美術館の悪魔

卯月姫@夏花
@hanahanasikihim

憧れた朝

泣かないで


スノー



スノーが十字架を強く握る。恐れでガタガタ震えている。もう終わらせなければいけない。二人のいちばん幸せだった時間を。


「…………リザ……」

「…ん?」

「たのしかったね」

「うん」

「…朝、こわいね」

「うん」

「………っ……」

「ありがとう、ごめんねスノー」


スノーの手を取り自分の胸に導く。音がない胸に十字架を近づける。もうすぐ死ぬのだ、〝もう一度〟。

背負わせてしまうけど、刻み付けてしまうけど、罪の意識でもいい。少しだけ、ほんの少しだけ、たまにでも、あんなことがあったなぁ…と思い出しては忘れてほしい。…こんな贅沢な願望、スノーには絶対に言えないなぁ。




「導いて、白い悪魔よ」





「ああぁあぁあ!!!!」




スノーが叫び、十字架が刺さり、血が噴き出す。まだ血が出るんだなぁ、〝僕〟。返り血がスノーにかかる。

足に力が入らない。倒れてしまう…と崩れ落ちた僕をスノーが抱き締めた。ぎゅうっときつく。きつく。


「触ら…ない…で…スノー…汚…れる…か…ら…」


無言でスノーは僕を抱き締め続ける。睫毛に光る涙。赤く染まる白い髪。

汚れた血にまみれても、それでもなお美しい。




スノー



僕の白雪




今、この瞬間は




僕だけのものだ。






「あたたかいね、スノー」

著作者の他の作品

ひとつひとつ飾るのは、生まれず消えた昨日の話。きらきら、きらきら、煌めく...

人の姿を借りる『鏡人形』。「心を貸して」と唱えるだけで、僕は誰にだって為れる。