言! とか思いつつ、私はバーノンぱぱにだけ対して攻撃姿勢はやめる気はない。だって、構うと反応がおーばー過ぎて面白いに尽きるから。


「そう、そう思うなら自分が息子に対して何が正しい事とかわかった? そんな返事が出来るならもうすでに考えはあるってことだよね。さあ、答え聞かせて。返答次第ではさっきの取り消しにもしてあげるから」

「おおおおう、勿論! 考えてあるとも! ダドリーは誕生日プレゼントを自室に運んでから中身を見るんだ。パパもそこで一緒に見てあげよう!」

「うん、取り消し無し。皆無」


 私は無表情で言い放って、また横になろ「ダドリィィィィィィイーーーー!! 何処でワシは間違えたんだあぁぁぁぁ!!」


 また彼は絶望の一色の表情で絶叫した。私はため息一つ落とし、


「なんで父さんも私の自室に居て中身を見なくてはいけないの? そこが余計。減点」

「減点?! 嫌いなのに、これ以上があるのか??!」

「父さん期待していたのに…。やっぱり、私の見込み違いだった。残念だね」

「おおおおおおううううぅうう、わしのダドリー!! どうか、嫌いにならないでおくれぇぇぇぇえ!!」

「だったら、この半分の山を一分以内に自室に運んで。そしたら、嫌いならないよ。(多分ね)無理なら別に「よしッ!! ダドリー、パパの時間をきっちり計るんだ!! こんなの三十秒で運べるぞ!!」

「父さんの希望に答えて三十秒きっかりね。追加、少しでも贈り物に傷つけたら、だいッ嫌いってことで。開始」


 この後、バーノンぱぱが原作では見たことのない疾さで私の自室に運び切るのだった。けど、一秒を切ったので、結局はその巨体を隅にうずくませるのだけど。


▼〇▼〇▼


 電話から戻ってきたペチュニアままは面倒事が増えたという顔をしながら、「フィッグさん脚を折ってしまって、ハリーを預かれられないそうなんですって」と報告。

 フィッグさんとは、ふた筋向こうに住んでいる今まで飼っていた猫の写真を見せてくれる変わったおばあさんだ。実の正体は魔法が使えない魔女さんだけど。ハリーは毎年私の誕生日になるとそのおばあさん宅に預けられるのだ。

 彼にとってこの朗報は心踊っていることだろう。いつもこのおばあさんには、ウンザリしていたようだから。


「そんな訳だからハリーも動物園に連れて行くわ」


 私が言う事もなく一人で勝手に決める。異論はないわね。と私へと視線をやるペチュニアまま。

 勿論、異論はない。元々連れて行く気満々だった。下心は、蛇のしーんが見たいから。


「ハリーはいけ好かないけど、毎年一人にしていたのだから母さんの意見に賛成。父さんも異論挟まないよね」


 横たわっていたそふぁから身を起こし、今度はバーノンぱぱに問いかけた。バーノンぱぱはハリーを睨み付けるが、


「お前の誕生日だ。元よりペチュニアやお前が賛同ならわしは口を挟まん」


 フンッと不機嫌そうに鼻を鳴らし、バーノンぱぱは車のえんじんを掛けて温めにりびんぐから出て行く。


「良かったな、ハリー」

「え……うん」


 ハリーはバーノンさんが怒鳴り散らすことがなかったことに、戸惑いつつ微かに喜んでいた。

 ペチュニアままが言い出した事にバーノンぱぱは大概口を挟まない。

 かかあ天下で尻に敷かれている伯父さんとハリーを思われているが、バーノンぱぱは意外にペチュニアままの意見を尊重しているから、口を挟まないだけだ。

 どうして原作と違う軟化した人になったのだろうと疑問に思うが、ペチュニアまま自身変わっているからそうなのかもとなんとか納得している。けど、これには昔から違和感を抱いて仕方なかった。

 私はやっぱり昔から引っ掛かりがある違和感を抱えながら、荷物を取りに自室へと足を向けた。


▼〇▼〇▼


 部屋に戻ると一度も袖を通したことの無い上着を一着手にし、ぺん立てから普通よりちょっとだけ大きめのしゃーぷぺんしるを二、三本取り出す。一本のしゃーぷぺんしるの持ち手を掴んで、引き抜く。中の細い刃がぎらりと光った。刃こぼれしてないか確認して、腰につけたしょるだーばっくにしまう。

 とはいえ、『しゃーぷぺんしる』の形をした極小ないふの中身をさらけ出すのは、最終手段。

 前の私の『所有物』に比べたら、頼りなさ全開な代物だけど無いよりましだ。これを持っていくのは、習慣。私自身何かないと落ち着かないのだ。


 これ所持しないと落ち着かないとか言っている時点で、中二病以上に現実的にヤバイ人だと自覚はあるんだけど―――生前習慣にして生活していただけに未だにこの癖が抜け出せない。

