collaboration

はじまり

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大きなヤマを乗り越え、報告書の作成に追われる時間。


そんな捜査企画課の内情を見計らったように、その人はやってきた。


「事件片付いたんでしょ? 飲み行こ!」


「渡部…」


勝手知ったる様子でノックもなく入ってくるのは、捜査企画課課長の関と同期の外務省勤務の渡部だ。


ことあるごとにここへと顔を出すから、もはや厚労省の人間であるかのように接されていた。


「いいですね」


「まぁ、そのためには泉の報告書提出待ちではあるんですが」


「ちょ、ちょっと待ってください…!」


捜査企画課の紅一点、この中では1番ペーペーの泉玲が、必死になってパソコンへと向かっていた。


他の先輩達はあらかた自分の分の書類作成を済ませていて。


それがさらに玲を焦らせていた。


「泉、よければ俺が手伝おう。だから…」


「何も提供しませんよ!」


玲が背後から協力を申し出た由井に対して強めに言い返す。


あっさりと振られた由井は解せない、という顔でなにやらぶつくさと文句を言い放っていたが。


玲にとってはそれどころではない。


必死にモニターとにらめっこをしてパソコン横においた資料と照らし合わせながら、追い込みをかけていく。


「夏目、この間に今日の場所決めておいてくれ」


「あ、それならちょっと気になることろあるんで、そこにしません?」


先輩二人が今日の飲み会の場所について話しているのを、玲は振り返りたい気持ちを抑えてキーボードを鬼のように叩いた。


「宴会担当に任せておけば大丈夫そうですね」


「夏目くんのチョイスは外れはないもんね~」


「こら、あまり泉を焦らせるような話はやめておけ」


話が進む事に夏目が気になっているという店のことが心を占めていって集中出来なくなる。


その玲の小さな心情の変化を、関は簡単に見破っていた。


「やっぱり俺が手伝おう!」


「もう少しで出来ますので結構です!」


「なに!?」


助け舟、と思って一歩踏み出した由井はまたしてもすぐさま却下を受ける。


手伝うことを口実に特異体質の玲の髪の毛1本でももらおうという魂胆だったろうが、すげなくかわされて由井は不満そうに眉を顰めていた。


「いや、なんで孝太郎が不満そうなんだ」


由井の同期である青山が至極当然のことをツッコんでも、白衣の彼はため息しかつかなかった。


「よし、できたー!」


玲はすぐさま報告書をプリントアウトして、上司である関のもとへと向かう。


差し出した報告書をざっと見ただけだが、関は満足そうに笑った。


「うん、大丈夫」


「良かった…」


「細かい所は後でチェックしておくよ。お疲れ様」


優しい笑みと共に労われると、頑張ったかいがあるというもの。


捜査やら報告書作成の疲れなど一気に吹き飛んで、この後の飲み会の方へと思考は流れていく。


「じゃあ行くか」


「今日のお店はどこ?」


宴会担当、と揶揄されることがある夏目だが、彼の店選びに関しては外れはない。


元々御曹司であることから高い店ばかりチョイスするのかと思えばそうでもなく。


高い安いに関わらず、店の雰囲気や、食事の美味さ、お酒の種類の豊富さなど、どれをとっても誰もが満足する店を選んでくれる。


「ちょっと麻布の方に気になる店があるんですよ」


「へぇー入ったことはないの?」


「通りかかったことがあるくらいです。スポーツバーって看板はあるんですけど」


「スポーツ…ここの連中には程遠い言葉だな」


「だから、お前が言うな」


玲の支度が整うのを待って、全員でオフィスを出る。


ある程度はリサーチしておく夏目が、入ったことはないが気になるというからには、何かがあるのだろう、と全員疑いもしない。


これから行く店についてあーだこーだと話しながら、ぞろぞろと歩き出す。


頭の上で麻布の話題になっていたけれども。


玲は美味しい焼酎がありますように…と飲む気満々でそのことばかりを考えていた。


























