じわり、と

miotsukushi
@aramashigoto

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雲間が揺れて、それは陰影のようで、心のさざ波のようだった。


じわり、と


「藤倉先生、野球部の第4顧問もお願いします。」

そう管理職から言われたのは前年度末だ。野球部が急に強くなったことにより顧問が1人では足りないということになった。

現実、1人では無理なので仕方なく増やす方向で話は進んだが、まさか第4までとは、と瑠希も正直、驚いた。

「でも私、(弱小極小の)文芸部の顧問なのですが?」

「いやいや、もう第4といったら欠席遅刻確認くらいですから。」

轟雷蔵という外部の監督に、教員の顧問4人態勢なんて、薬師の野球部も良い扱いを得るようになったものだ。

決勝戦に出るくらいなのだから、当然といえば当然か。仕方なく承諾しながら瑠希は現状を理解した。

別に生徒のために頑張るのは嫌なことではない。むしろ、好きだ。だが、野球部だけは別問題だ。


真田俊平(2年、17歳)


↑これが在籍している。これは大きな問題だ。薬師1のモテ男。この男の行く所、常に黄色い声が上がる。

幸いにも真田の所属のクラスの授業を担当をしていないので、そんなに接点はないが、あれだけの人気だ。

知りたくなくても情報が入ってくる。「色男に関わるとロクな事はない」多分、そんな気がしている。

「藤倉先生、いいなぁ。野球部の顧問なんて。真田先輩の近くにいられるなんて。」

(そんなワケないでしょ!?とはさすがに言いにくい)

1年生には「素敵で恰好良い真田先輩」の近くにいられるだけで「いいなぁ」になるようだ。その言葉に苦笑いだ。

「そうね、真田先輩は恰好良いものね。皆も先輩のこと、好きなのね。」

廊下を歩きながら、提出物などを持ってくれている科の係りの女子2人は目がまるでお姫様のようだ。

瑠希の言葉に頬を桃色に染めて、頷く姿はなるほど大変可愛らしいものだ。思わずこちらも笑顔になってしまう。

「お、可愛い1年生が俺の噂をしている。」

(出たな、色男)

