或る遊園地

宇鷺 林檎
@RingoUsagi1020

003 *流血表現注意*

この小説は夢小説 (名前変換ができる小説) です。
キャラベルに登録してログインすると、登場人物の名前をお好きな名前に変更できます。

「メリーゴーラウンドって素敵だよね。」

「そうですね。」

 夜の暗闇に揺蕩うメリーゴーラウンドは、本当に幻想的だ。安全の為設けられた柵に囓りついて、無邪気な笑顔を見せる琴乃を、夢を視ているみたいな気分で僕はぼーっと見詰めていた。


「南瓜の馬車とかある辺り、これはシンデレラがモチーフなのかしらね?」

「…そのようですね。白馬もありますし。」

 ゆるりとした速度で優雅に廻り続ける其れを見つめながら、琴乃は或る一つの話を始めた。

「シンデレラって実は怖い、みたいな話、聞いたことない?…ほら、爪先を切り落としたとか、さ。」

「…そういえば、そんな話もありましたね。小耳に挟んだ事があります。」

「あ、矢っ張りやっぱり有名なんだね。…一つ、話したいんだけど、良い?」

「都市伝説の様なものでしょう?別に構いませんよ。」

 ありがと、と軽く礼を言い、琴乃は話し始めた。内容は下記の通りだ。


 シンデレラはたくさんの作家が同じようなものを書いていて、のグリムという作家も其れを書いたらしい。其れが先程の血腥ちなまぐさい内容のものだった。

 勿論、シンデレラは継母や継母の娘たちに虐められる。…が、決定的に違うのは、やられたままで終える、悲劇のヒロインの様な性格をしていないという点だった。

 例えば、王子の使者が持ってきた硝子の靴を履くあの場面。娘を何とか王子の妃にしようと躍起やっきになった母親に、シンデレラは刃物を片手に、こう提案する。

『お母様。

足が靴に入らないなら切れば宜しいのではありませんか?』

 母親は、それを鵜呑うのみにし、娘達の爪先や踵を切り落とす。然し、溢れる血に使者が気づかない訳がなく、娘達は結局妻にはなれなかった。


 このように影で暗躍し、人を騙し、最終的に彼女は偽りと血にまみれた幸せを手にした。


「…初め、この話を聞いたときはね?私は、幸せってこうまでして手に入れたいものなのかな、って思ったの。…でも、あんなに苦しめられてきたのが私なら、そんなこと言えるのかな、って悩んじゃった。」

「………。その人の立場に立って見なければ分からないですもんね。」

「ええ。」


 然う斯うそうこうしていると、メリーゴーラウンドは停止し、乗客がばらばらと降りてきた。


「…じゃあ、乗ろうか。ごめんね、嫌な話だったね?」

「いえ。中中楽しかったですよ。」

 琴乃と共に、南瓜の馬車を象った乗り物に乗る。少女みたいに無邪気な笑顔を浮かべている。真夏の太陽も向日葵も嫉妬の情を隠せなくなりそうなくらい、眩しい笑顔。


「憧れだったんだよね、こういうタイプの乗り物。いつか白馬の王子様が来るんだって本気で信じてた時があってね。

…でもね?間違いじゃなかったよ。」

 何時だったか。未だ彼女と仲が睦まじかったあの時、琴乃は言っていた気がする。


「本当にいたんだよ。白馬にこそ乗ってはいなかったけど、王子様みたいな人が。」

 記憶の中の琴乃の声と、目の前の琴乃の声が重なる。


「…初恋の人、でしたっけ。」

「そうだよ。」

 名前は聞いていなかったから、僕は知らない。…否、知りたくない。貴女の忘れられない、初恋の人など。


 …そうだった。僕は唯、その初恋の人の面影を忘れて、僕だけを見つめていてほしくて…。



1 / 2

著作者の他の作品

「架空OL日記」というテレビ番組に触発され、書くことを決めました。因みに、...

其の少女、忌み子につき。ひょんな事から大きな(?)事件に巻き込まれていく話。