BL「武藤さんの朝」本編完結

しおり*創作アカ
@ss0usaku

おまけ

(1)

どんどん気温が高くなり、外出が辛くなってきたこの時期。店に入ってくる客はみんな汗だくだ。それはわたしもおなじ。朝でも日差しはひどく強い。


「おはようございます」


いつもと変わらぬあいさつ。いつもとかわらぬ、冷たい手。

この気温のなかでも、ハヤカワ君の手はひんやりしている。


それは外に出てからも同じだ。夕方、仕事終わりにハヤカワ君と待ち合わせをして、家に招く。蒸し暑い空気にまとわりつかれながら歩く途中、ふと触れる手はやはり冷たかった。

思い立って、ぎゅっとハヤカワ君の手を握る。


「ハヤカワ君の手は、いつでも冷たいんだな」

「あ、冷え症だからかもしれません」


驚いた顔をするハヤカワ君。それから、徐々に顔が赤くなった。


「顔が赤い」


からかってみる。

するとハヤカワ君はますます顔を赤くし、照れているのかじんわり汗をかき始めた。


「恥ずかしすぎて暑いです」

「しかし手は冷たいままだ。不思議だな」

「あの、手を離してはもらえませんか」

「冷たくて気持ちがいいから、このままでいたいのだが」


そう伝えると、ハヤカワ君はうつむいてしまった。だが、気を害しているわけではないことは、真っ赤になった耳を見れば分かる。とても愛らしい。


「それじゃあ、どうぞ……」


ぽそぽそと伝えられる許可に、とても嬉しくなった。

そのまま手を握ったまま帰宅する。そしてハヤカワ君にいれてもらったコーヒーを飲み、語らう。この後訪れるであろう時間に、そして今、繋がれている手に、幸せを感じるのであった。