「さ、真田先輩!」

「1年生にも人気あるなんて、俺って凄くないですか?藤倉先生。」

女子が持っている提出物の塊をひょいひょいとまとめて、「俺が持っていってあげるよ」と声を掛けるとさらにバラ色に染まる。

「・・・ご親切にどうも。さ、貴女たちはお昼まだでしょ?教室に戻ってお弁当を食べなさい。」

「真田先輩、有難うございます。」

ぺこりと頭を下げて、廊下を走り去る。「真田先輩、超恰好よくない?」「お話しちゃった!」弾んだ声も聞こえてくる。

「・・・。」

真田を無視して研究室に戻ろうとすると、真田は傍に寄って来て、先程とは少し違った笑顔を浮かべている。その笑顔をちらっと見ながら

「何?真田君。」

「藤倉先生って俺に対して冷たいですよね~。さっき、1年に見せてた、あの笑顔、俺にも見せてよ。」

これだ。この真田俊平という男は瑠希をすぐにからかうのだ。苦手意識が初めからあったのを見透かされて、いつもこれだ。

なるべくその「苦手意識」がばれないようにしていても駄目なものは駄目で、特に聡い真田にはすぐバレてしまうのだから最悪だ。

「真田君、有難う。もうここで大丈夫です。」

「いやいや、中まで運びますよ?藤倉先生。」

有無を言わさない笑顔で研究室の中まで入り込むとどういう訳か研究室には誰もいない。

「扉を閉めないで、真田君。ここに置いて下さい。有難う。助かりました。」

研究室に生徒と2人きりなど、大変危険だ。扉を閉めるな、と指示をして、何も置かれていない机を指さすと、真田は面白そうに笑う。

結構な冊数の問題集をぽんと置くと、その上に手を置いて、にやっと笑った。

「先生、今日の部活遅れます。」

「理由は?」

「病院で検査です。これの。」

そう言いながら自分の左足を指さした。薬師のウィークポイント、エースの故障だ。野球部にとって何よりも最優先事項だ。

真田の病院関係の遅刻は何を置いても許可するように、というお達しなので「はい、分かりました」と簡単に答えた。

「で、どの位かかるの?」

「1時間くらいっすかねぇ。」

「じゃあ2時間の遅刻ね。伝えておきます。」

月に2回くらいはこうやって病院の検査で遅れるという連絡がある。何も言いに来なくても他の誰かに連絡すればいいだけの話だ。

エースの多少の「ルール違反」なんて誰も気にする者はいないし、何より真田の人徳(信じられないが)はかなりの威力がある。

「一緒に来ます?」

「行きません。1人で行って下さい。子どもじゃないんだから。」

ちぇ~と言いながら、少し机に寄り掛かる。瑠希はそんな真田を無視して、自分の椅子に座って、授業準備をする。

真田は出て行くふりも見せない。ちらっとその横顔を盗み見ると、なるほど確かに整った顔をしている。

「いいなぁ、1年は。先生が授業に出てくれて。俺、先生だったらもっと成績よくなってると思うな~。」

「成績が悪いのは自分の不勉強のせい、で。教師のせいじゃありません、あしからず。」

「あ~、藤倉先生が冷たい。ねぇ、俺の想いに気づきません?先生に構って欲しい、男の子心。」

正直なところ、真田のこういった類の発言に困っている。モテるのは知っているが特定の彼女はいない。

当初は「野球に夢中なのか?」とも思っていたが、どうやら違うようで、本気で好きな相手がいるらしい、という噂だった。

そんな噂があっても真田の人気は衰え知らずで、こんな色男に本気で思われている女子生徒とはどんな子なのか。

教員の中でも秘かに話題になっていたほどだ。轟監督は知っているようで「高嶺の花だな~」とからかっていた。

それを聞いて、真田は自信満々な顔をして

「そうでもないっすよ。俺、近々落とせるような気はしてるんすよ。」

と答えて、また轟に「うちのエース様は自信満々だねぇ、オイ」とじゃれ合っているのを見た。その時の笑顔は高校生そのものだった。

瑠希は、あの笑顔ならそんなに毛嫌いせずに済むのに、とぼんやり思う程の自然な、彼らしい、そんな笑顔だった。


その真田俊平が予定時間を過ぎてもグランドに現れない。


「真田の奴、ちゃんと帰ってきてんのか?」

独り言のような轟の言葉に、連絡を受けグランドにいた瑠希は答えた。

「病院に確認したら20分程前には帰った、という話だったのですけど・・・。」

