星の使命

りあ (。・ω・。o[ にゃんころもち ]o@9/2HMマルシェ仙台い06★9/24仙コミ?
@raral_R

BH_3話

 「アルシュ、午前中はニックスにボコボコにされたんだって?女の子に何してんだかアイツは。だから恋人が出来ないんだ」

 ハスキーな女性の声がアルシュエイフに向けられる。

 深茶色のロングヘアを無造作にまとめた女性がアルシュの左脇腹をド突く。

 「…ッ!?」

 負傷箇所へクリティカルヒットし声も出せないまま片膝をつく。

 「アンタの事だから、痛くても無理してるんだろうと思ってね。休むのも手だ。無茶すると更に怪我するからね」

 女性は手を差し伸べ苦笑する。

 「クロウ…ッ…」

 アルシュエイフは言い返すことも出来ず、同郷の姉のように慕っているクロウの手を掴むと立ち上がる。

 クロウはアルシュエイフ、ニックス、リベルトを始めとする前衛部隊ではなく数人で協力し強力な魔法を使う後衛部隊のため、訓練ではこういった全体訓練の時しか会わない。

 全体訓練…つまりは前衛部隊と後衛部隊の連携訓練だ。

 「さぁ、始まるよ。アルシュ、無理しないように」

 背中をバシッと叩いて送り出すクロウに、アルシュエイフは敵わないと思いつつ駆け足で持ち場に向かった。




 「ノクト〜、こんなとこ帰ろうよ〜」

 そろりそろり、とプロンプトは獣道を登っていく。

 「第一、オレ虫苦手なんだって〜…ってノクト?」

 振り向くと先程まで後ろに居たはずの親友の姿が無い。

 数秒後、山にプロンプトの悲鳴がこだました。


 「…何やってんだよ、ノクト」

 稽古中にスマートフォンで呼び出されたグラディオラスは目の前の王子にため息をつく。

 王子でもなければ稽古を中断するなどありえない。

 しかもよくよく聞いてみると、冒険のつもりで入った山で学校の友人とはぐれたらしい。

 ーーーそもそも何故山に…冒険…ガキかよ…

 そんな垂れごとはグッと飲み込み、山の地図を見る。

 「山道を歩いていたはずなんだけど、少し俺がスマホ見てたら居なくなってたんだよ」

 どの辺ではぐれたのかを確認するとグラディオラスはノクティスを連れて山道へ向かう。

 山と言えど、王都インソムニアの整備された人工の山でモンスターもシガイも出ない。

 危険は無い、ということと、責任は取れ、ということでノクティスは再度山に入る事となった。

 

 「…った〜。…うわ、泥だらけ。最悪」

 プロンプトは今自分が滑り降りてきた崖を見上げる。

 傾斜はキツく、高さもあるものの下に積もった落ち葉のクッションで数分気絶をしていたようだが、怪我はせずに済んだ。

 尻ポケットに入れていたスマートフォンを確認すると、滑り落ちる時に当たりどころが悪かったのか電源が入らない。

 「ウソ…」

 崖を自力で登るのは無理。連絡手段も地図も無い。

 ノクティスが見つけてくれるのを待つしかなくなったプロンプトはため息をつくと辺りを見渡す。

 太陽はまだ頭上にあるものの木の葉で陽の光が遮られ辺りは薄暗い。

 手入れされていない区域のようだった。

 モンスターは居ないとはいえ、野生動物は居る。

 熊や猪といった危険なものは居ない『はず』であるものの、幽霊の類も苦手なプロンプトは寒さに腕をさする。

 

 「えぇ〜、ウソでしょ…」

 何時間たったか。雨がぽつぽつと勢いを増しながら地上に降り注ぐ。

 「ひっ!?」

 近くでがさっと音がした。

 その音にプロンプトは文字通り飛び上がり驚く。

 「このままでは風邪をひく。王にお借りしている魔法を使うのは気が引けるが仕方あるまい。このままでは王子も風邪をひきかねる」

 音がした所に黒い服を纏った小柄な人がいた。

 声からして少女のようだ。

 仮面をしているため、顔は見えないがなにやら呟いている。

 見るからに怪しい服装の人にプロンプトは距離を取る。

 「え、えぇ〜と、どちら様…デショウカ…!?」

 仮面の人はズカズカとプロンプトに近寄ると手を掴み、もう片方の手でナイフを抜き放つ。

 殺されるッ!!

 咄嗟にプロンプトは目を閉じる。

 不思議な感覚がプロンプトを包む。

 風を感じたような気がしていた。

 「…、あれ?」

 いつまでも襲われない痛みに目を開けると整備された山道に座り込んでいた。

 「プロンプトー!」

 プロンプトの耳に親友の声が届く。

 「どこいってたんだよ!!」

 親友からの熱いドつきを受けながら先ほどの仮面の人がいない事に気づく。

 「あれ?ねぇ、ノクト、黒い仮面の人見なかった?」

 きょろきょろと辺りを見渡すプロンプトの様子にノクティスは 頭でも打ったか? と眉間にシワを寄せる。

 「そんなやつ、居なかったぜ」

 「お前ら!! いつまでそこにいるつもりだぁ!? 山の天気は変わりやすいんだ、さっさと出るぞ!」

 乱暴、であるものの優しさを含んだグラディオラスの声が響く。

 誰かと会話していたのだろう。

 スマートフォン片手にグラディオラスは2人を待っている。

 「なぁ、グラディオも見なかったよな。黒い仮面のヤツなんて」

 プロンプトの腕をつかみ立たせながらノクティスはグラディオラスに問う。

 「あー…俺達は見てねぇけど居たのは確かだ。別部隊から来てた王子の護衛だ」

 俺の護衛でありながら友人も助けてくれるなんて気が利くな。

 ノクティスはその言葉を「へぇ」の一言に詰め込む。

 「よ、良かった、あれ幽霊とか殺人犯じゃなかったんだね」

 王族付きである限り謀反者など手にかけている可能性は無いと言いきれない。

 グラディオラスは曖昧な笑みを浮かべ、男子高校生2人と共に帰路につく。



 『クレイラス様、お手数をおかけいたしました』

 3人を木の上から見守りながら黒い仮面の人物は個人的な理由で王国の重鎮を使ってしまったことを詫びる。

 『なに、愚息に連絡を取るだけだ。それより、そこまでしてなにか重要な情報を得たのか』

 現『王の盾』である武人の老いてもなお鋭い声がイヤホンから流れる。

 『…次の戦闘時に確認が取れた後に正式に報告いたします。王子の護衛隊の調査ではプロンプト・アージェンタムは王子の友人として問題ない、との報告でしたが警戒を緩めないでください』

 わかった、と短い返事が返ってくると通信は切れる。


 プロンプトが崖から滑り落ちた際、安否確認のため黒い仮面の人物は傍に駆け寄っていた。

 そこでプロンプトのズレたリストバンドの下の皮膚に刻まれた数字の羅列を見つける。

 ーーーあれは、あの数字の形式は機械兵に掘られている数字と同じ…

 黒い仮面の人物は山を下っていくプロンプトを品定めするように鋭く睨みつけた。

 ーーー王子になにかあってはならない。何を犠牲にしても王子だけは守らなくてはならない。


 黒い仮面の人物はスッと姿を消した。

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