御伽草子

🐙海棠緋寄⚔️
@Enph_hiyo12

降誕祭 前編



清原は自分の格好が途轍もなく不服だった。なんと云ってもトナカイだ。其れも太宰が着る予定だった物を。

 お陰で少し大きい。動きにくい。トナカイの角が付いたカチューシャが邪魔。清原は如何にも厭そうな顔をして、来なければ良かったと後悔した。

 そもそも、それ程行く気は無かったのだ。イブの二日前に鏡花と遭遇したのが駄目だった。彼女に強く推されると断り辛い。


「アンタ、酒は行ける口かい?」

「まあ、其れなりに……何があるの?」

「葡萄酒ならあるよ、注ごうか?」


与謝野に絡まれ、グラスを受け取り葡萄酒を注いでもらった。色や香りから其れなりに良いものなのは判る。


「其れにしても災難だねぇ、紫織がいたらずっと笑ってただろうね」

「判ってたら来なかったよ」


如何にも可笑しそうに笑うので清原は若干ジト目で与謝野を見る。


「へぇ、アンタもそんな顔するんだ。酒の効果だね」


可笑しそうにころころと笑う与謝野。マフィアの幼馴染と似てるなぁっと清原は少し思う。


「…それで、鏡花のあの格好どう思うんだい?」

「脈絡ないよね其れ」


鏡花の格好は確かに可愛いだろうと一般論的に清原は思う。最初に見た時、背中に付けられた羽も相まって「天使か」と云いそうになったのは絶対に秘密だ。


「肩寒そうだなぁって」

「肌綺麗だねあの子、すべすべだ」

「…下も寒そう」

「ミニスカートでずっと考えてたよあの子、どう反応するかなって云ってた」

「……なんでツインテール」

「鏡花ぐらいの歳の子が一番似合うと思うよ」


清原は厭な相槌を打つ与謝野を一瞬睨む。そして無駄だと思うと溜息を付く。


「其れ、同性の君が云うならまだ大丈夫だけど、僕が云ったらアウトだから」

「善いじゃないか、今時、歳の差なんて特に問題じゃないさ」


怪しく笑って飲み干して空のグラスにまた葡萄酒を注ぐ。そして、急に顔をぐいっと近づけ、小さな声で呟く。


「其れとも右手の痕と何か関係あるのかい?」


酔っぱらっていた事は判っていたので清原も今まで緩く対応していたが、その件については真剣で急に真顔になる。其の表情は何処が、誰かに似ている事に与謝野は思う。


「妾は知ってるよ。アンタの怪我を二回も治療したからね、まだ特務課は欺いているんだろうけど、其の痕は普通じゃない」


与謝野が喋り続けると彼の顔は更に無機質になっていく。あと少しで誰に似てるように思うのか判る。


「与謝野さん。其れは今此の場で話す事じゃないよ」


其れに顔が近い。そう云い与謝野の肩を押す。

 最近彼女がやけに自分に話しかけて来ると思えば其れを訊き出そうとしていたのだと清原は気づく。


「今はまだ、話す事じゃないし、鏡花ちゃんとは関係ない」

「本当かい、其れは」

「ああ、僕は此の事について嘘を付かない」


ほんの一瞬、彼と重なる人物。与謝野が思ったのは一人の人物。其れが本当なら式部が彼を嫌っているのには少し賛成出来る。けれど、接点が無さすぎる。


「鏡花ちゃん、君に贈呈品をあげよう」


清原は逃げるように鏡花に話しかけた。彼女は嬉しそうに期待の眼差しを清原に向ける。


「髪を結う為のリボンなんだけど、良かったら使って」


リボンを受け取り鏡花は目を輝かせて其れを胸に押し当てた。「ありがとう」と云って微笑む。清原も少し顔を綻ばせた。







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自傷、少しのグロ描写あり。

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