御伽草子

海棠緋寄⚔️
@Enph_hiyo12

家族

こんにちは、太宰一家、二子の太宰直です。今回はお母さんの誕生日五月六日ということで家族四人で外食に行きました。

 お母さん曰く、もう幾つか数えたくないと云っていたけどお父さんやお兄ちゃんや私に祝われてとても嬉しそうでした。


「却説、ケェキ買って帰ろうか」


蟹料理を食べていた料亭から出て、お父さんは車の鍵を指先で遊ばせながら呟いた。お母さんに何が好いと聞くとチーズケェキと帰って来た。私たちは車に乗り込んでお父さんの運転する車でまず洋菓子店に向かう。

 其処にはケェキ以外にも沢山の小さい摘まめるお菓子が沢山売られているので機嫌が良いお母さんが「好きなのあったら買っていいよ」と云ってくれた。其れを訊いて真っ先にお兄ちゃんがブリュレをお父さんに押し付けてたので私はつい笑ってしまった。


「直は頼まないのか?」

「頼むよ?」


折角買ってくれるんだから強請らないわけがない。私はお父さんにバームクーヘンを押し付けた。

 お父さんは「はいはい」と優しい笑みを浮かべてお母さん指定のチーズケェキと一緒に他の二つのお菓子を持ってレジに向かった。

 其のあと、再び車に乗って家路に着く。

 私たちの住む一軒家は横浜郊外の閑静な住宅街にある。両親の職場である武装探偵社からは少し離れているが通勤時間を楽しんでいる二人は気にしていないようだ。


「あ、太宰さん、蟹は如何でしたか?」

「やあ薫くん。とても良かったよ」


車を敷地内のガレージに入れて車内から出ると正面の家に住んでいるお兄さんに声をかけられた。

 薫お兄さんは西側の地方から、単身で十年前に此の目の前の家に引っ越してきたフリーの脚本家で、依頼が無いときは近くのお花屋さんでバイトしている好青年。

 容姿端麗で、お母さんとお兄ちゃんに似た綺麗な藤色の瞳を持っていて、でも髪は頻繁に染め直しているけど、高身長で、頭も良くて、香水選びだってとても上手いのに何故か恋人はいない残念なお兄さん。

 今日の料亭も此のお兄さんが紹介してくれたお店だ。

 引っ越して来て以来、二人と仲が良いらしく私たち四人の誕生日にはバイト先で買ってきた花をくれたり、今回のように良い店を紹介してくれたりする。仕事の関係で良い店に行く機会が多いんだって。

 

「薫くん、いつも有難うね」

「いえいえ、僕の方こそ何時もお世話になってますから」


今回もお兄さんからお花を貰ったらしい。小さな籠に飾られた花はお母さんを連想させる紫色系の綺麗な花束だった。


「店長さんから訊いたんですけど、此の花たちは品種改良で普通より長く咲くんだそうです。あ、水は籠の底に入れ物があるので其処で水を入れ替えてくださいね」


人懐っこい笑みを浮かべて云うので話を訊いているだけの私も自然と笑顔になる。

 すると両親を見ていた薫お兄さんが私とお兄ちゃんの方を見る。


「二人ともまだ学生でしょ?学校どう??」


光くんは高校三年生だから大変でしょう、と話を振られる。お兄ちゃんは家から近い私立の小中高一貫の高等部に通っていて私も其の学校の中等部だ。お兄ちゃんは高等部の時は持ち上がり組でちゃんとした受験は初めてだから今から心配だと云っていた。薫お兄さんも其のことを判っていたのかもしれない。


「えぇ、はい。でも頑張ります……」


私たちの両親は昔、人に云えないようなことを沢山してきたという。今だって安全とは云えない仕事だけど、其れでも二人は生涯、探偵社で働くだろう。でも、私やお兄ちゃんは違う。二人の子供だけど、異能力を持っていてもきっと、二人と同じ道に行くとは限らない。


「うん。頑張ってね。直ちゃんも中学生活を謳歌してね」

「はい!薫お兄さん!」


元気に返事をして頷くとお兄さんは私の頭を撫でてくれた。其れは其れはとても大切なものに触れているように。

 其れじゃあまた、とお兄さんは仕事に出かけて行った。私たちは家の中に戻ってお菓子を食べる。

 お父さんと一緒に三人でお母さんに誕生日の歌を唄って、何度も一緒に写真を撮って、幸せを感じて私たちは大好きなお母さんの誕生日を祝った。


著作者の他の作品

自傷、少しのグロ描写あり。

FGO夢うちよそ