美術館の悪魔

卯月姫@夏花
@hanahanasikihim

優しい嘘

「だ、だから…できる…だけ…あなたを助けようと思った…万が一の時のために名前は…教えられなかった…けど…」

「本当の名前さえ教えなければ、〝悪しき者〟には魂まで手出しはできないからね…じゃあそのブーツに付いてる銀の鈴も〝魔よけ〟かい?」

「っ違う!!あなたを遠ざけたかったわけじゃない…!!私は「うん、わかってる」


そうだよな


「わかってる」

こんなおとぎ話の言い伝えだと思っていたものが本当に効くなんて知らなかった。

実際に僕は意識がない時も、スノーには手出ししていないようだし。


…こわかっただろうな

いつ自分を襲うかもわからないような、悪魔のそばで

毎晩毎晩、優しいきみは

きっと苦しみながら助けてくれてたんだろう?


「ごめんね、スノー」


また嘘をつかせてしまったね。

さっき話を聞いて思い出したよ。

風の噂で聞いてね、「あの髪の白い悪魔の子が最近この辺りをよくうろついてる」と。

それで僕も同じように、探してみようと思ったのさ。そうしたらなんと僕が住み着いてる場所にきみがいた!!目があっただけだったけどすごく嬉しくて、僕はきみに贈り物をしてみようと考えた。それで少し遠くまで出てみたんだけど、帰りが遅くなってしまって、そんな時、通り魔と鉢合わせしてしまったんだよ。

逃げ切れずに刺されてしまったんだけど、僕は死ぬ直前、いちばん強く願ったんだ。

『あの子とよく話もできないまま、死ぬのなんかごめんだ』ってね。

だからね、僕がよみがえったのは僕のせいなんだよ。僕は自分の未練のせいで悪魔となってよみがえってしまった。きみは悪魔の魔法なんか試してない。僕の死体を見つけて、何とかしてくれようとしてたけど、結局どうにも出来なかったんだろう?だからあの時あんなに驚いていたんだ。何もしていないのにどうして、って。

きみは言ってたね。自分を責めたままだと天国にはいけないと。ちゃんと連れていってもらえるようにこの絵を見ているのだと。


全部、僕のためだったんだね。

生きてる間、誰も気に留めなかった僕のせめてもの幸せを、願っていてくれたんだね。


僕は微笑んでいた。不思議と冷静で穏やかな気持ちだった。1度死ぬと人間は少し落ち着くみたいだ。



「どうしたの?なんで笑って…」

「スノー」

「…なぁに?」



「悪魔の殺し方、知ってる?」

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永い時を生き、それでも夢見たのは、誰かのそばにいること。

人の姿を借りる『鏡人形』。「心を貸して」と唱えるだけで、僕は誰にだって為れる。