美術館の悪魔

卯月姫@花苺
@hanahanasikihim

一度目の恋

僕が孤児院を脱け出したばかりの頃。

まだ寝る場所もなく街をふらついていた僕は、凍えそうになっていた。

「…はぁ…さむいなぁ…」

しんしんと、降り積もる雪は

こんな僕にも美しく見えて。


その時だった。

あの子はその時も、真っ黒な服と帽子を被って、なぜかきょろきょろしながら街を歩いていた。


(…うずうず)うん、仕方ない。

「ねぇ!どうした…の…」

言葉が続かなかった。

顔をあげた美しい少女は小声で言った。

「…おうち…」

「…」眩しくて、倒れそうになるのを抑える。泣きそうな女の子を前にして男がそんなことしてられない。


「おうちのまわりにあるもの、いってみて!」



僕が手を引いて歩いたあの雪の日を

あの子はきっと覚えてないだろうな。




だから僕は今でも声をかけない。

いや、〝かけられない〟。

僕は『2度目』でもあの子からすれば『初対面』かもしれないのに。こんなに嬉しい気持ちを出せずに、どうやって平静を装えと言うんだ。



………え?……

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永い時を生き、それでも夢見たのは、誰かのそばにいること。