LIVRE HISTOIRE ―帝国と始まりの7冊―

真乃@ウパ澤スタンプ販売中!
@nabemano

プロローグ.『本の帝国』




 昔々、それはそれは大きな文明が栄えていました。

 しかし、その文明は禁忌を犯し、一夜にして滅びてしまいました。

 なんとか生き残った人々は、過去の災厄が再び訪れる事を恐れました。

 それから数千年の時が経ち、荒れ果てた世界で、人々は小さな国を作った。

 そして、それぞれの国の城壁の中でひっそりと暮らすのでした。

 



 文明滅亡後、わりと早い段階でこの帝国は建国された。

 かつて熱帯雨林と呼ばれた樹海が、一瞬で荒野へと変わった場所。

 赤土の広がる大地に帝国は堅牢な城壁を構えている。

 帝国は数ある国の中でも大きな方だと言われている。





「国とは、民によって成り立つ」


 過去の偉人達はそう説いたが、この国は違った。 

 この帝国では、民よりも『本』が重要視される。

 極端な話をすれば、家が火事になれば、真っ先に救出されるのは『本』だ。

 人の救助はその後。最悪の場合、「貴重な本を焚書の危機に晒した」と住人が逮捕される。

 そんな理不尽極まりない法まである。

 収集、蔵書された『本』と分類される文字媒体は、国民の何十倍の数にも及ぶと言われている。帝国自体もどれだけの本があるのか、把握しきれていないのでは? と影で囁かれている。

 この国を訪れた他国の商人や旅人は、口々に同じ事を言った。


「この国は人が本に支配されている。本当におかしな国だ」


 この帝国は、本に支配された国家なのだ。

 故に皮肉も込めて、人々はこの国を『本の帝国』と呼ぶ。