「先生、悪ぃんだけど、探してきてくんねぇか?どっかでサボってんだろうからよ。」


え~・・・。


とは言えないので。

「分かりました。私、今日は特別教室の確認当番なのでついでに校舎内を探してみますね。」

放課後の誰もいない校舎、たまにいる生徒に「気を付けて帰りなさいよ」と声を掛けながら、最後の図書室に到達する。

まさか「真田君を知らない?」と声を掛けるわけにもいかず、ここにきて真田はやはり校舎の外にいるのではないか、と思った。

誰もいない図書室に入り、奥にある書庫に足を踏み入れると、無造作に投げ出された足が見える。

「・・・ここにいたか。」

確認するまでもない、この位置から足が見えるということは長さだ。あんなに長い足を持った生徒はそんなにいない。嫌な予感だけはしていた。

正直、瑠希自身が真田と関わりを持つのを極端に嫌うのは、とにかく真田に何もかも丸裸にされるのではないかという危惧からだ。

体育会系のくせに(と言うと怒られるかもしれないが)妙に穏やかで博識の真田はそれだけでも十分魅力的だ。

面と向かって対峙しようものなら、瞬く間に敗戦してしまうに違いない。教員2年目、まだ24歳。真田は7つも下だが怖くて仕方がない。

この男を相手にするには手駒も経験も全く足りていない自覚があった。書庫に勝手に入り込んで、書架に身体を預けて眠ってしまっている。

「真田君。」

小さく呼ぶと、長い睫が少し動いて、すぐに覚醒した。眠りが浅いのか、高校生らしからぬ寝覚めの良さだ。

「遅刻予定の2時間を大幅に超えていて、監督が探していますよ。」

「先生が俺を探してくれたんだ。」

「たまたま。特別教室の確認当番だから。」

「トクベツキョウシツ ノ カクニントウバン。」

面白そうに単語を切って復唱している真田の足は投げ出されたままだ。何か悪い事でも言われたのだろうか、触れてはいけない。

膝をついて真田の様子を注意深く見ている。

「足、まだ長く投げちゃダメだって言われました。」

真田の足はテーピングだらけだ。春の大会で故障してから、別メニューをこなしながら、様子を見ている。

「病院の先生のおっしゃることはきちんと守らないと。」

歯を食いしばって、闘志剥き出しで投げる真田の姿はさながら阿修羅のようだと思った。

「俺、落ち込んでるんですけど。・・・他に何か言う事、ないんですか?」

「ない。」

「何にも?全く?」

少し呆れたように真田が言うので、瑠希は真田の前に座り込んだ。

「・・・ないっていうか。何も言えないの、真田君には。」

事実だった。あまり楽観的な気休めのようなことは言わない主義だ。現実主義とは違うけれど、飾った言葉は好きではない。

「俺に本気で好きな女がいるって話、聞きました?」

「聞きました。」

「それ、藤倉先生なんだって言ったら、どうします?」

「それは真実じゃないんだろうから、スルーします。」

とりとめもない話をする真田は薄暗い書庫でどのような表情をしているのか。下向き加減の顔、大人びた表情は憂いに満ちていたらいいと思った。

それでも声ははっきりと聞こえて、「ひでぇな」とごちる真田の言葉は聞こえてくる。

「気の迷いとでも?」

「まぁ、そんなところ。10代の気の迷い。」

一刀両断に「気の迷い」なんて言われてはさすがの真田もいつものちゃらい、失礼、基、皆に人気の様子でにこにこするはずもない。

よしんばここで「何と酷い事を言う教師だ!」と瑠希のことを眼中から外してはくれないだろうか、と思った。

そう、気の迷いだ。

「先生は優しくないっていう優しさ持ってますもんね。無愛想にしてたって分かっちゃいますよ。」

ほら、これだ。真田はこうくるのだ。何もかも見透かしたような顔をして、全く困った高校生だ。

「知ったかぶりするのも10代の顕著な特徴です。さ、すっとぼけた事を言っていないで、グランドに行きましょう。」

そう言って、話の方向を反らそうとしても、真田が視線を反らさない。「気の迷い」という言葉が出た辺りから見つめられたままだ。

真田のこういうところが苦手なのだ。人の痛みとかそういう物にやたら敏感で、上手に立ち回る、この17歳を見ていられない。