 敗戦し軍事権限自体放棄させられて久しい平和な日本に生まれた癖にね。

 でも、その平和な日本にそぐわず、うちの田舎は鎌倉時代より平安時代以前からの旧家ばかりの閉鎖的地区のせいか、我が家には古くから伝わる刀などがあり、所持をしていた。

 銃刀法違反だろと言われるだろうが、そこはちゃんと国に申請して許可を得ていたので家に置くことが許されていたのだ。

 勿論、その危ない物を自分の懐に持って外に出る事は法的に違反であり、逮捕されても当たり前な常識くらい持ち合わせてはいる。

 けど、それでも私は持ち運び歩いていた。

 そうじゃないと、───自分が危ない。

『自分の命が狙われる』という危ないではなく、───私自身が危険人物だった。

 咄嗟に何かあった時、周りにある物を無暗に目をつけて使い、命まで取ってしまわぬように制限をかける為の、所持だった。


 それくらい、私自身が、歪んでいた。


 平和な日本に生まれた癖に、初めから社会のれーるから外れてしまったどうしようもない、異物だった。

 幸い、まだ命の尊さを辛うじてわかっていた異物の私には、ある種の暗示による制限が与えられた。

 それが、私の我が家に代々からあった物の『それ』。

 誕生日ぷれぜんとに混ざっていた、『それ』。

 じゃけっとの内側ぽけっとにしまった『それ』を取り出して机の上に置き、見下ろした。

 もうばっくにしまったないふを使わなくてもいいかもしれない。


 そう思いながら引き出しに『それ』を投げ入れ、できるだけ意識しないように自室を出ていった。


▼〇▼〇▼


 上着を持って階段を降りると、ハリーが自分の寝起きする物置に上体を突っ込んで何かを探していた。なにしてんだろ……。


「おい」

 ガンッ

「うわっイダぁっ」


 背後から声を掛けられたことに驚いたのか、ハリーは頭を上げて物置の天井に頭をぶつけた。

 そして、ガサっガサっと謎の音を立てながら這い出てくる。


「もう車に乗り込まないと置いていかれるぞ」


 そう声を掛けるとハリーは片手に紙袋を持ちながら、頭をさする。


「いやうん、まあそうなんだけど………財布が」

「なんで財布が要るんだ?」

「だって、好きなジェラード食べたいじゃん」

「……お前虫歯になったばかりで母さんに禁止食らって財布回収されたのにまだあったのかよ」

「フッ、何かあった時のために別口で貯めていたんだよ」


 ハリーは斜に構えてかっこ良く言う。

 影に隠れてわざわざ貯めたお金をじぇらーどに使うなんて勿体無いと考えないんだろうか? 本人が貯めたお金だから何に使おうが自由だが、ペチュニアさんにまた回収されるだけだろう。

「あっこれ。誕生日でしょ?」と思い出したついでと手にしていた紙袋を渡される。

『ガサっガサっ』と音がしたのはこれだったか。

 とりあえず軽く礼を言って受け取り、こちらもついでに上着を渡す。


「僕に上着?」

「それ友人にやったんだけど、趣味じゃないって突き返されたんだ。私もこれ要らないからハリーにやる」

「ダドリーも要らないって……僕は物置か。まあ一応ありがとう。で、その『友人』って、変わった格好したあの口の悪い……子のこと?」


 ハリーが口の端をかなり引き攣らせながらあの『友人』のことを口にして投げ掛けてくる。

 私は口角を上げ、


「さあ、……どうだろうな」


 嫌味ったらしく答えて、背を向けそのまま玄関を出て行った。


▼〇▼〇▼


 別口で貯めたお金をじぇらーどに使おうと財布につめてこっそり持って車に乗り込もうとしたハリー。その途中バーノンさんがハリーの首根っこを掴んで持ち上げ、


「言っておくがな、変な事をしてみろ。ちょっとでもだ。そしたらクリスマスまでずっと物置に閉じ込めてやるっ」

「ぼ、僕は、何もしませんよ。ほんとーにしませんっ! 苦しいから離してくださいっ」


 ハリーをいびることはしっかり忘れない。ハリーは宙ぶらりんに関わらず、介すことなく言い返す。

 相変わらず、ハリーが嫌いでハリーに厳しい態度(というよりあからさまないびり)を取る人だよ。

 私は嫌いじゃなくて、ハリーの存在自体苛立たしいだけど。


「はいはいはーい、お二方そこまでー」


 と、割って入って無意味な脅しを止めさせる。

 バーノンぱぱははっとした様子で私に気づき、冷水にでも浴びたように顔をして、ハリーを放した。


「こ、これは、ハリーが車で粗相をしないように「そう。それはどうも。でも講釈垂れる時間があるなら動物園に早く行った方がいいよ」


 バーノンぱぱは私に促され、ハリーをひと睨みすると、ダンダンと機嫌悪く足を踏み鳴らしながら車に乗り込んだ。

 ケホケホと咳き込むハリーを押しやりながら、さっさと乗り込む。

 早く喋る蛇が見たいからだ。

2015/07/07


2 / 2

著作者の他の作品

※201807月載せていた個人サイトから作品を移動。【禁書】上条(女)成代『空の...

※201807月載せていた個人サイトから移動。【巫女幻誘炎灯編】/綱吉(女)成代...