炉辺談話

RAY/kaede
@growler_ray

28話目『新たなる1日の終わり』

拠点のドアが開く。

「ただいまー」

「おかえりなさい…またいたの?」

戻ってきた寛人さんは肩にシャベルを担いでいた、それだけならいいのだが血もついていた、’’いた’’とはやはりヤツらのことなのだろうか、そしてそれに血がついているということは葬ってきたということか。

だがバリケードを作っているはずなのにいたとはどういう事だろう、普段の動きから見てもヤツらに乗り越える程の頭とか身体機能が残ってるとは考え難い、どこかに抜け穴でも存在するのか。

「ところで晩飯まだ?」

「時計を確認してくださいな」

時刻は18時を指していた、食事には少しばかり早い時間か?最もここではどうかわかったものでは無いが。

ここに加わって1日も経ってない、まだわからないことしかない、新天地の不安はこうも大きく感じれるものなのか、知った顔はいてもあくまで生徒と教師、その場にいるだけで信頼できて安心できる存在ではない、別にほかの人達を信用してない訳では無いがそれでも不安は残る、まだ向こうはどこかで私を受け入れていないなと思うと尚更。

「戻りました」

今度は葡萄さんが帰ってきた、ということは片桐先生は一番最後か。

「先生もそろそろ帰ってくる頃だろうし私はご飯の支度をしておくわね」

「なら俺も手伝うよ」

「つまみ食いは無しよ」

「…ハイ」

そう言いながら拠点のドアを開けてどこかへと去っていった、付近に調理室でもあるのかな。

それからしばらく、2人きりになった空間の沈黙を破って葡萄さんが口を開く。

「嫁花さん、先ほどの覗きの件ですが…」

「あれならもう気にしてませんよ」

「そうですか、それならよかった」


「…実はあの時のあいつの行動は欲望だけではなかったんです」

「…え?」

「あなたという貴重な生存者を迎え入れられて僕らはもちろん嬉しかった、ただその後検査に紅葉が行った、そんな当然のことでほんの僅かな疑惑が浮かんだんです」

「なんですか」

「もしかしたら紅葉は嘘をつくかもしれない、です」

「…なぜ、です」

「この中で紅葉は文字通り紅一点でした、そんな中で新しく自分と同じ女性を迎え入れることが出来た、だから情けを見せてしまうのかもしれないと」

「………」

「でも杞憂でした、ああ見えて紅葉は感情が身体に出やすいんです、嘘をついてればすぐ分かるような、そしてあの言葉に嘘偽りは感じられなかった、それで充分なんですよ」

「そう…ですか…」

「長く話してしまいましたがつまり、僕達はあなたを信用してますし、仲間だと思っています。出会って半日程の仲でしょうが、心に留めてくれると幸いです」

「…ありがとうございます」


そうだったのか、覗きは疑惑を取り払うためだったのか、それもそうだ、世の中自分で見たもの以外信じないのが普通だ、まして疑いを持ってしまった人の言うことなんて信じられるわけがない、この疑惑を取り払う方法は真実を見せること以外ない…でも、またあんな思いをすることになるのか…。

でも言ってしまえば減るものでは無い、減るとしてもそれは私の精神だけだしね、よし、寛人さんが戻ってきたら切り出すか。

そんな事を頭に置きながら再び中庭を除く、時間ではないとはいえヤツらの数は一向に減る様子はない、夕日に照らされた姿は気のせいか放課後に友達と談笑しているかのような印象さえ受けてしまう、やっぱりヤツらにもまだ意識は…いや、まさかね。

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