静かに帰り道を探す人

かいわれ@山姥切国広強化月間
@tatannotatann

【堀川派レベル1】

 宴会の席は今回が二回目だ。一回目は自分の歓迎会。

 ……あれは酷く心臓に悪いものだった。

 刀剣男士たちに一通り挨拶せねばならず、品定めされるような視線に晒される。三条組との挨拶なんて本当に生きた心地がしなかった。特に察知能力の高そうな石切丸と小狐丸。(三日月宗近がいないのは幸いだった。できれば彼が来る前に帰りたいものだ)

 一寸の隙も無く山姥切国広らしく振る舞ったあの時間は本当に辛くて、いい記憶なんてものではない。苦行の記憶だ。


 その記憶があるせいもあるのだろう、やはり宴会は苦手だ。自分の歓迎会ではないからそう辛くはないだろうと思っていたけれど、甘かった。

 いつもの様に黙って食事をして過ごすには時間が長い。それににぎやかな雰囲気に押されてか、声をかけられる回数が段違いで多い。総じていつもより心臓に悪いのだ。

 申し訳ないとは思うが、特に声をかけてくる堀川派の二振りには、早く席を移動してくれと願わずにはいられない。


 堀川派との会話は本当に苦手なのだ。刀剣男士の中で断トツに。それは偽物という罪悪感からだと前にいったが、実はもう一つある。

「兄弟、そういえばどうであった、噂の高速槍は」

「今日も出て来たよ。やっぱり先手を取られるのは痛いね。索敵が上手くいけば真っ先に潰せるんだけど」

「厄介な敵であるな……。ぬ、すまぬ兄弟、醬油を取ってくれぬか」

「「「…………」」」

「あっ、こ、これは刺身醤油だ兄弟」

「なんと」

「あ、こっちのが普通の醤油だね。はい」

「そうであったか。いや、すまぬ。ありがとう兄弟」

「どういたしまして!」


 ……兄弟という言葉がどっちを示すのか、たまに判断がつかないのだ。

 文脈で判断がつくことの方が多いが、今回の醤油のように分からない時もある。そしてそういう時、不自然な沈黙が降り立ってから気づくのだ。

 

 それが本当に心臓に悪い。

 怪しまれる切欠を作ってしまったと。本物なら分かるのだろうかと。闇討ち暗殺筋肉にやられるのではないかと。毎回、最悪な想像ばかりが頭をよぎる。

 二人が全然気にしていない様子なのが救いだが、だからといって慣れるようなものでもなく。

 だから、堀川派との会話は嫌なのだ。


 気を遣ってくれている相手を嫌ってしまう現状に耐え切れず、顔を隠そうと布を引っ張る。としたところで、会場の雰囲気が変わったことに気がついた。

「あ、みんな花鶴さんに挨拶しているみたいだね」

 堀川の言葉通り、布の隙間からは粟田口に手を振る花鶴に、左文字兄弟が話しかけているのが見えた。

「我らも行くとするか」

「そうだね」

「ああ、行こう」

 彼女と会話できるのを断る理由はない。頷いてすぐに席を立つ。

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