どんなに冷たくあしらっても、女子生徒に囲まれていても、ここに存在していないような感覚がある。何かを希求するように立ちすくむ。

何かを求めているのはよくある話しだが、それを自分に向けられても困る、瑠希は感情丸出しが苦手だ。目標が駄々洩れも苦手だ。

そこまで思考して、ここに座り込んでいても真田が動き出すはずはない。扉まで戻って「早く!」と急かすしかない。

立ち上がって、そのまま立ち去ろうとしたら、大きな、それでいて随分温度の高い手に掴まれた。

「!」

驚いて声も出ないまま、思わず瑠希は真田を見た。真田は瑠希の手を掴み、目を閉じて、自分の額をくっ付けた。

「先生の手、冷たいですね。」

「いい加減にしなさい、真田君。やっていい事と、だめな事があります。」

「別に押し倒したわけじゃなし。具合の悪そうな女子の額には手を当ててたじゃないですか。」

それと一緒ですよ、と呟いて、真田は息を長く吐いた。溜息とは違う、身体の中の悪い、黒いものを吐き出すような息だった。

「・・・具合が悪いの?だったら早退しますか?」

「早退って時間じゃないですよ、すでに。・・・お願い、もうちょっとだけ。」

こんな真田は実は何度か見た事があった。別メニューをしている真田の様子を見に行った時に下を向いた真田の顔からは汗がしたたり落ちていた。

汗なのだろうか、と用心深く見ても、それを涙と断定する事はなかった。じっと目を閉じて、悔しそうに口元を歪めている姿。

意識して深く息を吐いたり、吸ったり。何かが零れてしまうのをじっと我慢するように。悔しさか、プライドか。その姿は痛々しくも思えた。


いくらエースで女子生徒にモテモテでも、ただの17歳だ。


「藤倉先生、何も言わないから、好きです。」

「それ、褒められてるのかしらね。」

「告白です。」

「そう、じゃあ、聞かなかった事にします。」

「男子高校生の純情を!ひでぇ女だなぁ。」


真田俊平はまるで雲だ。

太陽の光を遮る程、厚くなったり。雨を降らせたり、優しく日差しを遮ったり。

自身はあるかないかのような、風に吹かれて流れていく、その過程で様々な陰影を見せる。その姿は一瞬だ。


何をしても言っても、こうなると無駄だ。真田が飽きるまで勝手にさせておくしかない。いつも「勝手に」させているではないか。

そう思いながらも瑠希は、真田のこれからの活躍、というか、幸福を思った。この男を近い将来、心の底から愛してくれる女の子。

そんな相手が登場して、この不安定な男の状態を正常に戻せばいいと思った。手を取り合って、同じペースで歩いていける人。

「私は何も言わないんだけど。」

ふと口から思わず言葉が出てしまう。

「それでも、何か言うっていうのなら。真田君が幸せになって欲しいと、そう思います。」

いい終わると真田の瑠希の手を握る力が少し強くなった。落ち着いたのか、当初の額の熱さは少し収まったようだった。

「・・・学校の先生ってそういう属性なんですか?」

「そういう属性って?」

「自分の幸せは後回し、みたいな。」

思わず真田の方を見ると、強い視線とぶつかった。

「そうね。少なくとも自分の事よりは生徒の事、ね。それで余力があれば自分の事も考えたいところですね。」

「模範解答。」

揶揄する真田の手から逃れようと手を動かすと、思ったより簡単に手の拘束が解かれた。

「それに後回しって事でもないの。生徒の幸せは私たちの幸せなので。」

そう言うと、ふんわりと瑠希は微笑んだ。真田は思わず驚いてしまった。自分に微笑んだ事など今まで皆無だった。

(やべぇ、もう1回・・・)などと思っていたら、すぐにいつもの無愛想な顔に戻ってしまう。

「さぼり癖が再来ってところ?いい加減にしてグランドに戻りなさい。」

いつものお決まりの「突き放しの台詞」だ。あぁ、つまらない、真田は思った。もう1度、もう1度でもあの笑顔を見られたら。

きっと自分はその瑠希の言うところの「幸せ」というヤツにすぐになれるのに、と思った。真田が立ち上がるのを待つでもなく。

そのままスタスタと図書館の入口まで行ってしまう。仕方なく立ち上がって、扉の方へ歩く。外へ出ると鍵を閉める大きな音が響く。

何も言わずに瑠希は真田の前を歩く。こんな無言の時間が苦痛ではないのだから、やはり特別だ。真田は確信した。

