炉辺談話

RAY/kaede
@growler_ray

10話目『発熱』

ジリリリリリリリリリリリリリ!

「ん……ぅ……」

…結構久しぶりに目覚まし時計のこのレトロな音を聞いた気がする、ほんの数日上に行かなかっただけでも懐かしく感じるものなんだな、変な感じ。

下へ降りると世都乃がいた、そういえば昨日泊めたのを忘れてた、こいつはよく眠れただろうか…あれ、気のせいかなんだか呼吸が荒いような気がする、暑かったかな?それとも寒かったか、何にせよ心配だ。

「う……はぁ…はぁ…」

思いのほか激しいな、っておでこが熱い、熱を出したか…。

こいつが熱でダウンするところなんて初めて見た、学校では皆勤賞も取ってたしむしろ熱を出すところを想像すらできなかったというところかな、いやそれどころじゃない、看病は流石に経験外だ、どうしたものか真面目に困る。

「熱を出すなんて情けない」

とりあえずあれか、食事はお粥とすりりんごと、身体は冷ましてあげてそばについてあげて…ああもう、私は親か?親なのか?そもそも同い年を看護するなんてこの歳じゃあ異常だろうに、ぼやきが止まらない、でも口には出せない、出せばまたこいつは謝り倒してくる、ただでさえ病人の身体にそんな精神的負荷は絶対にかけられない、ほんっとに世話が焼けるんだから。

ひとまず朝ごはんはお粥…いやダメだ、今からじゃどうあがいても絶対朝ごはんの時間には間に合わない、もうこうなったら看病食って調べて有り合わせで作るしかない。

「看病食…看病食と、そうかこれがあったか」

うどんにネギに…一部足りないがもう我慢してもらうしかない、買いに行ってる時間もないしそもそもスーパー空いてないし、こんな気分で食事を作ることになるなんて夢にも思わなかった、看病って大変なんだな。

「大丈夫?座れる?」

「うん…だいじょぶ…」

「皿持つのも辛いだろうしほら口開けて」

「へ…?でもそれって…」

うん、わかってる、かなり恥ずかしいことをしてることはわかってる、でもお互い耐えなきゃ、私は親のように親のように親の気分で、親が子に接するように食べさせなきゃ。

「早く」

「あ…」

「えい」

「んぐ!?ん…」

「不味かったら言って」

「ううん全然!それどころかなんか…懐かしいというか」

「食べたことがある…か、それはよかった」

「でもあとは1人で食べるよ…剣華ちゃんも自分のを」

「世都乃が食べ終わったら私も食べる、だから気にしないで」

自分優先の私が他人を優先するなんて、やっぱり世都乃と一緒にいるとどうにも調子が狂ってくる、これが普通なんだとは思うけどそれでもなんだか狂ってるように思える。

その後は無事に食べ終えたし私も食べ終えて片付けをした、ただそこから飯の仕込みにいつもの洗濯物取り込みに畳みに足元がおぼつかないあいつの看病にと誇張おおありだが普段の500倍ぐらい忙しい、どうして私の家に私しかいない時に限って熱を出すかねこいつ、嫌がらせなのか?もう疲れた、でもいくら文句を言ったって仕事が減るわけじゃなしか…はぁ、今すぐここで赤ん坊のようにゴロゴロしながら疲れたと泣き叫びたい。

一通り終えたら腕も足も棒のようだ、普段の運動不足がここに来て祟ったか、来年からは体力もつけなきゃダメかなと本格的に思えてくる、でもこんな時なんてもう来ないだろうしやっぱりいらないか、不要なものを身につけるほど私に余裕は無いしなうん、そうしよう、体力はいらない。

えーと後は何をすべきだ、頭の濡れタオルを変えて他になんだ…あ、服が汗でぐしょ濡れだ、このままじゃマズイし早いとこ着替えを持ってこよう、あと身体も拭かないと、拭くのは何がいいんだ?濡れた方がいいのか乾いた方がいいのか、何もかも初めてで行き当たりばったりだ、悪化してもどうか私を恨まないでくれ。

「脱いで」

「な…なんで?」

「身体を拭くから、早く」

「でも…」

「でも?」

「恥ずかし…」

「いいから脱げ!」

半ば強引に脱がせた、イカン、疲れてるのかなんかせっかちになってきてる。

でも今更そんなこと気にしてる場合じゃないし我慢してくれ、私もめんどくさいことやってるんだから理解しろとは言わんが従ってね。

「ひっ!」

「濡れタオルにしたけど…大丈夫?」

「大丈夫…」

「辛いなら」

「大丈夫、気持ちいいよ…」

「そ、それならよかった」

順調に身体も拭けている、他人の身体を拭くなんてこれも初めてだ、力加減もわからないし、急ごしらえの崩れやすい泥団子を触るように触っていくしかない、崩れないように慎重に。

「はい下も」

「わかった……」

顔が真っ赤だ、なぜ、なぜ女同士でここまでなるんだ?確かにこれが男と女だったら半端じゃなくいかがわしい絵面になった事だろう、下手な恋愛漫画かラブコメか、はたまた薄い本のワンシーンだ、だが私達は女だ、どう転んでもそんな風には映らないはずなのに。

「終わったよ」

「あ…うん…ありがとう」

「別に気にしないでいい、あと着替えはそこにあるから」

脱いだ服を持つとなんだか重い、こんなに汗をかいてたのか、そう思うと少々辛そうだなとか思えてきてしまう、多分この熱の原因はあの噛み傷から入った物だろうし、こいつは人の良さから来る天性の不運体質でも持っているのかな、実際あの時だって私みたいなやつを庇うことになったんだし、とことんツイてないなこいつは。

「zzz………」

また寝たか、その間にこちらはこちらで昼の準備を進めておかないとな、やれやれ。

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