店員な先輩と俺の空腹の限界

とやせな@わくフェスIN武道館参戦予定
@toyasena

※中三赤也と高一ブン太



いつものように練習をしていつものように帰る途中。

いつもとは違うコンビニに入ってみた。

入った理由はなんとなく。

ただ、いつものコンビニは家の近くでそこまで我慢できなかっただけ。

自動ドアが開き、俺を中に入れてくれる。

それと同時に冷たい風が俺に当たる。

さすが、コンビニ。

冷房がききまくりだ。

そのまま飲料水コーナーで炭酸系のジュースを手に取り、菓子コーナーに向かう。

適当にスナック菓子を手に取りレジへ。


「いらっしゃいませー。」


少しだけやる気のない店員の声。

何だか聞いたことがある声だなと顔をあげると。

赤い髪の童顔少年のぱっちりした大きな目と視線が合ってしまった。

………………ってあれ?


「ま、丸井先輩?!」


そこにいたのは紛れもなく丸井ブン太先輩だった。

当の丸井先輩はと言うと、今にもげっと言いそうな顔をしていた。


「何でそんな顔するんスか…?」


思わずムッとなって訊ねる俺。


「いや………、まさか赤也が来るとは思わなくて…。」


「ここは俺の帰り道にあるコンビニっスよー?」


「まじで、知らなかったわ。」


少々落ち着きを取り戻した丸井先輩は、俺の少ない商品をてきぱき会計し始める。


「346円になります。」


「えっ、あ、はいっ。」


感動の再開とか思っていた俺は、丸井先輩の冷静な声の定型文で現実に引き戻された。

丸井先輩に500円を渡す。


「以上でよろしいですか?」


「あ、はい…。」


まるで知らない人のように対応される。

正直居心地が悪い。

せっかく会えたのに…と心の中で思うが、きっと先輩はそんなこと思ってもいないのだろう。

悲しいことだけど。

今だってお釣に一生懸命だし…。


「154円のお返しになります。」


「……ありがとうございます。」


今やすっかり下がってしまったテンションで、お釣とビニール袋を受け取る。


「…赤也、ちょっと悪いけど店の前で待ってろぃ。今日は8時上がりだから。」


「……っりょ、了解っス!!」


先輩から掛けられた言葉によって、下がりきったテンションは一気に上がった。

スキップでも踏みそうになりながら俺は店の外に出る。

多分顔はニヤけていたと思う。

店の前でジュースとスナック菓子を食い始めて、13分。


「赤也、お待たせー。」


先輩は制服姿で出てきた。


「全然大丈夫っスよー。……てか、先輩今日部活なかったんスか?」


俺は、ラケバではなく普通の通学鞄を持っている先輩にそう訪ねた。


「あぁー、今日は三者懇だからなかったぜ。」


あぁ、と納得する俺。

確か中学の方も、ついこの前三者懇が終わったばかりだった。


「それより…赤也、はいこれ。」


先輩は俺の目の高さ辺りに、ズイっとビニール袋を差し出す。


「え…?なんスか、これ。」


「何ってアイス。今日暑いし、丁度いいだろぃ?」


「あ、ありがとうございますっ!」


礼を言うと、俺は遠慮なくビニール袋からアイスを取り出す。


「丸井先輩っ、いただきますっ!」


「おう。よし、俺も食おっ!」


丸井先輩もアイスを取りだし、二人して食べ始める。


「めっちゃうまいっス!」


「そうだなっ!」


俺と先輩はアイスを食べ終え、ゴミを捨てた。


「よし、じゃあ行くか。」


「あ、はいっ。」


……………………ってドコに?

いつものノリで返事をしたけど、丸井先輩は一体どこに行くつもりなんだろうか。

俺がそんなことを考えている間に、丸井先輩はもう歩き始めていて、慌ててついて行きながら聞いてみる。


「え、と丸井先輩…?」


「んあ?」


「今からどこ行くんスか?」


「俺んち。」


「………………………はい?」


いきなり何言ってんだ、この人。

俺んちってまさか丸井先輩の家…?


