御伽草子

海棠緋寄⚔️
@Enph_hiyo12

接吻

「すぅ……」


畳みの上で私は仰向けに寝て、呆然と天井の木目を見つめている。寝息を穏やかに立てているのは、私の上に被さっている太宰さんだ。

 冬な事もあり、炬燵で温まっていたのだが、寒いからと隣にやって来た彼は私の肩に頭を乗せたあと思えば、いつの間にか眠っていた。そして彼の体重に負けて其の儘倒されてしまったのだ。

 私の扁平な胸の上で寝心地は善い方ではないと思うのだが、彼は珍しく熟睡だ。

 一度寝付くと熟睡型の私と違い、太宰さんは睡眠が浅い。時々深夜に私を起こしては「寝れない…」と縋って来るくらいだ。そんなこともあって彼が寝ていると起こしにくい。


「綺麗な寝顔」


 余り見る事のない太宰さんの端正な寝顔。黙ってれば美形も際立つ筈だ。勿論、普段の煩い程の彼も私は好きなのだが。

 彼の顔に掛かる前横の髪をそっと避けて、血色のあまり良くない白い肌を眺める。初対面の時ほど悪くないが、今も十分不健康そうだ。此の人は気を抜けばすぐに寝なかったり食事を抜く。もう少し云う必要があるだろう。


(でも、完全に健康にならなくても、何とかなるか)


強要しても云うことを訊かないのは判っている。食べさせることは出来ても睡眠だけは如何しようもない。精神が不安定になれば悪夢を見やすくなるのは私も良く判ってる。其れに彼が強請ったように対応しておけば大抵は穏やかに寝て呉れる。

 太宰さんの頭を柔く、ふわふわと撫でる。背の高い彼の頭を撫でられる機会は貴重なので……。


「……もっと、」

「起きちゃいました?」

「もっと撫でて……?」


眠りが浅いだけあり直ぐに目を覚ましてしまった。けど、寝ぼけているような様子で私に甘えて来る。何時もの毒気がなくて、私は正直に彼の頭を撫でた。彼は「んー…」と気持ちよさそうに声を漏らしている。


「目が覚めた。おはよう」


穏やかに話す彼は私の頬に軽く口付ける。頬から始まって、鼻先、耳、唇に軽くついばむように接吻の雨を降らせて来る。私は此の軽やかな接吻が結構好きだ。


「とても嬉しそうな顔をするねぇ」

「え、顔に出てますか…?」


私は自分の頬を手で覆った。顔が赤くなってないかと考えると余計に恥ずかしくなって顔が熱くなるのが判る。

 すると太宰さんは私の手の上から重ねて私の頬を撫でる。


「私も嬉しい」




目が覚めて、もう夜だったため、私はお風呂に入る事になった。今日は紫織ちゃんが興味本位で勝ってきた入浴剤を入れるらしい。


「此れ如何するの?」


彼女に渡された固形の入浴剤を湯船の前で見せると彼女は、裸の私からじりじりと視線を外しながら「シャワーでお湯をかけ乍ら溶かすみたいですよ」云う通りに溶かすと入浴剤の色が湯船に広がる。微量だが金粉が入っている其れは、お湯に溶けることによってキラキラと輝いて湯船を漂っている。


「紫織ちゃんも入る?」


何時もの様に少しふざけるように訊くと寝起きの時以上に顔を赤く染めた。ぶんっぶんっ、と首を大きく横に振る。


「折角だし入ろうよ。ね?脱がせてあげるから」

「や、止めてください!入りますからぁ!」


相当私に脱がされたくないらしい。少し悲しい。

 私が先に湯船に使っていると彼女が何も云わずに入ってきて、私に張と見せないように背を向けて湯船に入り込んだ。私の足の間に入り込み、胸に背中を預けるように凭れて来た。


「脱がされるのには抵抗したのに密着には抵抗がないなんて……やばい、勃ちそう」

「当たった時点で出て行きますよ」


冷ややかな目を向けられても私の熱は其の侭だが、此れ以上この方面で何か云っても無駄なので少し黙る。

 一分ほど経ったあと、湯船から覗く火照った肩にお湯をかけてあげる。そうすると最初は肩を跳ねあがらせて私を見たけれど、直ぐに気持ちよさそうに口角を緩めた。


「わぁ、髪も肌もつやつや」


肌や髪を褒め乍ら、私は彼女の唇に後ろから迫る。此の接吻も簡単に受け入れられ、ぢゅーっと少し強く吸った。


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