雪月とシオン

1-8

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先生に着いてやってきた始業式の会場は、想像していたものとは少し違っていた。

そこらの学校の体育館よりもずっと大きいであろう木張りの床の体育館に、沢山のパイプ椅子が並べられていて、そこに大勢の生徒が座っていた。


私は担任の先生の隣の椅子に座り、今の場所から見えるだけの生徒を見た。

大半はやはり全然知らない、見たことのない人たちだった。

しかしその中に1人、何となく見覚えのある髪型と横顔が見えた。


――あれってもしかして……向日岳人、君……?


茶髪や黒髪の中でひと際目立つ、綺麗に染められた濃い赤紫色っぽい髪を綺麗に切りそろえている身長がやや低めの彼は、パイプ椅子に少しだるそうに座っていた。


私が彼から目を離せないでいると、視線に気づいたのか彼がこちらを気怠げに見た。

視線が合った私は軽く会釈をした。すると彼は少し眉間にシワを寄せて小さく首を傾げると、再び前を向いた。


――ポーカーフェイス鍛えてて良かったぁぁ……。


内心ホッとしていると、ステージに校長先生であろう人が上がった。その瞬間、空気が変わり、全員姿勢を正した。


――皆偉いな……ってこれが普通だよね、多分。


元いた世界の同級生たちを思い浮かべながら、私は校長先生の話を聞いていた。


〜〜〜


始業式が終わり、私は先生と共に教室に向かった。

元の世界では転入なんてしたことがなかったので、正直扉の前に立っている今とてもドキドキして緊張している。


小さく深呼吸をしていると、扉の向こうから入ってきなさい、という声が聞こえた。

静かに教室の扉を開けて中に1歩入ると、教室内の人の視線が一斉にこっちに向いた。それに少し狼狽えたが、何とか平常心を保つように努力しながら先生の隣に立った。


先生に名前を書いて自己紹介を、と言われたので後ろを向いて黒板に白いチョークで自分の名前を書いた。そして再び前を向くと、やはり大半の生徒が好奇心の宿った目で私を見つめてきていた。


「今日からこのクラスに転入した楪冬弥です。3年生という中途半端な時期からですが、宜しくお願いします」


そう言って軽く頭を下げると、クラスから拍手を送られた。


――転入って、こんな感じなのかな……なんか、凄い新鮮。


「それじゃあ、席は一番窓側の一番後ろだ」

「分かりました」


先生に言われた窓側一番後ろの席、通称夢小説にありがちな転入生席に座った。隣はどうやら宍戸君ではないみたいだったのでホッとした。


「それじゃあ、やることを終えたら自由時間にするから、楪に聞きたい事があるなら聞けよ」


そう言った先生はそのまま教室を出て行った。それを合図に教室の人間がわらわらと私の周りにやってきた。


――うわぁ……面倒くさい。


「楪君って、前はどこの中学に通ってたの?」

「都内の公立中学ですよ」

「前の中学では何かやってたのか?」

「そうですね、これと言ってやってはいなかったですよ」

「得意科目とかは~?」

「そうですね、それも特にと言ったものはありませんけど、好きな科目でしたら国語の現代文と漢字、それから時事とか好きですよ」


第一印象が大事なため、表情筋が笑顔の形のまま固まるんじゃないかと思う位笑顔で対応していると、次の時間の科目担当であろう先生がやって来た。


「席に着け―、始めるぞー」


その言葉を合図に、私の周りに居た生徒たちはぞろぞろと自席に着いた。


~~


今日は初日という事もあり、全ての授業がガイダンスで終わったため、予定時刻よりも早く終わった。私は担任に連れられて、学校の施設などの簡単なガイダンスを受けた後解放された。


ブレザーの内ポケットに忍ばせていた携帯で時間を確認すると、近くのスーパーの特売の時間の1時間前だった。

特売は戦争だ、手慣れた戦士である主婦たちの中に混ざって確実に目的の物を獲得するためには体力と瞬時の判断力などが試されるため、とても疲れる。


――世の中の主婦の皆さんは、凄いんだな……。尊敬です……。


なんて思いつつ、私は戦場である近所のスーパーへと向かった。