新卒メイドの冒険

ゆめ@26日郡山
@lei_ol_zet

其ノ四:アルバイト

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「中也さん大変です!これは大事件です!」


マリエは中原中也が読んでいた新聞を取り上げてこう叫んだ。


「んだようっせぇな莫迦メイド!」


中也は直ぐ様彼女から新聞を奪い返す。


「先日お店に来てくれた方……武装探偵社の人でした……!!」


「……はぁ?だから何だってんだよ」


「私鴎外様から言われていたんです。『武装探偵社の人と会ったらきちんとご挨拶しなさい』って…。それを今思い出してしまいました……どうしましょう……!!」


「下らねぇ悩みだな。んなの次会った時にでもやりゃあ良いじゃねぇか」


「あ、もう良いです。中也さんに相談した私が莫迦でした」


「手前その口の利き方直せって何回言えば分かるんだよ阿呆メイド」


「中也さんこそ私の事莫迦とか阿呆とか言ってるじゃないですか。お相子です」


中也はマリエを睨み、マリエは中也を睨んでいる。

そしてお互いそっぽを向いた。

こんなやり取りは最早日常茶飯事である。

マリエは今は元気を取り戻し普段通りの生活に戻っていた。


「さてと、そろそろバイトの時間なので行かないといけませんね」


「おうおう行って来い行って来い。手前がいねぇと静かになっから清々するわ」


「……。あーあ何で中也さんってこんなに意地汚いんだろう。それなら芥川さんの方がずーーーーっと紳士的で素敵な方ですね」


マリエは態と大きな声で言うとトランクケースを持って部屋を後にした。


「芥川が紳士的って……彼奴頭大丈夫か……?」


**************


芥川龍之介。

ポートマフィアの一員でその姿を見たら直ぐに逃げろと言われている人物。

……しかしそんな彼でもマリエの前では少し違っていた。




事の発端は数日前に遡る……ーーー。






「樋口さん樋口さん!!今日はイチジクのクッキーを作ったんです!!食べて下さい!!」


ポートマフィアアジト内。

マリエは樋口を呼び止めラッピングされた袋を無理矢理渡していた。

マリエは樋口に完全に懐いてしまい、事ある事に樋口に会いたがるようになっていた。


「あぁもう分かった!分かったから早く離れなさいマリエ!!」


「また感想聞かせて下さいね!」


その時、黒い外套を着た青年が此方に向かって歩いてきた。

彼は樋口とマリエを一瞬見たが何も見なかったかのように歩いて行ってしまった。


「樋口さん、今の方って何方かご存知ですか?」


「……私の上司芥川龍之介先輩よ。いい事マリエ。芥川先輩に無礼は許されないから貴女も余計な事を……って!」


樋口の話を聞かずマリエは芥川に近づいていく。


「芥川さん!」


「……。何だ貴様は」


芥川は立ち止まりマリエを睨み付ける。


「ポートマフィアの新入りメイドのマリエと申します。よろしくお願いします」


「新入りメイド如きが僕に何の用だ」


「お菓子を作ったので、お近づきの印にお1つ如何ですか?」


「僕にそんなもの必要無い。さっさと消えろ」


「でも残り1袋なんです……イチジクのクッキーなんですけど」


実はマリエは芥川龍之介の恐ろしさを知らされていなかった。

芥川の睨みも脅しも普段から中也との喧嘩に慣れてしまっていた為か全く動じていないようである。


様々な危険を察知した樋口は「芥川先輩申し訳ございません。この無礼なメイドには私が説教を……」とマリエを別の所へ連れて行こうとしたが芥川からの返答は意外なものだった。


「………………良いだろうメイド。僕の気まぐれだ」


そう言って芥川が菓子の入った袋を受け取るとマリエは一気に笑顔になり「是非感想聞かせて下さいね!」と言うとそのまま走り去って行った。


***********


そして今日に至る。


芥川龍之介は……マリエに対しておかしな感情を抱き始めたと自覚していた。

彼女の事を考えると動悸が激しくなってしまうのだ。


あの時貰ったクッキーもかなり美味で……芥川は完全にマリエに胃袋をも掴まれてしまっていた。

『マリエに菓子の礼を言いたい』と思ってはいたが、肝心のマリエが今何処にいるのか芥川は分からなかった。


「莫迦メイドならバイトだバイト」


「バイト……?」


芥川は意外な人物から情報を入手した。


「彼奴がここに居ねぇ時は大抵はELISEでバイトだ。昼すぎに戻ってくることも有るが大抵は夕方に戻って来るな。んで首領の食事作ってんだよ。用があるなら直接会いに行った方が早ぇぞ。……まぁELISEに会いに行けばそれはそれで面倒臭ぇ女だけどな」


上司である中也が新入りメイドの行動を細かく把握している……その事に対しての芥川の視線は何時もより冷たいものだった。


「…………言っとくが俺だけがマリエのスケジュールを知ってるわけじゃねぇからな。首領だって姐さんだって把握済みだ」


「………………そうですか」


芥川は少し安心した。


そして彼は今現在ELISEの入口でなく横の窓からマリエがいないか店内を睨むように見ていたのだった。


********


マリエのバイト先であるケーキショップ・ELISE。

当然ここで働いている従業員もポートマフィアの一員である。

しかしそんなELISEも今日は少しざわついていた。

何故なら……外から芥川龍之介がこちらを睨むように見ているのである。

余りにも目立つので声をかけようにも突然逆上して異能力『羅生門』を使われたら命が幾つあっても足りない。


「どうかしましたか?」


奥からマリエが戻って来る。


「マリエちゃん……あの人……」


マリエは従業員の視線の先を見る。


「あ、芥川さんだ」


マリエはサラリと言うと外へ出て行き彼に声を掛けた。


「芥川さんこんにちは」


「…!!…マリエ……!?」


「?はい、マリエですけど」


芥川はマリエの登場に心底驚いたのかいつも見開いている目を更に見開く。

そんな芥川を見てマリエは首を少し横に傾ける。


「ELISEに御用ですか?…………あ、もしかして樋口さんへのプレゼントですか!?そういう事でしたらこのマリエにお任せ下さい!ちょうど良いのがありますよ!!さぁどうぞ入って下さい!!」


マリエはそう言うと芥川の右手を握り店内へと案内する。


マリエが楽しそうに芥川に商品を勧めている間、他のELISEの従業員は生きた心地がしなかったと言う。


「芥川さんにもここに来てもらえて嬉しかったです!」


マリエは芥川を見送る為一緒に外へ出て「また来て下さいね」と言った。


「……マリエ……!」


今がチャンスだと芥川は店に戻ろうとするマリエに声をかける。


「…………その…………先日の菓子は………………美味だった……」


芥川のこの言葉を聞くとマリエはニコリと笑い「芥川さんってとっても紳士ですねっ。また作るので是非食べて下さいね」と言って店の中へと戻って行った。



芥川龍之介、完全にノックアウトされた瞬間だった。


********


樋口一葉と黒蜥蜴がいるアジトへと戻った芥川。


「あ、芥川先輩?…えっと………両手に抱えてるのはその……ELISEに行かれたんでしょうか……?」


芥川が両手に下げているのは可愛らしくラッピングされた複数のELISEの紙袋であった。

明らかに芥川1人ではとても食べ切れる量では無い。

樋口は少し悩んでこう切り出した。


「えっと……黒蜥蜴の3人も呼んできましょうか……?」