美術館の悪魔

卯月姫@夏花
@hanahanasikihim

雪の独白

黒と白だけが私の色だった。

色覚異常に、『赤い』目と白い髪を持つ少女は、人々に嫌われ、悪魔と呼ばれるらしかった。

「あなたは悪魔なんかじゃないわ」といつも優しく話してくれる、美しい母の髪の色も知らなかった。

「いい子だ」といつも優しく頭を撫でてくれる父の手の色も、いつも着ている服の色も知らなかった。


人々に忌み嫌われ、友達らしい友達もいなかった私は雪の日に、一人で遊ぼうと使用人達に黙って出かけて、道に迷ってしまったの。その時にあなたに出会った。初めて見た時はそれは驚いたわ。だって私が今まで見た何よりも色があったんですもの。髪も目も黒い人なんて初めて見たから。

あなたが優しく手を引いてくれた日から、どうにもあなたが気になった。聞いてみるとどうやら巷では有名な孤児らしかった。

もう一度会いたいって何度も思っていたけどどこに住んでいるかもわからなかったし、次に会っても覚えていてくれるかどうか不安でちゃんと話せるかどうか自信もなかったから、中々行動出来なかった。

それから何年も経ってしまって、もうこれは偶然を狙うしかない。と思って頻繁に出かけるようになった。そしてある日美術館で絵を見ていたら、あなたが現れた!

初めて神様に感謝したわ。偶然をありがとうって。いえ、きっと偶然じゃなくて運命だったのね。

あの場所でああやってもう一度出会うこと。



あなたが死んでしまうこと。



ここからは、さっき話した通り。




「僕が…気になってたの…?」

「…うん」

「…僕はきみが思っているような人間じゃないよ。汚いこともたくさんした。まともな人生も送ってきてない。親の愛情だって知らないよ」

「だから…だよ」

「…?」


「美しいと、思った。生きることに必死なその姿が。どんなに泥で汚れても、この世の何よりも、綺麗だと思ったの。」


綺麗?

この僕が?



いや、そんなわけない。




…あぁそうか。



きっと



「…きっと僕らは〝正反対の似た者同士〟だったんだね。」




色を知らない真紅の目から、透明な涙が一粒こぼれた。

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