「だから俺んち。せっかくだし、飯でも食ってけ。」


いきなりな提案。

丸井先輩らしいと言えば、らしいのだが。


「そんないきなり大丈夫なんスか?」


丸井先輩のところにはまだちっさい弟が二人もいるし、こんな遅い時間に行って迷惑にならないのかとか色々考えてみる。


「大丈夫、大丈夫。ほら三連休だからさ、今日の夜から家族みんなでばあちゃんち行ってるし。」


「あ、そうなんスか?」


もしかして、先輩一人で寂しくて俺よんだのかなぁーなんて密かに思ってしまった。


「むしろ、お前の方は大丈夫なの?」


「え…、あーはい。連絡してみます。」


まぁ、多分大丈夫だと思っていたが、一応親に連絡してみた。

案の定答えは『どーぞ』。

今日の夜飯はカレーだったから、『赤也の分の夕飯作ってあるのに』とか言われずにすんだ結果だ。

ついでに泊まることになるかもと伝えておいた。

何となく、最終的に泊まることになりそうだったからだ。

丸井先輩の名前を出したら、これも難なくOKをもらえた。


「大丈夫でしたよ、先輩。」


「おー、まじか。よかった、よかった。」


そのあと俺たちは、世間話をしつつ先輩の家へ向かった。

そこでふと気付く俺。


「先輩……、先輩んちって今誰もいないんスよね………?」


「あ?そうだぜ?てかさっき言っただろぃ…。」


「そうっスよねー……。」


あぁ、やっぱり。

さっきは先輩が一人で可哀想だなと思っていただけだった。

よくよく考えると、俺が行くことになったんだから二人になる。

つまり、二人っきりということだ。

色々大変なことになりそうだなと俺は思った。

しばらくして俺たちは先輩の家に到着した。

入ったときは真っ暗でしーんとしていた。

いよいよ本格的に二人っきりを自覚し始める俺。

でも、丸井先輩の意識してなさに少し落ち着く。

悲しいけど。


「飯作るから俺の部屋に行ってろぃ。」


「うぃーす。」


俺は飯を作るとかいうスキルはないので、大人しく先輩の部屋に行く。

前、手伝って失敗しまくった経緯もあるし。


カチャ


先輩の部屋の扉を開ける。

電気をつけてぐるっと部屋を見回してみる。

前来たときとそんなに変わってない。

丸井先輩は意外と綺麗好きだ。

というか、弟たちが小さい頃に部屋を片付ける習慣がついてしまったらしい。

小さい物とかを口に入れたら危ないとかで。

だから、今も綺麗に片付いている。

ただ、目を引くピンクな物がひとつ。


「…………ブタ?」


首輪がついていて、癖のある字で『デブン太』と書いてある。

多分、仁王先輩辺りがあげたに違いない。

そんなくだらないことをひたすら考えていると、


「お待たせー。」


丸井先輩が部屋に入ってきた。


「あれ?クーラーつけてねーの?」


「え、あ、はい。」


「なんだよ、つければいいのに。」


いや、流石に勝手につけれないだろとも思ったが、言わないでおいた。

先輩はクーラーをつけると、簡易的な机を組み立て、そこに皿をおいた。


「おー、チャーハン!」


「うまそーだろぃ?」


「はいっ!マジうまそう!」


湯気が絶え間なく出続けているチャーハンは、本当にうまそうで、しかもかなりの量がある。

先輩は一度部屋から出ていくと、お茶とコップを持って戻ってきた。


「おしっ、食べていいぞー。」


「いっただきますっ!!」


うん、うまい。

さすが先輩だ。


「おまっ、そんながっつくなよ。」


先輩は笑いながらそう言って、お茶を注いでくれた。

そのあと自分のお茶も注いで、ほぼ俺と同じようにガツガツ食い始める。




***




「はぁぁー、食ったぁー。」


「満足出来たか?」


「はいっ!」


「まぁ、当たり前だけどなー。」


「ははっ、そうっすねー!」


「よしっ、じゃ俺ちょっと片付けてくるわ」


先輩は立ち上がると、俺の食器も持って部屋から出ていった。

また、俺は先輩の部屋で一人になる。

ちょっとは物色してみるかと本棚に近寄った。


「………あれ?」


