御伽草子

☀海棠緋寄🔪
@Enph_hiyo12

素直2

マフィアと云えば、一部の人たちが答えるのが「異性に対して欲が強い。そういう仕事がある」など。慥かにある。ポートマフィアでも色仕事は行う。戦闘専門以外の構成員なら大抵は経験があると云っても間違いではないかもしれない。


「誰だい、私の紫織ちゃんに色仕事を回そうとしている奴は」


仕事の資料に目を向けていた太宰は突然憤り始めた。何事かと式部が内容を確認したところ、此処最近、マフィア内の色仕事を請け負う構成員が不足し、其れを補うために色仕事に使えそうな人物を担当者に上げさせていたのだが、其の候補の中に式部の名前があったのだ。

 式部は幹部であるものの、色仕事をするには十分な範疇にいる為一応、名前を挙げたのだろう。


「大体、紫織ちゃんは処女だよ。私もまだしたことないのに他の相手に渡すわけ無いだろう。却下だ却下」

「何時から私が処女だと錯覚してるんですか」


式部の言葉に太宰は大きく反応して勢いで手に持っていた資料をぐしゃりと握った。そして正しく度肝を抜かれた顔をしている。


「嘘だぁ……」

「嘘ですけど」

「私の前で其の類の嘘は禁止だよ!」


安堵の溜息を付いたあと、握りしめて皺の出来た紙を指で丁寧に伸ばし始める。

 そして愚痴を零すかのように文句を云い始める。


「慥かにさ、紫織ちゃんのは凄く良さそうだよ?奉仕だってやらせたら上手そうだし、男を喜ばせるのは向いてると思う」

「絶妙にセクハラなんですが」


私がやった後もやらせたくないなぁと真剣に悩んでいる、この組織の首領に向かって式部は溜息を付いた。


「でも、紫織ちゃんはまだ男の本質が判ってないから、其の分の色気がないね」

「色気は無いと自負していますが?」


太宰の言葉の意味が判らずに首を傾げると「其れだよ」と指摘される。彼女には余計判らない。


「男には判るんだよ。その子が事後あとに変わったのがね。ほら、一回やったら女は変わるって云うじゃない?女性らしさとか雰囲気が変わるんだよ」

「女性ホルモン出てるんでしょうね……」


其の云い方は夢がないと太宰に叱られる。


「判らないなら実践するのが速い」


そう云って彼は立ち上がった。話が最初から脱線しているので式部は静止するが彼が云う事を訊くわけがない。

 正面から抱きついて来て、腰に手を回される。


「私が女にしてあげる」


耳元で囁かれ、口に吸いつく。何度も角度を変えて、何度も舌を絡める。

 舌と唇が離れて、顔を火照らせ、目を潤ませて上目使いの式部を見て太宰は喉を鳴らした。絹擦れの音で自分の手が彼女の臀部の方へ伸びていることに気付く。彼女のか細い、抵抗するような声は煽っているようにしか聞こえない。


「行こうか」


呟いたあと、太宰は彼女を横抱きして、部屋の扉の鍵を閉めたあと、更に奥の首領専用の仮眠室に移動する。

 仮眠室には最低限の家具と寝台しかない。太宰は其の寝台の上に彼女を下す。ぎし…とスプリング音が静かな部屋に響く。

 太宰は其のまま彼女を横にさせようと肩を後ろに押す。けれど式部は彼の首に両手を回して離れようとしない。


「此の寝台は、厭です」


彼が優しく如何してと問うと彼女は此処で他の子としたことがあるでしょうと答えた。

 慥かに此の寝台で色仕事に出る女性の指導をしたり、首領になったばかりの頃に煽ってきた女性を相手にしたことがあった。彼女には其れを教えたくなくて教えていない。


「此の場では絶対に厭です。どうせ貴方に抱かれるなら特別にしてください」


つい数か月前までは、交際すら認めてくれなかった彼女の言葉に、太宰は愛おしさを感じていた。隠していた本当の彼女の独占欲。そして自分の事を何も云わず見ていた彼女の心境に。

 太宰は彼女の言葉の返事の様に再び、彼女を抱き上げた。

 そして、部屋の壁にあるスイッチを押す。すると仕掛けが動き、扉が一つ現れる。エレベーターになっており、太宰の個室に繋がっている。其処は、まだ他の女性も、そして彼が連れてきた式部も一度も入っていない、正しく首領の部屋。

 太宰は式部をその部屋に連れて行った。




「昨日の仕事が終わらない……そして今日の仕事も進まない……」


次の日。何時もより元気そうな太宰と、何時もより元気のない式部は昨日に出来なかった仕事と今日の仕事を同時に行っていた。


「紫織ちゃん。幾らなんでも湿布の臭いがするのは駄目だと思うよ」

「仕方ないでしょ!腰が痛いんですもん!貴方こそ、そんな露骨に頬を艶々させて!」


机をばんばんと殴る彼女に太宰は自身の使っている香水を渡す。匂いがきつくないもので此れで湿布の臭いを消せということだ。

 彼女は出された香水瓶を受け取った。そして其の香水を自分に付けると数秒後に顔を抑えた。


「めっちゃあの時の寝台の匂いがする……フラッシュバック不可避…………」


個室に置いてある寝台に香水の匂いが染みついていたようで彼女は顔を赤くさせた。


「寝台の匂いと云うか、私の匂いだね。というか、今は紫織ちゃんの匂いかな」

「此の仕事の状況以上に最悪なんですけど!」

「私にとっては最高だよ。あんな可愛い紫織ちゃん初めてだった」


にこやかに云うので「女慣れしてる奴は!」と式部は嫌味を云う。しかし、太宰にとっては本当に大好きな女性相手なので多少の緊張はあった。彼女の方が余裕が無かったので其れは気付かれていない。


「またしたいね!」

「今度したら羞恥心で爆発します……」


純粋に笑う太宰と、恥ずかしさで相手の顔を見れない式部。二人の間柄の噂は以前よりも広がりを増した。

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