桜色メモリー

乃の✼̥୭*ˈ
@tomtom_0725

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淡い紅色が、風に吹かれて優しく揺れている。


見慣れたこの風景とも今日でお別れだ。




「(…そう思うと、寂しいな)」


「…何してるんすか」

「英くん…」





不意に声を掛けられて、視線を向ける。英くんは私の隣に並ぶと、同じ様に桜の木を見上げた。





「この木だけ満開ですね」

「そうだね。きっと入学の頃には殆ど散ってしまってるね…」

「でも見たかったんですよね?」





英くんの言葉に首を傾げる。

桜を見ていた瞳が、私に向けられた時鼓動が早まるのが分かった。





「好きなんでしょ」

「えっ!?」

「…桜」

「え、ああ!!さ、桜ね!!え、ええっ!大好き!!」





び、吃驚した。

てっきり心を読まれたのかと思った。ドキドキとまだ脈打つ胸を押さえる。




「…明日から、先輩達はもう居ないんですよね」





英くんの抑揚を持たない言葉が、静かな辺りに響いた様な気がした。

少し遅れて、「そうだね」と答えた。





「…二年」

「……え?」





風に混じってぽつりと呟いた英くんの声が聞こえた。

聞き間違えかどうかを確かめる為に、彼の顔を見た。






「留学するの二年でしたよね?」

「う、うん…」

「あんまり、連絡とかする方じゃないんですけど…嫌だとか、面倒臭いとか思ってる訳じゃないです…」





珍しく饒舌な英くんに私はただ静かに彼の話を聞いた。





「寂しかったら、何時でも…、その…」

「連絡していいんだね?」





コクリと頷く英くん。

たまに見せる素直な彼が最後に見られるなんて…今日はいい日かもしれない。





「俺、待ってるんで。だから先輩も俺の元に絶対帰って来て下さい」





…いつもは、私が甘えても後で。って言って構ってくれないのに、どうして今日の彼は、こんなに優しいのだろう。


じわりじわりと滲んでいく視界。

卒業式だからメイクして来たのに、これじゃあ落ちちゃうじゃん。





「…笑ってよ。そしたら俺も送り出せるから」





一段と優しい英くんの声。

その声に抗う方法を、私は知らない。


顔を上げると、英くんがハンカチを差し出していた。汚れるからと、断ろうとしたけど、「別にいいから」と退かない彼に折れた私がそっと受け取り涙を拭う。





「ななし」




名前を呼ばれてハッと顔を上げる。


その時初めて、彼の目が赤い事に気づいた。




「好きだよ…多分、これからも、ずっと」

「英くん…っ」





柔軟剤の優しい香り。

安心する英くんの匂い…。

暫くは、この身体に触れる事が出来ないんだ…。





「ななしさん」





今日の英くんは優しい声で私を呼ぶ。背丈の変わらない私達。真っ直ぐにその瞳を見つめた。




「気を付けて」

「…っ、うん。行ってきます、英くん」

「行ってらっしゃい」






高校最後のキスは一番長くて、優しいキスだった。



ねぇ、英くん

私貴方に出会えて本当に良かった…。



「浮気、したらヤだからね」

「そっちこそ。変な外国人に騙されないでくださいね」

「だ、大丈夫だもん!!」






大好きな桜の下で、大好きな君ともう一度口付けを交わした。



「ありがとう、英くん」





桜色メモリー

(帰ってくるその日まで、)