一番下の段だけ、他に比べて漫画が飛び出ている気がする。

気になって調べてみると


「………エロ本……。」


エロ本が数冊出てきた。

まぁー、先輩も健全な高校生ってことか。

これ使ってヌいてんのかなとか思うと、やっぱり少し悲しかった。

パラパラと捲ってみるが、ほとんど新品のようで、少し救われた気がした。


「おーい、赤也ぁー。今日さ……」


声が聞こえて、まずいっと思ったときには遅かった。


「何してんの、お前。」


「あっ、いや…。」


思わず背中に隠そうとするが、時すでに遅し。


「…………なんだ、それね。」


丸井先輩は意外とそっけなく返してきた。


「え、怒んないんスか。」


「人の本棚漁ったのはムカつくけど、それ借り物だし。」


「あぁ、そうなんスかぁ…。」


ちょっとだけ安心して、思わず顔に出そうになるのを必死に隠す。


「でさ、今日泊まってく?」


「あ、はいっ。」


「じゃあ、今風呂入れてるからもうちょい待ってて。」


「はい、分かりました。」


「……なぁ、赤也。一緒に風呂入る?」


一瞬思考がフリーズした。

え、何言ってるのこの人状態。

とりあえず無反応はさすがにマズイだろうと思い、声を絞り出す。


「え、あの…。」


「あ、やっぱヤだ?」


そう聞いてきた先輩の顔が結構悲しそうで思わず


「いっいえ、そんなことないっスよっ!!」


と返していた。


「っだよなー!!あ、服はちゃんと貸してやるからな。」


先輩はニコニコしながら服を出し始める。

その間、俺は自分を落ち着けることに精一杯だった。

でも、全然落ち着けない。

むしろ焦りまくっている気がする。

もちろん合宿とかで一緒に風呂に入ったことはある。

だが、そのときは二人っきりじゃなかったし、こんなに意識もしていなかった。

あぁ、どうしよう。

俺が頭でグルグルしている間に、先輩は服の用意を終えてしまったようだった。


「はい、これ赤也のな。」


「…ありがとうございます。」


「もー、溜まるだろーから行くか。」


先輩が立ち上がったので俺も立ち上がる。

理性がプッツンと切れないことを祈るばかりだった。




***




「はぁぁー、いいお湯ー…。」


俺の横ですっかりくつろいでいるのは、もちろん丸井先輩。

ここまで来るのはとぉっても大変だった。

脱衣場でいきなり脱ぎ出したりとか、洗いっこしようとか、どんだけ俺のこと意識してないんだ!!と思わずにはいられなかった。

まぁ、男同士だから当たり前なんだけど。

今も一緒に浸かろうぜとか何とか言ってきて、この状況だ。

つまり大変なのは現在進行中なわけ。


「なぁ、なぁ、赤也。」


「なんスか?」


出来ればあまりこっちを見ないでいただきたい、切実に。


「やっぱさ、水に濡れたらワカメも落ち着くんだな。」


「まぁ、そうっスね…。てか、今さらっスか。」


「改めて思ったんだよ。」


先輩は口を尖らしながブツブツ言う。


「でもすぐ元に戻りますよ。」


「え?」


「いや、だからすぐまたくるくるになるんスよ。」


「あぁー、まぁしょうがねーよなー。ワカメだし。」


先輩は面白そうに笑っている。

俺にしたら髪の毛は結構重要なことなのに。


「あぁ、そだ。今日俺が乾かしてやるよ、髪。」


「え、いいっスよー、別に…。」


「大丈夫、大丈夫!」


何が大丈夫なのかさっぱりだが、結局言いくるめられてしまった。


「さて、出るか。」


先輩は豪快に浴槽から出る。

もうちょっと恥じらい的なのはないんだろうか……。

そんなことを思いながら、俺も先輩に続いた。

風呂場から出ると、先輩はすでにパンツ状態で、上半身はまだ裸のままだった。

とりあえず全裸じゃなくて良かったと思う。

俺が出てきたことに気付いた先輩は、俺の分のタオルを手に取ると俺の頭を拭き始めた。


「ちょっ、な、何してるんスか?!」


「何って髪拭いてる。」


しっかり拭かないとあとで困るしなーと言いながら、わしゃわしゃと拭いてくる。

