話を紡いで

けいいち
@keiichi87

「───こうしてマウイは、私達の航海に必要な風を吹かせてくれたのでした」

マウイがモアナ達の新しい島の様子を見にやってきた時だ。島の一角に小さな子供達を集めてモアナが何かやっていると思えば、

(うそだろ!オレの話じゃないか!)

なんと、慣れた口調でマウイの伝説を話していたのだ。マウイは大きな鷹から、小さな虫の姿になると、小屋の中にはいり屋根の柱にのぼって見下ろした。

「さあ今日のお話はここでお終い。明日はなんの話がいい?」

子供達にモアナが優しく問いかけると、

「ココナッツを作った話がいい!あれかっこいいもん!」

「あたしは太陽を捕まえた話がいい」

「ねえ、他の話ってある?まだ聞いてない話!」

皆マウイの伝説を知っているのだろう、次々に好きな話を持ち上げる。

(まあオレの伝説はどれもかっこいいからな)

マウイが虫の姿のまま自慢気にニンマリとする。

可愛らしい主張を続ける子供達にモアナは微笑みながら制した。

「じゃあまだしてない話をしましょう。私とマウイがテフィティの心を返しにいく途中の話。そうね、彼が私を洞窟に閉じ込めちゃった話をまずしましょうか」

なにそれ!子供達は口々に詳細を聞こうとするが「それは明日のお楽しみ」と軽くかわされてしぶしぶ小屋の外へ出ていく。

マウイはへの字に口を曲げて、半透明の薄い羽を一つ震わせた。


「マウイ、いるんでしょう?」

ギクッとする。子供たちを見送り、1人になったモアナは小屋の中で、外に出ながらマウイの名を呼んだ。

「なんで分かったんだ?来てるって」

 外に出ようとした彼女の後ろで、人の姿になったマウイが言う。モアナはさして驚きもせずに振り返った。

「大きな鳥の羽の音と、影がこっちにくるのが見えたもの。ここら辺じゃそんな鳥いないし。それにアナタの話をしていたから、なんとなく、アナタかなって」

 聞いてたんでしょ?眉を上げてしてやったりのモアナに、マウイは顔をしかめた。

「その、するのか?『洞窟に閉じこめた話』?」

「簡単に私たちの旅の話をするだけよ」

 ほっとマウイが息を吐く。閉じ込めた件について、今ではすっかり反省しているのだ。

「びっくりしたでしょ」

「ほんとにな!…ああやって、子供たちに話してるんだな」

「そうよ。あなたの話をね」

 マウイがモアナの隣に立って外を覗く。遠くの広場で、先ほど話を聞いていた子供たちが、大きな葉っぱを釣り針に見立てて「マウイごっこ」をして遊んでいた。

 マウイは、1000年で語られなくなっていた自分の英雄伝説が、ここからまた人々の間に広がっていくのだと実感する。

「あなたが満足するような話ができているか、分からないけど」

 少し自信なさげに言われるが、とんでもない。

「誰よりもうまく語ってくれるって、分かるさ」

マウイの心の内に暖かいものが広がる。

この友人の口から自分の伝説が語られることが、何よりも誇らしく感じた。

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