Convalescent -恢復期-(上)

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@tenkufuga

3.きみのキレイに気づいておくれ

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「ああ……やはりよくお似合いだ。想像していた以上です」

昇は手にしていた服をソファーに置くと涼子の全身をざっと検分し、顔を綻ばせる。

「あなたは貧相な幼児体系のそこらの女性とは違って、身長が高く骨格が良いせいでグラマーなのですから、日本人の体型に合わせた服装が似合うはずがないのですよ」

言って昇は涼子の肩に両手を置き、もう一度鏡の方に向かせる。

カシミヤのハイネックニットと、サスペンダーデザインのタイトなハイウエストスカートは、全体としては知的で落ち着いた印象を与えるにも関わらず、涼子の豊かな胸と、起伏に富んだウエストから腰のラインをぴったりと浮かび上がらせ、きちんと布で覆っている筈なのに、ちょっと目のやり場に困る程だ。

「とても、綺麗だ」

そして、いやらしい。

腰から尻にかけてのラインをゆっくりとなぞられながら耳元に吹き込まれて、涼子はぞくぞくと甘い痺れを腰に上らせる。

「これでもまだ、自分は醜いと仰るつもりですか」

不意に、昇が厳しい声になったせいで、涼子は振り返った。

その表情の真剣さに、涼子は知らず、息を呑む。

「誰も助けないで通り過ぎていくばかりの人波の中、困っている高齢者に一瞬の迷いもなく手を差し伸べられることは、美しさではないのですか」

「あれはだから、小さい頃に自分も困って……」

「わからない人ですね」

昇は少々苛々した様子で髪を掻き上げる。自分が困った経験があるからと言って、恥じらいや躊躇いも無く、即座に他人を助けられる人間が、一体どれ程いるだろう?

それだけではない。仕事でも理不尽な扱いを受け、露街では他人から容姿を蔑まれ、だからと言って、涼子はそれを嘆くでも無く、憎むでもなく、淡々と受け入れているのだ。それが彼女の強さでなくて、何なのだろう?

今も彼女は、ずっと自分を脅し、不本意に引っ張り回している、かつて強姦までしてくれた男に対して、無愛想ではあるが、無視するでも当たり散らすでも無く自然に会話に応じてくれている。それは、優しさではないのか?

「いい加減認めなさい。あなたは、美しい」

恐ろしく厳格な表情ではっきりとそう宣告されて、涼子はまた鏡の方を見遣る。

確かに、今の自分は―――醜い、といった程ではない。

普通の容姿だと、他人を不快にさせる程ではないと……自惚れても、いいのだろうか?

そもそも、と昇は言った。

「他の人間があなたをどう言おうと、そんな事はどうでもいいのです。あなたは俺のものなのですから、俺が美しいと思えばあなたは美しいんだ」

「酷い暴論だ」

涼子は苦笑する。

残りの服にも着替えて見せて下さいね、と言い置いて、昇は部屋を出て行った。


―――不思議な男だ。散々尊厳を踏み躙った行いをしておきながら、こうしていつの間にか涼子が捨て去っていた自尊心というものを、一々拾って押し付けてくる。


だが、不快では、無い。


だから涼子は、再び下着だけになると、ソファーから新たな服を手に取った。



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