御伽草子

海棠緋寄⚔️
@Enph_hiyo12

羞恥

【#夢カプがリプで命令された事をやる】 お鈴様からリクエスト




目を覚ますと、白い無機質な部屋にいた。

 床も天井も壁も全て白くて、窓も扉もない狭い部屋。そして部屋の中には私ともう一人。この白さとは対極の黒い青年。私の気になる人。


「おはよう。……如何やら此処は誰かの作った異能空間みたい。一応色々試してみたけど出られそうはない」


そう云った彼の右手には彼の異能力である刀が握られていた。彼曰く、切って瞬間的に傷が出来てもすぐに傷は消え、刺してみても壁の分厚さは未知数だと云う。

 私も彼も此の空間に入るまでの記憶が朧げで思い出せない。街で偶々逢ったところまでしか覚えていない。


「こうしているうちに現実では時間が進んでたら仕事放棄とかで抹殺命令出たら如何しよう……」


彼の首についている首飾りは異能特務課からの拘束具。GPSが内蔵されているらしく、監視官兼上司である坂口安吾から許可なく一定距離離れるとセンサーが反応する仕組みになっている。他にも紙の誓約書に幾つかの契約、禁止事項があるらしい。


「逆に、何かに巻き込まれたかもって気付いてもらえるかも……。鏡花ちゃんは?」


今日は非番で彼に逢った時は買い物に行く途中だった。同居人も今日は非番だから若しかしたら何か異変に気付くかもしれないと説明した。

 お互いに先輩頼りだね。と彼が呟いてすぐに、白い壁が画面のようになって文字を映し出した。その内容を見て、何時も雰囲気穏やかそうな彼の纏う其れが変わった。


『[愛してるゲーム]をしないと出られない部屋』


大きな字で映された内容を彼は見間違いかと思うほどにじっと見つめている。穏やかな表情が消えて無表情になった為、真意が読めない。


『ルール。一、色々な云い方で相手に愛を伝えてください。ニ、照れたり笑ったりした場合、負けとなります。三、「愛してる」の云い方を毎回変えてください。四、最低でも二週してください。一週目で勝敗が決まった場合は無効です。五、訊く側が判定し声が小さい、又は「愛している」から意味が変わっていると判断した場合は違反とし無効となり、先に二回指摘された側が負けとなります。六、負けた側は勝った側に最後キスをしてください。』


ルールを見た後、私は彼の方を横目に見た。相変わらず無表情だった。けど、其れから三秒ほど目を閉じたあと、意を決したように私の前に立った。そして私の視線に合わせて屈んだ。


「誰よりも、君を愛しています」


冷たい声と無表情な顔。きっと彼はこうやって私を照れさせないようにしている。そして最初に発言したのも私の云う回数を減らす為。恐らく彼は二週目の終わった三週目の最初で自ら負けるのだろう。

 彼の翡翠色の真っ直ぐな眼差しで其れを確信した。


「私は貴方を愛してる……」


私の言葉に彼はぴくりとも動かない。私の本心に気付かない。

 判定は任意な為、お互いに指摘することもないのですぐに二週目が来た。


「……僕の愛おしい人」


言葉が思いつかなかったのかかなりの行間があった。色恋に興味がないと訊いていたので仕方ないと思う。内容的にも少し判り難いが判定要素は無視していい。


「貴方は私の最愛」


此の思いが届けば良いのに。

 私の最後の言葉にも彼は何の反応を示さなかった。

 彼は最後の言葉を云う。顔をほんのりと染めて目を細めて優しい声で、演技であることを疑うぐらいにリアルに私の耳元で、


「嬉しい……僕、死んでもいいよ」


そして口を寄せて私の頬にキスをした。頬に初めて感じる感触。

 彼のさらさらな髪の感触や唇の暖かさに胸が煩くて、苦しくて、顔が熱い。

 離れたあと、彼は持っていたハンカチで触れていた所を拭き取ってしまった。すると何もなかった壁に扉が出現して開いた。


「……行こう」


私は彼の顔を見れないまますぐに扉から脱出した。




「異能力者……絶対消す……」


鏡花の背中を追い乍、恥ずかしそうに口元を抑えて清原は決意した。耳は真っ赤だった。

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自傷、少しのグロ描写あり。