その頃、麻布のスポーツバー・Long Islandでは。


「相変わらず客いねーな」


いつもの常連たちがカウンターを囲んでの飲み会を開催していた。


「ホントに大丈夫なの、くにさん」


「いいんだって。ここは趣味でやってる店だしな~」


あっけらかんとオーナーである久仁彦がそういうものだから、集まった全員はそれ以上突っ込む気にもならない。


「大事な癒しの場なんだから、無くさないようにしてくれよ?」


「分かってるって~。じゃないとお前ら加奈に会えなくなるもんな~」


「そう! それは由々しき問題だからね、くにさん!」


「力いっぱい肯定してんじゃねーよ!」


「じゃあ大和はいいのかい!? 加奈ちゃんに会える機会が少なくなっても!」


白シャツでワイングラスを傾けながら、佐伯がやたら力強く言い放つ。


いつもはツッコミどころ満載でイラッとすることも多いのだが、彼の言葉にその場の全員がうっと声に詰まった。


「何か呼んだ?」


奥のキッチンから、あつあつのグラタン皿を盛った加奈が首を傾げながら出てくる。


「内緒」


「え、そうなの?」


笑顔で全てを隠した漣がそう言うと、単純な加奈は深く追及することもなくその話題を終わらせた。


話の本筋は聞こえていなかったにしろ、自分の名前が出たのだからもうちょっと警戒と言わないまでも疑ってもいいものの、加奈はそういうことはしない。


危なっかしいところはあるが、優しく明るい彼女を慕い、ここに来ている連中は示し合わせたようにグラスに口をつけた。


そして、加奈が出してきてくれたシーフードがたくさん入ったミートグラタンを奪い合うように食していく。


その食べっぷりに嬉しさもあるのだが。


「今日はもうお客さん来ないかな」


「かもな~。表のプレート、もうclosedかけてもいいんじゃないか」


「分かった。やってくる」


元々客数もそう多くないLI。


いつも通り常連だけが飲み食いをしている光景に加奈が暗にプレートの話を持ち出すと、久仁彦は否定もせずにOKサインを出した。


加奈がゆっくりとドアの方へと向かった時だった。


ドアノブへと手を伸ばす前に、カラン、とベルが鳴り響いた。


それは、来客を知らせるドアベル。


ひょっこりと顔を出した眼鏡の男性が中を伺うようにして覗いてくる。


「すいません、まだ大丈夫ですか?」


加奈と目が合い、彼女がここの店員であると見た彼が尋ねてくる。


「あ、は、はい!」


どうぞ、と中へと促すと、ぞろぞろと長身男子たちが店内へと入ってくる。


珍しい団体客。


常連さんたちの相手とはまた違う。


加奈は仲の良い人たち向けの少し緩んだ顔を引き締めて、席へと案内する。


振り返ってカウンターを見ると、緩すぎる雰囲気を持っていた久仁彦も、客前ではしゃんとして「いらっしゃいませ」と笑顔を浮かべた。


メニュー表とお冷を持つためにカウンターに1度戻った加奈が、久仁彦にひっそりと告げる。


「忙しくなりそうだね」


「こいつらの相手だけでいっぱいいっぱいなんだけどな~」


「もう、しっかりしてよ」


「分かってるって。じゃあ加奈、頼んだ」


「はーい!」


テキパキと動き出す加奈。


その姿を常連たちが愛しげに見つめる。


客がいるとなればこっちの相手をするだけにはいかないのは分かっているから、元気な背中を見送るのだが。


入ってきた団体客に全員が目を顰めた。


明らかに、どう見てもイケメン揃いだったから。


そこへ無防備に向かう加奈になんだかハラハラしてしまうのだが、彼女は一向に気にしていない様子。


それだけが救い、と全員が胸をなでおろしながらも。


ちらちらと加奈の様子を気にしてしまうのだった。









この時。


不穏な空気とは言わないまでも。


なにやらLI内におかしな空気が漂っていたのは確かだった。




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今大路×玲のお話。お題bot「きみが好きと言わなかった所為だよ」より

耀玲です付き合ってます