新卒メイドの冒険

ゆめさんは優しくなりたい
@lei_ol_zet

其ノ五:会議

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「…………それで、太宰の阿呆が店員に唆されてこのタルトを買わされたという事だな」


そう言って国木田独歩は目の前にあるタルトを睨み付けている。


「えっと……新作で限定のタルトだそうで……」


「だからこんな値段なんだろうな」


国木田はレシートを恨めしそうに見た。


「まぁまぁ良いではありませんか。此処のタルトは本当に美味しいと評判なんですから」


谷崎ナオミは目を輝かせ、兄である谷崎潤一郎に無理食べさせていた。


その日、武装探偵社ではある案件に対する会議を開く事になっていた。


数日前に武装探偵社にやって来たとある依頼主。

その人は1人の少女を探して欲しいという事だけを告げると、写真を置きそのまま立ち去って行ったのだ。


「今回の依頼は『磐永学園爆破事件』の犯人を捜すことだ」


国木田独歩はそう言ってモニターに1人の少女を映し出す。

モニターに映されたのは磐永学園爆破事件の犯人とされる画像だった。


中島敦はその画像を見入ってしまう。


「ん?どうした敦」


「あ、いえ……国木田さん、この女の子が犯人、なんですか……?」


映し出された少女を見て、敦は息を呑む。

ケーキ屋・ELISEで自分に気さくに話し掛けて来た店員ととても良く顔をしていたからだ。


「彼女の名前は長谷川沙羅。依頼主が探している爆破事件の犯人だ。彼女はこの爆破事件の混乱の中で自殺したと言われていたが……ポートマフィアに拾われたという噂がある。この写真と良く似た少女がヨコハマで数多く目撃されているからな」


「目撃されてるも何も、その子がこのタルト売ってるELISEの名物店員なんだって」


名探偵・江戸川乱歩はテーブルの真ん中に置かれたタルトの箱に手を伸ばす。


「名物店員で存在が知れ渡ってるってのに『人探し』依頼されてんのかい?妙な話だねぇ」


女医・与謝野晶子は眉を顰め、


「この依頼主は自分で行く事すら出来ない小心者には見えなかったけどねぇ。寧ろ1人でズカズカ行くタイプの人間だろうに」


と腑に落ちない様子である。


「落ちぶれた財閥の令嬢が考える事は分かんないねえ。そもそも磐永財閥は数年前にその栄光は失墜してるんだよ。まぁ財閥なんて言っても、所詮は田舎で威張ってる財閥だから実際は大した事ないけど」


「乱歩さんの言う通り、磐永財閥は数年前に没落。表の世界では報道されていないが、裏での評判は最悪そのものだ。手元の資料にその時の一部が記載されている」


資料には磐永財閥の悪行、更には「250人殺しの長谷川沙羅」と書かれていて、内容は兎に角彼女を悪く言っているものばかりだった。


「……この女の子が……爆弾を使ってこんなに沢山の人間を殺したの?」


泉鏡花は重い口を開く。


「この資料はあくまでも『磐永サイドの人間が作った資料』だ。そもそも一般人の彼女が爆弾を作り、大量殺人を犯すなど余程の異能が無ければ不可能に近いからな」


「そんなの分かり切ってるのに長谷川沙羅の事悪く言うのに必死だもんね、この資料から悪意が滲み出てるもん。名探偵である僕もドン引きしちゃうよ」


「な、何で彼女はそんなに悪者に仕立て上げられてるんですか……?ELISEで会った彼女はそんな風には……」


「全く……敦はそんな事も分からないの?簡単だよ、『仕返し』に決まってるじゃん」


「し、仕返し……?」


乱歩のこの言葉に武装探偵社社員が全員息を呑む。


「女の子に有りがちな妬みでしょ?だってさ自分は落ちぶれたのに大嫌いな相手はマフィアに拾われて、とーっても可愛がられてるんだよ?評判も上々みたいだし、このまま何も無ければ昇進だって出来るだろうね」


「見た目に騙されるな敦。店では愛想良くしていたとしても所詮はポートマフィアの一員だ。此方が気を許せば牙を剥くやも知れん」


国木田に釘を刺された敦。

そして暫しの沈黙。

口を開いたのは谷崎潤一郎だった。


「でも国木田さん。今回の依頼は『人探し』ですよね?でも彼女はもう見つかっている訳だし……その先はどうすれば良いんでしょうか?」


「谷崎の言う通りだ。我々には彼女を説得してもその先が無い。……この依頼主は数日前に失踪したらしいからな……全く意味が分からん」


国木田が難しい顔をしたその時、


「だっだいまー!国木田君」


太宰治がにこやかに帰宅した。


「やっと帰って来たかこの穀潰し!一体何処をほっつき歩いていたんだ!!と言うかお前、外套はどうした?」


「一寸人助けをして使ったんだよ。あ、ELISEのタルトどうだった?」


太宰の問いかけに対し、国木田以外は「美味しかったでーす」を皆揃って言った。

その返答に御満悦な太宰治。


「何たってELISEで1番可愛い店員・マリエちゃんから買ったタルトだからね。美味しくて当然だよ」


「その『ELISEで1番可愛い店員・マリエちゃんから買ったタルト』のおかげでこっちは予想外の出費だ。しかも経費で落とすな経費で!」


「そう言う国木田君だって何だかんだで食べてるじゃんかー素直じゃないなぁ国木田君は。そんなんじゃマリエちゃん悲しむよ?」


「…ッ!」


太宰の言う通り、結局国木田も他の社員と一緒にタルトを食べていたのだ。


「け、経費で買った物を粗末にする訳にはいかんからな!」


「あ、そうそう国木田君。そのモニターに映ってる女の子、来週からうちに『インターンシップ』で来るからね」