扉ノ世界

狼崎 野良
@rusknora_so

Door.2 -世界ノ復讐-

「ルヴェンス!エルダ!クーダ!お前達よく無事に戻ってきた」

目を開けるとそこは扉の前

転送先にはクラスメイトと先生の皆がそこにいた。

「っ……戻ってこれたのか?」

いつもの知っている顔を見て安心したのかルヴェンスは緊張の糸が解れたのか腰を落とす。

「一難先生!クーダの意識が…!」

「何…?」

2-Aの担任一難一火(いちなんいっか)先生は鬼火の妖怪だ。

一難はクーダを寝かせ制服の中央にある穴に気づきブレザーを脱がす。

(これは……)

「エルダは保健の樹先生を呼んで来い。それ以外の者は教室に戻れ!」

「は、はい!」

「先生、俺も残る。クーダを置いて行ったのは俺様だ!」

「ッチ……腰を抜かすなよ」

もう抜かしかけてるけど、とルヴェンスはボケるがそんな言葉に耳も課さず一難は服を脱がす。

シャツ剥がすと、クーダの胸の中央には紫色の石が埋め込まれていた。

石はクーダの身体中に根を張るようにしっかりと張り付いているのだ。

「っ!!!」

「これが世界の意思の種だ。あれ程気をつけろと言ったのに――」

世界の意思の種――異世界ノ神が人間を我が物とする時に使う種のことだ。

授業で話には聞いたことがあったが、実際に授業で見かけたことは無かった。

今まで誰も異世界に囚われたことなど一度も無かったからだ。

「駆除する」

一難の体温が急上昇する。

辺りに炎が渦巻きメラメラと燃え上がっている。

一難はクーダの胸についた石に手を翳し(かざし)意識を集中させる。

ミシミシと音を立て石と根が徐々に剥がれていく。

「ぐっあ…ぁあ゛………っが」

「あと少しだ、我慢しろ……っ!」


もう少しで全てが剥がれる。


その一歩手前で突然、クーダの手が一難の手を払い除ける。

クーダは体勢を変え、先生とルヴェンスから一歩二歩と後ろに後ずさりする。


「ふ」

「クーダ…?」

「クッ…ククク…アハハハハハハハハ!!!この時を待ち侘びた!漸く!世界は神に復讐できる!!」

「ッチ…遅かったか」

「一難先生、それってどういう―」


「世界よ、今こそ目覚めの時。リングディストラクション!!!」

「なっ―!!」

クーダが両手を伸ばし辺りへ見たことのない魔法を放つ。

その魔法は世界を封じる「リング」を目掛け――リングを次々と破壊していった。


「世界に人類を……アースに絶望を!!!!」

「っ…!クーダ!!!やめろ!!!お前そんな事する奴じゃないだろ!!」

知人の姿に居てもたってもいられず、考えるよりも先に身体が先に動いていた。

ルヴェンスはクーダの元へ目掛けて翼を広げ飛ぶ。

「馬鹿!!止めろ!!!」

が、一難先生に首根っこを掴まれソレを制止させられてしまった。

「はっ…離せ!!クーダが…」

振り解こうとするが体格差の所為かジタバタしている子供にしか見えない。

「狂ノ世界が…何故、難易度★★★だと思う」

「え……?」


「狂人は何をするかわからないからだ」

ルヴェンスは再びクーダへと目線を移す。

彼はもはやルヴェンス達の知るクーダとは違った。


こうしている間にもクーダは不敵な笑みを浮かべリングを破壊する。

今まで見たことが無い姿だった。

ルヴェンスが必死に呼びかけてもその声は届かない。


「世界管理課だか知らないけどコレ(リング)があるから我々世界はアースへ手出しできない。そしてこれを破壊できるのは"人"のみ」

「クーダ…」

知人に名を呼ばれ、クーダは一瞬動きを止める。

知人を見ると不安な表情を浮かべるルヴェンスがそこにはいた。

その姿を確認したクーダは、満足げに言葉を放った。

「こうして俺を助け出してくれたことを感謝するよ…ルヴェンス」


「クウウウウウウウウウダアアアアアアアアアア」

「っ!!」


バキッ


一瞬の隙から、一難先生はクーダ目掛け炎の矢を飛ばした。

放った炎の矢はクーダの中心の石へ一直線へ飛んで行った。

石は矢から徐々にヒビが広がり

やがて砕け散った。


「………」

ドサッ

先程まで暴れていたクーダは糸が切れたかのようにその場に倒れた。

ほんとうに一瞬の、一瞬の出来事だった。

辺りには破壊されたリングが散らばり、土煙が舞っているが、徐々に静けさを取り戻していった。


「先生!なんで最初からこうしなかっ―」

ルヴェンスが先生の顔を見るとその表情はとても険しいものだった。

「こうしなければ、次々とリングが壊れていった」

「え…?」

「植物の性質と同じ。種を、花を、本体を。砕いても地中には根が宿っている」

「せ…先生?」

「アレを駆除するには本来根ごと引き剝がさねばならない…」

「ほ…ほら、クーダ…元に戻ったんじゃないのかよ」

「我々は、狂ノ世界に負けたんだ」

先生はただただ悔しそうな顔を浮かべ拳に力を籠める。

「…俺様馬鹿だから…わかんないよ……わかりやすく説明してくれよ」

「…」

先生はクーダを抱え立ち上がる。

「クーダ・ウォリスに埋められた種子は破壊した。しかし砕けた種子は体の中へ。そして根は再び花を咲かそうと力を蓄える。………俺はクーダ・ウォリスの奪還を諦めた。そう言っている」