「努力は報われるんすかねぇ。」

何気なく呟いた言葉に瑠希はふと立ち止まって、振り返った。

「多少は報われて欲しいものね。真田君も、私も。」

努力は報われると宣言しないといけない場面でも、この教師は虚言を言わない。不器用なのだ。誠実に言葉を紡ぐ。やはり心地よい。

「そうでもしないと今、この瞬間も馬鹿みたいだしね。」

少しおかしそうに言うその姿は、やはり「大人の女」で真田の知らない7年間がある事を無言で伝えてくる。

この女性は「教師」だ。自分を特別に見てはいない。どちらかと言うと(滅多にない事だが)少し面倒臭いと思っている。

こんな事を考える事自体、真田にとっては初体験だ。「面倒だと思われる」そんな事はなかったし、これからも瑠希以外にないといい。

それぐらい「特別な存在」になりたいと思ったし、真田自身にとってもなって欲しいと願った。

「俺の夢は藤倉先生のこと、幸せにすることですよ。甲子園より現実的な夢だと思いません?」

するりと簡単に言うと、少し振り返った顔はいつになく興味のなさそうな顔だった。

「何を言っても無駄なのよ、真田君。だって。」


私の将来は私だけが構築していくもので。


「今はパートナーを募集中ではないの。」

その言葉は随分、冷たく淋しく真田の耳に届いた。拒否とかそういう事でもなく、ただ、ぼんやりとした響きだった。

自分に言い聞かせるように紡いだ言葉は真田の心にじわっと広がる染みのように思えた。ただ、色は黒ではなかった。

桃色でもバラ色でもないが、うっすらと明るい色のようにも思えた。多少の希望の光。

「じゃあ、募集中になったら、すぐに声かけて下さい。」

「・・・今生はないかもね。」

「来世でもいいです。俺、生まれ変わりとか信じてるんで。」

それは意外、と言わんばかりの視線を投げかけられ、真田は笑った。

「その時は、俺と先生は同じ高校がいいなぁ。先生はマネージャーで、一緒に甲子園に行くんです。」

「真田君はまた野球をするのね?」


真田俊平はすっきりと晴れ渡った青空に浮かぶ、大きな雲だ。

あまりにも近く、大きく、それでいて手に触れられない。


「それもいいかもしれません。」

「エースと女子マネは恋に落ちるものですよ、先生。」

小さな背中はくすくすと小さく笑うたびに少し揺れていた。まるで心地よい風に吹かれる小さな花のようだった。

真田は何だか気分がよくなってきていた。いつ怪我が治るのか、治らないのか。真っ暗とまではいかないが薄暗い空間だった。

しかし、心地よい花の香りに導かれていく先は明るい場所だと思った。


END


「真田、お前好きな女ぐらいいんのか?」

轟監督の質問はいつも唐突だ。キャッチボールをしながら真田は轟の方を見ずに答えた。

「いますよ、好きな女くらい。」

「お、いいねぇ。お前、えらいモテるらしいじゃねぇか。そんなお前が一途に想ってんのか?」

白球は思いのほか早く、強くなっていく。向こうが捕れなくて「っおわ!」と言って球を追う。「悪ぃ!」と謝る。

戻ってくる間、真田は轟の方を見て、笑った。

「国語の藤倉瑠希先生。俺、あの人が好きなんですよ。足、綺麗でしょ?」

「藤倉?・・・あぁ、あの先生か。少し無愛想な。」

「男限定で、ね。女子にはそれは麗しい笑顔で接してるんですよ。」

バッティング練習!誰ともなく叫ぶと、真田は轟の横に座って、タオルで汗を拭った。

「いくつ上になる?」

「7つですかね。」

「年上好みかぁ。いかにも、って感じだな。」

「いかにも、って何すか。いかにも、って。」


お前は同級生や年下には甘えねぇからな、ってことだよ!甘え方知らず。


全く轟は自分を、いや自分達を良く見ている。真田はその言葉を思い出して、苦笑いを浮かべた。甘え方知らずは彼女の方だ。

愛され知らず、でも、溢れる慈愛は教員気質なのか、自分達生徒には本当に深い。

あんなに慈愛に満ちた優しい人は幸福になったらいいと思った。


その幸福を自分が与える機会を得たら、その時は自分も幸福になれると、少し前を歩く彼女の小さな背中にそう思ったのだ。


2017.5.1

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