ほんと心臓に悪い。


「はいっ。」


満足がしたのか、先輩は俺にタオルを渡す。


「……ありがとうございます。」


とりあえず礼を言う。

もらったタオルで全身を拭き、先輩から貸してもらった服を着る。

若干スボンが小さめだが、気にするほどでもなかった。


それよりも、服から匂ってくる先輩の匂いと言うか、先輩の家の匂いと言うか…そんな感じの匂いがヤバい。

先輩が近くにいるみたいな錯覚に陥る。


「おい、赤也。部屋戻るぞ。」


「あっ、はいっ。」


俺が悶々している間に、先輩は服も着替え終わり、手にはドライヤーを持っていた。

多分、部屋で髪を乾かすつもりなのだろう。

俺は先輩について、部屋に戻った。

室内に入ると、先輩はドライヤーを用意し始めた。


「赤也ー。」


手招きされる。

どうやら髪を乾かしてやるということらしい。


「は、はい。」


俺は素直に先輩の方へ向かう。

それにしても、心臓がめちゃくちゃうるさい。

歩く度に服から香る先輩の匂いとか、先輩の湿った髪とか、襟元が広いTシャツからチラッと見える鎖骨とか、俺は立っていて先輩は座ってるから必然的に上目遣いになってる先輩とか、色々含めて俺はギリッギリだった。

理性とか心とか心臓とか。


「ほら、座れよ。」


先輩が自分の真ん前を指差して、俺を促す。

とりあえず言われた通りに座る。

先輩は俺の目の前。


「よし、じゃあ乾かすなー。」


先輩が俺に笑いかけた。

目が合う。

その瞬間。

俺の理性がぶっつりと切れた。

気付いたときには、先輩は俺に押し倒されていて、俺の目には驚いている先輩の顔が映っていた。


「あ…………。」


やっちまったと思う。

今から冗談とか言って、誤魔化せる感じではない。


「えっと…………。」


何か言おうと思っても、何も出てこない。

思わず目を反らす。

頭では色々考えているが、やっぱり何も出てこない。

どうしよう。


「……大丈夫か?」


「はい………。あの、先輩。」


「ん?」


「俺…丸井先輩が、好き…です。」


本能で、告白してしまった。

でも、結構頑張った方だと思う。

色んな意味で。


「……………おう。」


先輩の言葉は短かった。

驚かないのか…と思いつつも、やっぱり押し倒したし、さすがに気付いたのかなと思う。


「迷惑だと思うんスけど、出来れば返事、聞かせて下さい。」


「…………………。」


少しの沈黙。

本当は気持ち的に待てないけど、先輩が話しだすまできちんと待った。


「俺さ、仁王からお前のこと聞いてた。」


「え、なんて。」


「赤也は…その……俺のこと好きなんじゃね?って。」


「あぁー…。」


じゃあ、驚くわけないかと納得する。


「だから、今日確かめてやるつもりだった。もし、本当に好きそうだったら………。」


「………だったら?」


「…俺から、告白するつもりだった。」


「ええっ?!」


「な、なんだよぃ……?」


「じゃ、じゃあ……さっきの答えは……?」


先輩は深呼吸をした。

まるでさっきの俺みたいだ。


「俺も好きだ、赤也のこと。」


思いを告げられた瞬間、先輩の顔をまじまじと見つめた。

……真っ赤だ。


「っわ、み、見んなっ!」


先輩は腕で顔を隠そうとした。

でもそれを無理矢理引き剥がして、床に縫いつける。


「っ!」


先輩は驚いた顔をしている。

それと恥ずかしいって顔。更に赤色に染まっていく。


「ちょっ、赤也!」


離せよっ!と抗議してくるが、今の俺には無理な話だった。


「じゃあ、先輩。両想いなんスよね?」


「……………そうだな。」


「じゃぁ、キスしていいっスか?」


先輩は俺からを目を反らす。

そしてボソッと小さな声でこう言った。


「……………いいぜ、俺たちもう恋人だろ。」


俺の理性の限界は、そう遠くない未来に、跡形もなくなくなってしまいそうだと頭の片隅で思った。

著作者の他の作品

今回は西浦ーぜで頑張ってみました。所々腐要素的なのを取り込んでみたかった...