「おい…じゃあクーダは」


「先生!!樹先生を連れてきました!」

「一難先生!これは」

「クーダ・ウォリスを寝かせてやってくれ」

「わかったわ!」

エルダの連れてきた樹先生。

彼女…いや、彼はこの学園の保険医だ。

扉ノ世界の先で傷ついた生徒を癒すのが主な仕事である。

因みに文章やセリフからわかる通り、オカマだ。


*保健室


「……」

クーダを保健室に寝かせると樹先生と一難先生はルヴェンス達とは少し離れた場所で話し始めた。

ルヴェンスとエルダはクーダの眠るベッドの横でただ黙って見ている事しかできなかった。

「ねえエルダちゃん。クーダ、どうなったと思う」

「…先生思い詰めた顔してたよね…そんなに酷い怪我だったの?」

「……」

エルダはあの光景を見ていない、あのクーダを見ていない。

あの暴走して手が付けらなかったクーダを

あの事を彼女に言うべきか否か考えていると言葉が詰まる。

「クーダは……」


「うっ………ここは…」

ルヴェンスが言葉を紡ごうとした時、クーダの意識が戻った。

ルヴェンスは思わずエルダを自分の後ろへと下げた。

先程の一変したクーダのままだったら危険だと判断したためだ。

「…クーダ?起きたか?」

「ルヴェンス…エルダ……2人揃って起こしに来るってことは…遅刻か俺!?」

「違う!!」

「馬鹿!心配したんだからね!」

起きてきたクーダは自分達の知るクーダと変わらずいつものクーダだった。

2人が怒っている理由もわからず困惑している。

「はぁー……俺様安心したよ」

「え??何が??…ってここ保健室じゃねえか」

「あ、クーダが起きたって先生呼んでくる!」

「あぁ」


「先生、クーダが目覚ましました」

「…そうか」

「じゃあちょっとエルダちゃんとルヴェンス君…教室に戻ってもらってもいいかしら?」

「え…はい、わかりました。クーダは…」

「大丈夫、回復したら一難先生が連れて行くわ」


教室に戻れと指示され2人は教室へと戻っていく。

クーダは伸びをしながら体を解しているとそこへ樹先生と一難先生がやってきた。

「…何でそんなに深刻そうな顔してるんだよ…」

「何も覚えてないか?」

「…いまいち……確か狂ノ世界に………………」

自分の覚えている記憶…

狂ノ世界でルヴェンスと逸れ、石碑を見つけ…

と順に記憶を追っていき徐々にあの時の事を思い出すと同時に顔が青ざめていった。

「…俺、変な石碑に……石が……」

しかし胸の辺りを探ってもあの時の石は存在しなかった。

「あれ、無い……」

「…一難先生」

「クーダ…謝って済むことではないのは確かだ」

「え?」

「お前の中の石は…取り除くことができなかった」

あの後の記憶が一切無いが、先生の表情からして何となくを悟った。


感情の世界の授業で必ず習う事がある。


『異世界は人を欲し、我が世界の住人にする為

アースの人間に種を植えてくる。

その種が開花すれば彼の者はアースの住人ではなくなる』と。


取り除くことができなかった。

種というのは恐らくあの時石碑から埋め込まれた紫色の石のことなのだろう。


「……死なないよな」

「死にはしない、だが―」

「ならいいさ」

「…お前は筆記の授業だけは良い。それならこの意味をわかっているだろう」


わかる。

分からないわけがない。

何度、この危険性を授業で言い聞かせられていたか。


「俺は狂ノ世界の住人になっちまうってことだろ。…何とか耐えるさ」


異世界ノ住人になると言うことは

世界に意志を乗っ取られ、終いには世界の意思と同調する人形と化す事を意味している。

悲ノ世界なら常に悲しむ人へ

喜ノ世界なら常に喜びに満ち溢れる人へ


狂ノ世界なら狂人へ―


しかし今はちゃんと自分の意思がある。そのことに今は安堵している。

だが、もしもこの意志が消えてしまったらと思うと―


「……それだけで事が済むのであれば問題は無いんだ―」


ガラッ

一難先生が何かを言いかけた直後

閉めていたはずの保健室の扉が開き、複数人の足音が聞こえた。

足音は徐々に近づきやがてクーダ達のいるカーテンが開かれた。

その人等はこの学園では本来見慣れない恰好をしている人達だ。


「クーダ・ウォリスというのはそちらの生徒か」

一難先生と樹先生はクーダの前に立ち、入ってきた人達を睨みつける。

「アースロイド…いったい何の用かしら」

アースロイド、そう呼ばれた彼らは

正真正銘アースロイドに属する組織の人間だ。


「クーダ・ウォリスを拘束しにきた。大人しく我々について来てもらおう」

「先生…これってどういう」

突然の出来事に困惑するクーダ。

「…クーダ・ウォリスは俺の生徒だ。まだ子供だぞ」

「一難一火……貴方ならご存じのハズだ。その場にいたのだから」

「……」

「一難先生…貴方こうなること…もしかしてわかって―」


「クーダ・ウォリス お前に死刑宣告が課せられた」

「………は?」


夕方日が消えそうになる時間帯

突然の死刑宣告にただただ唖然とするしかなかった。

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